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3次元剛体の運動方程式の立て方1_ベクトル定義

Last updated at Posted at 2020-11-23

どうもこんにちは

一般に,剛体の運動方程式は2次元平面のみで習うことが多いのではないでしょうか.重心座標$x$,重心中心回転角$\theta$を変数に,こんな式です

\begin{eqnarray}
m \ddot x  &=& F\\
I \ddot \theta &=& N\\
\end{eqnarray}

上の式はニュートンの運動方程式で,下の式は回転のオイラーの運動方程式です.

これを3次元に持ってくると,実現象を表現するには不十分です.この式では,ジャイロ効果の項が足りていません.
次の式になります.

\begin{eqnarray}
m \ddot x  &=& F\\
I \ddot \theta + cross(\dot \theta) I \dot \theta &=& N
\end{eqnarray}

ここで$cross(\dot \theta)$は外積行列へ変形することを意味しています.

\begin{eqnarray}
  v &=& \left(
    \begin{array}{ccc}
      a\\
b\\
 c\\
    \end{array}
  \right)\\

cross(v) &=&  \left(
    \begin{array}{ccc}
     0&-c&b\\
c&0&-a\\
-b&a&0\\
    \end{array}
  \right)
  \end{eqnarray}

という変形です.実際,「ベクトル同士の外積」と「ベクトルの外積行列 × ベクトル」が同じ結果になります.というより,なるように作られた行列です.

と,一見して何を言っているのか,わからないと思いますが,一から丁寧に説明してみようと思います.

座標系について

運動方程式を立てる際の一番の難しいところは座標系です.
以下では,二つの座標系しか登場させません.

  1. 絶対座標系$O$ : 神視点・動かない座標系
  2. 慣性座標系$A$ : 対象物視点


・ジェットコースターで乗っている人の重心を原点とし,目の前をx方向などとした慣性座標系

すべて,絶対座標系で立てればええやんと最初は思うかもしれません,しかし,定ベクトル(成分が一定)は基本的に慣性座標系で記述した際です.


上の例では,「乗っている人の重心から目へのベクトル」は乗っている人の座標系では定ベクトルですが,絶対座標系では「乗っている人の位置・姿勢」によって変動してしまいます.

代数ベクトル

ある座標系から見た代数ベクトルを,別の座標系から見ると,同じ幾何ベクトルですが,x,y,z成分が変わります.座標系によって,x,y,zの方向が異なるためです.
こんがらがるのを防止するために,代数ベクトルの右上に,そのベクトルの表現座標系を常時記述します.

v^A

は座標系$A$で表現した代数ベクトル$v$です.

ここでベクトルの名称についてですが

  • 幾何ベクトル:図・矢印,数値ではないため,どの座標系で見ているかは関係ない
  • 代数ベクトル:成分が数値のベクトル,どの座標系で表したかで数値が異なる
  • 変換ベクトル:幾何ベクトルを成分とする代数ベクトル

という使い分けをします.変換ベクトルについては,この後説明します.

座標変換行列

ある座標系での,その代数ベクトルがわかっているとき,別の座標系に変換する行列を定義できます.この行列を座標変換行列といいます.

座標系Aから座標系Oへの変換行列を$C_{OA}$と表すことにします.

v^O = C_{OA} v^A

この行列は,3次元で考えれば3*3の行列で座標系$O,A$に対し一意に定まります.

$C_{OA}$を移項し

v^A = C_{OA}^{-1} v^O

であるため,

C_{AO} =  C_{OA}^{-1}

と言えます.実は

 C_{OA}^{-1} = C_{OA}^T

という関係があります.

