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three.js + TypeScript: 3次元空間で立方体を回してみる

Last updated at Posted at 2022-08-01

three.jsは、WebGLを使って3次元表現ができるライブラリです。素のWebGLでは難しくなってしまうコードが、すっきりと短くわかりやすく書けます。本稿は公式サイト「Creating a scene」(シーンの作成)の作例をもとにしたチュートリアル解説です。アプリケーションはモジュールに分け、TypeScriptも採り入れました。もっとも、TypeScriptについては型推論が働くおかげで、明示的な型づけはほとんどしていません。本稿で書くコード例のでき上がりはCodeSandboxに公開しました。

本稿作例のでき上がり

環境をつくる

作業はすぐに始められて、簡単に試せるようにCodeSandboxで進めることにします。テンプレートはVanilla TypeScriptを用いました。依存(Dependencies)には、three@types/three(TypeScript用)を加えてください。

ローカル環境で作業したい場合には、「Three.js を TypeScript で使う方法 ~ 初めての Three.js 入門編 ~」を参考にされるとよいでしょう。Viteビルドシステムを使っており、ファイルの構成や名前が少し異なるので、そこは読み替えてください。ご参考までに、本稿末尾にGitHubリポジトリの公開リンクを添えました。

まず、メインのHTMLドキュメントindex.htmlは、つぎのように書き替えます。

コード001■メインのHTMLドキュメント

index.html
<html>
	<head>
		<title>Three.js + TypeScript: Simple example</title>
		<meta charset="UTF-8" />
	</head>

	<body>
		<canvas id="canvas"></canvas>
		<script src="src/index.ts"></script>
	</body>
</html>

3次元空間をつくる

three.jsでまずつくるのは、つぎの3つのオブジェクトです。

  • シーン(scene)
    • 3次元空間を表し、3Dオブジェクトやライトが加えられる。
  • カメラ(camera)
    • 3次元空間を映し、レンダラーに送って画面に投影する。
  • レンダラー(renderer)
    • カメラから受け取った画像を、画面の再描画のたびに更新する。

シーンのコンストラクタはScene()です。カメラにはいくつか種類があります。今回使うのは、標準的なPerspectiveCameraです。Perspectiveは透視投影(perspective projection)を意味し、対象物を人が見たのと近い表現になります。4つの引数については、このあと解説しましょう(構文001)。WebGLによる描画を担うのがWebGLRendererです。引数オブジェクトのcanvasプロパティには、<canvas>要素の参照を渡してください。

構文001■PerspectiveCamera()コンストラクタ

PerspectiveCamera(fov: Number, aspect: Number, near: Number, far: Number)
  • fov: 視野(field of view)またはカメラの用語で画角。写される光景の範囲を角度(度数)で示す。数字が大きいと広角で、写る範囲は広くなるかわり、対象物は相対的に小さくなる。小さい角度は望遠に近づき、対象物が相対的に大きく写る。
  • aspect: アスペクト比で、描画する矩形領域の幅/高さ。矩形領域の比と合わなければ、画像の水平・垂直比が歪む。
  • near: オブジェクトを描画するもっとも近い距離。これより近くのオブジェクトは画面に描かれない。
  • far: オブジェクトを描画するもっとも遠い距離。これより遠くのオブジェクトは画面に描かれない。

距離や長さは、1を基本とした数値で表します。カメラの設定でオブジェクトは大きくも小さくも描かれるので、単位は気にせず比率と捉えて構いません。

メインのTypeScriptモジュールsrc:index.tsに、シーンとカメラおよびレンダラーをつぎのように定めましょう。これで、3次元空間のいわば舞台ができ上がりました。もっとも、映し出すオブジェクトが何もありませんので、ただの暗闇です。なお、src/styles.cssには最低限のスタイルを書き加えました。あとに掲げるサンプル001のCodeSandbox作例でお確かめください。

src:index.ts
import * as THREE from 'three';
import './styles.css';

function init() {
	const canvas = document.getElementById('canvas') as HTMLCanvasElement;
	const size = { width: window.innerWidth, height: window.innerHeight };
	const scene = new THREE.Scene();
	const camera = new THREE.PerspectiveCamera(
		45,
		size.width / size.height,
		0.1,
		1000
	);
	const renderer = new THREE.WebGLRenderer({ canvas });
	renderer.setSize(size.width, size.height);
}
init();

3次元空間に立方体を加える

では、3次元空間に3Dオブジェクトをつくって加えましょう。3Dオブジェクトには形状の定めとなるジオメトリと、表面素材を決めるマテリアルがなければなりません。そして、ジオメトリにマテリアルを適用して3Dオブジェクトにつくり上げるのがメッシュです。

立方体はBoxGeometryでつくります。3つの引数は、幅と高さ、そして奥行きです。マテリアルは、とりあえず扱いやすいMeshBasicMaterialを用いましょう。引数オブジェクトのcolorプロパティには、CSSと同じかたちでカラー値を与えます。16進数の場合は、数値でも構いません。このふたつをMeshに引数として渡せば、3Dオブジェクトが返されます。シーンにはadd()メソッドで加えてください。そして、カメラの位置を定めるのはpositionプロパティです。z座標は手前が正になります。レンダラーのrender()メソッドで描画するのを忘れてはいけません。引数はシーン(scene)とカメラ(camera)です。

src:index.ts
function init() {

	const geometry = new THREE.BoxGeometry(1, 1, 1);
	const material = new THREE.MeshBasicMaterial({ color: 'aqua' });
	const cube = new THREE.Mesh(geometry, material);
	scene.add(cube);
	camera.position.z = 5;
	renderer.render(scene, camera);
}

これで、3次元空間の原点(0, 0, 0)を中心に(デフォルト)立方体が置かれたはずです。もっとも、カメラに正面向きなので、立方体か正方形平面か区別がつきません。立方体(cube)のrotationプロパティを使って、x軸とy軸で少し回転しましょう(角度の単位はラジアンです)。結果は、CodeSandboxに公開した以下のサンプル001でお確かめください。

src:index.ts
function init() {

	cube.rotation.x += 0.5;
	cube.rotation.y += 0.5;
	renderer.render(scene, camera);
}

サンプル001■Three.js + TypeScript: Simple example 01

立方体に回転のアニメーションを加える

Window.requestAnimationFrame()メソッドで、立方体に回転のアニメーションを加えましょう。描画ごとの立方体の回転角は少なめにします。requestAnimationFrame()の呼び出しは、再描画のたび繰り返すことにお気をつけください。モジュールsrc:index.tsの記述全体を、いったんコード002にまとめました。動きは、以下のサンプル002のCodeSandbox作例でご確認いただけます。

src:index.ts
function init() {

	const animate = () => {
		requestAnimationFrame(animate);
		// cube.rotation.x += 0.5;
		cube.rotation.x += 0.01;
		// cube.rotation.y += 0.5;
		cube.rotation.y += 0.01;
		renderer.render(scene, camera);
	};
	animate();
}

コード002■立方体を水平・垂直軸で回転する

src:index.ts
import * as THREE from 'three';
import './styles.css';

function init() {
	const canvas = document.getElementById('canvas') as HTMLCanvasElement;
	const size = { width: window.innerWidth, height: window.innerHeight };
	const scene = new THREE.Scene();
	const camera = new THREE.PerspectiveCamera(
		45,
		size.width / size.height,
		0.1,
		1000
	);
	const renderer = new THREE.WebGLRenderer({ canvas });
	renderer.setSize(size.width, size.height);
	const geometry = new THREE.BoxGeometry(1, 1, 1);
	const material = new THREE.MeshBasicMaterial({ color: 'aqua' });
	const cube = new THREE.Mesh(geometry, material);
	scene.add(cube);
	camera.position.z = 5;
	const animate = () => {
		requestAnimationFrame(animate);
		cube.rotation.x += 0.01;
		cube.rotation.y += 0.01;
		renderer.render(scene, camera);
	};
	animate();
}
init();

サンプル002■three.js + TypeScript: Simple example 02

立方体の面に陰影を与える

立方体の面の表現に、気になるところがあるかもしれません。面に陰影がないことです。これは、用いたマテリアルMeshBasicMaterialに原因があります。3次元空間は何もしなければ本来暗闇です。けれど、MeshBasicMaterialに与えたカラーは、光がなくても見える、いわば発光する性質をもっています。カラーを光として放っているのですから、陰影のつきようがありません。