証明

新しく,ベクトルを成分に持つ,これまでとは違う,次の変換ベクトルを定義します.これまでベクトルといえば,成分は数値でした.
変換ペクトルは幾何ベクトルを成分にする,代数ベクトルです.

e_A = \left(
    \begin{array}{ccc}
      \vec e_{AX}\\
\vec e_{AY}\\
\vec e_{AZ}\\
    \end{array}
  \right)\\

$\vec e_{AX}$は座標系$A$の$x$方向の単位幾何ベクトルです.ここでベクトルの名称についてですが

  • 幾何ベクトル:図・矢印,数値ではないため,どの座標系で見ているかは関係ない
  • 代数ベクトル:数値,どの座標系で表したかで数値が異なる
  • 変換ベクトル:上で作った,幾何ベクトルを成分とするベクトル

という使い分けがあります.

ここで,幾何ベクトル$\vec r$と変換ベクトルの内積を行います.

e_A \cdot \vec r = 
\left(
    \begin{array}{ccc}
      \vec e_{AX} \cdot \vec r\\
\vec e_{AY} \cdot \vec r\\
\vec e_{AZ} \cdot \vec r\\
    \end{array}
  \right)\\
=
\left(
    \begin{array}{ccc}
      rベクトルを座標系Aで表現した時のx成分\\
rベクトルを座標系Aで表現した時のy成分\\
rベクトルを座標系Aで表現した時のz成分\\
    \end{array}
  \right)\\
=r^{A}

つまり,"幾何ベクトルを代数ベクトルへの変換を行う,変換ベクトル$e_A$" が定義できました.

$C_{OA}$は,$e_{AX}^O$を座標系$A$の$x$方向単位幾何ベクトルを$O$座標系で表した代数ベクトルとすると

C_{OA} = [e_{AX}^O , e_{AY}^O , e_{AZ}^O]

と書けます.例えば,単位代数ベクトルを掛けると

C_{OA} \left(
\begin{array}{ccc}
1\\
0\\
0\\
\end{array}
  \right)
=e_{AX}^O 

であることから,確認できます(A座標系でのx方向単位代数ベクトルを掛けると,O座標系で表現されたものになる).

ここで,$e_{AX}^O$は変換ベクトルを用いることで

e_{AX}^O = e_O \cdot \vec e_{AX}

と書けます.よって

\begin{eqnarray}
C_{OA} &=& [ e_O \cdot \vec e_{AX} ,  e_O \cdot \vec e_{AY}, e_O \cdot \vec e_{AZ}]\\
&=& e_O \cdot
\left(
\begin{array}{ccc}
\vec e_{AX} \\
\vec e_{AY} \\
\vec e_{AZ} \\
\end{array}
  \right)^T\\
&=& e_O \cdot e_A^T
\end{eqnarray}

と変換ベクトル同士の内積で書けます.

$C_{AO}$についても同様の考えを適用すると

C_{AO}=e_A \cdot e_O^T

と書けます.転置を適用すると

\begin{eqnarray}
C_{AO}^T &=&(e_A \cdot e_O^T)^T\\
&=& e_O \cdot e_A^T\\
&=& C_{OA}
\end{eqnarray}

さらに,

C_{AO} =  C_{OA}^{-1}

と合わせて

 C_{OA}^{-1}= C_{OA}^T

が証明されました.

追加で必要な知識

座標変換行列は代数ベクトルだけでなく,変換ベクトルについても同様に適用できます.

e_O = C_{OA} e_A

なんとなく,正しいぐらいの理解で,私は証明できません.
しかし,

\left(
\begin{array}{ccc}
\vec e_{OX} \\
\vec e_{OY} \\
\vec e_{OZ} \\
\end{array}
  \right) = C_{OA} 
\left(
\begin{array}{ccc}
\vec e_{AX} \\
\vec e_{AY} \\
\vec e_{AZ} \\
\end{array}
  \right)

こう書くとなんとなく正しく感じませんか(テキトウですね)

外積オペレータと座標変換行列

外積オペレータ$cross(v)$は外積行列へ変形することを意味しています.

\begin{eqnarray}
  v &=& \left(
    \begin{array}{ccc}
      a\\
b\\
 c\\
    \end{array}
  \right)\\

cross(v) &=&  \left(
    \begin{array}{ccc}
     0&-c&b\\
c&0&-a\\
-b&a&0\\
    \end{array}
  \right)
  \end{eqnarray}

という変形です.