そこで、マテリアルをMeshPhongMaterialに差し替えます。表面は鏡面反射する光沢があるものの、カラーは発光しません。引数オブジェクトのcolorプロパティの定め方は同じです。これで立方体は闇に閉ざされます。

src:index.ts
function init() {

	// const material = new THREE.MeshBasicMaterial({ color: 'aqua' });
	const material = new THREE.MeshPhongMaterial({ color: 'aqua' });

}

光源として加えるのは、まずDirectionalLightです。太陽光のようにひとつの方向から、光が平行に差し込みます(「平行光源」)。引数には与えるのはカラーです。white(0xffffff)では陰影のコントラストが少し強いので、明るさを抑えました。光が差してくる方向を定めるのはライト(directionalLight)のposition.set()メソッドです。原点に向かって差し込みます。引数値(1, 1, 1)は、原点(0, 0, 0)と立方体の初期位置の前面右上の座標(0.5, 0.5, 0.5)を結んだ直線の方向です(右斜め上手前)。光源(directionalLight)は、シーン(scene)にadd()メソッドで加えてください。

src:index.ts
function init() {

	const directionalLight = new THREE.DirectionalLight('gray');
	directionalLight.position.set(1, 1, 1);
	scene.add(directionalLight);

}

なお、光源の明るさは第2引数で、1を100%とした比率で調整することもできます。

const directionalLight = new THREE.DirectionalLight(0xffffff, 0.9);

ただ、このままですと、光の当たらない面が黒く潰れます。そこで、3次元空間内を等しく照らすために使うのがAmbientLight(環境光)です。こちらも、white(0xffffff)では陰影が飛んでしまうので、明るさを抑えました。以下のサンプル003のCodeSandbox作例で、立方体の陰影が確かめられます。

src:index.ts
function init() {

	const ambientLight = new THREE.AmbientLight('gray');
	scene.add(ambientLight);

}

サンプル003■three.js + TypeScript: Simple example 03

OrbitControlsで簡単にカメラを制御する

OrbitControlsは、マウス操作で簡単にカメラを制御するためのクラスです。一定の座標を中心にして、マウスドラッグでカメラを周回させられます。

CodeSandboxの依存(Dependencies)には、three-orbitcontrols-tsを加えてください。OrbitControls()コンストラクタの引数は、カメラ(camera)とWebGLが描くDOM要素です。レンダラーのインスタンス(renderer)作成時に与えたDOM要素は、domElementプロパティで取り出せます。コントロール(controls)のtarget.set()メソッドの引数が、カメラを動かす中心座標です。コントロールはupdate()メソッドで起動してください。立方体に向けカメラを、マウスドラッグで周回できるようになったでしょう。

src:index.ts
import { OrbitControls } from 'three-orbitcontrols-ts';

function init() {

	const controls = new OrbitControls(camera, renderer.domElement);
	controls.target.set(0, 0, 0);
	controls.update();

}

なお、ローカルに開発環境を構築した場合、OrbitControlsはつぎのパスからimportします。

src:index.ts
import { OrbitControls } from 'three/examples/jsm/controls/OrbitControls';

実は、OrbitControlsでできるカメラのマウス操作は、あとふたつあります。

  • 右クリックでドラッグ: カメラのパン。カメラは固定したまま、フレーミングを水平・垂直方向に移動させる。
  • マウスホイール: カメラのズーミング。カメラを向けた方向に、映像を拡大・縮小する。

残念ながらCodeSandbox(サンプル004)では、つぎのような警告が出て操作できません。

WARNING: OrbitControls.js encountered an unknown camera type - pan disabled.

WARNING: OrbitControls.js encountered an unknown camera type - dolly/zoom disabled.

サンプル004■three.js + TypeScript: Simple example 04

ローカルの開発環境であれば、上記ふたつの操作も可能です。Viteで構築したGitHubのリポジトリをご参考までに公開します。冒頭に述べたとおり、ファイルの構成や名前が少し異なるので、その点はお気をつけください。

GitHub: FumioNonaka/three-typescript

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