ここで,座標変換行列をかけたベクトルに対して,外積オペレータを適用させてみましょう.

cross(C_{OA} v^A)
= C_{OA} cross(v^A) C_{OA}^T

また,左辺を変形し

cross(v^O)
=C_{OA} cross(v^A) C_{OA}^T

とも言えます.

証明

先ほどの変換ベクトル同士の計算を確認します.

e_A \cdot e_A^T  = 
\left(
    \begin{array}{ccc}
      \vec e_{AX}\cdot\vec e_{AX} &\vec e_{AX}\cdot\vec e_{AY} &\vec e_{AX}\cdot\vec e_{AZ} \\
\vec e_{AY}\cdot\vec e_{AX}&\vec e_{AY}\cdot\vec e_{AY}&  \vec e_{AY}\cdot\vec e_{AZ}\\
\vec e_{AZ}\cdot\vec e_{AX}& \vec e_{AZ}\cdot\vec e_{AY}& \vec e_{AZ}\cdot\vec e_{AZ}\\
    \end{array}
  \right)\\
=\left(
    \begin{array}{ccc}
      1&0&0\\
0&1&0\\
0&0&1\\
    \end{array}
  \right)\\

あくまで,行列としての積の仕方をしながら,成分の演算は「$\cdot$内積」として計算しています.

同様に「$\times $外積」で行うと

\begin{eqnarray}
e_A \times e_A^T  &=& 
\left(
    \begin{array}{ccc}
      \vec e_{AX}\times\vec e_{AX} &\vec e_{AX}\times\vec e_{AY} &\vec e_{AX}\times\vec e_{AZ} \\
\vec e_{AY}\times\vec e_{AX}&\vec e_{AY}\times\vec e_{AY}&  \vec e_{AY}\times\vec e_{AZ}\\
\vec e_{AZ}\times\vec e_{AX}& \vec e_{AZ}\times\vec e_{AY}& \vec e_{AZ}\times\vec e_{AZ}\\
    \end{array}
  \right)\\
&=&\left(
    \begin{array}{ccc}
      0&\vec e_{AZ}&-\vec e_{AY}\\
-\vec e_{AZ}&0&\vec e_{AX}\\
\vec e_{AY}&- \vec e_{AX}&0\\
    \end{array}
  \right)\\
&=& -cross(e_A)
\end{eqnarray}

という関係があります.

さらに,

e_O = C_{OA} e_A

を外積の関係に代入すると,

\begin{eqnarray}
cross(e_O) &=&- e_O \times e_O ^T \\
&=& - C_{OA} e_A \times (C_{OA} e_A )^T\\
&=&C_{OA} ( -e_A \times e_A ^T ) C_{OA}^T\\
&=&C_{OA} cross(e_A) C_{OA}^T
\end{eqnarray}

2行目から3行目で積の優先順位を変えています.外積では成立しないように思うかもしれませんが,外積はあくまで成分同士の計算で,行列の積として考えられるため,積の優先順位を変えることができます(結合法則が成立しているともいえる.).

証明を行っていきます.

\begin{eqnarray}
cross(v^O) &=& cross(e_O \cdot \vec v)\\
&=&cross(e_O) \cdot \vec v\\
&=&C_{OA} cross(e_A) C_{OA}^T \cdot \vec v\\
&=&C_{OA} cross(e_A \cdot \vec v) C_{OA}^T \\
&=&C_{OA} cross(v^A) C_{OA}^T
\end{eqnarray}

証明できました.2行目,5行目では$\vec v$を「積の順序・外積オペレータ内外への移動」を行っていますが,これは$\vec v$が定数のように扱えるためです.

ここで重要なことは,外積オペレータを付与したベクトルを座標変換すると,座標変換行列に挟まれた形になることです.

以上の基礎を踏まえ,次に角速度・速度・位置の運動学的関係をまとめます.

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