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VRにおける触覚(特に反力)提示デバイス(自分の論文)でよく使う関連研究の分類

Last updated at Posted at 2019-12-29

はじめに

Haptics Advent Calendar 2019の12月16日担当です.(完成したの30日でした,すいません(´;ω;`))

しがないM1ですが,Hapticのアドカレの1つを担当します.
研究としてはクロスモーダルとかが一番近いと思ってるんですが,いろいろ忙しくて腰を据えて記事を時間がなかった...
なんで,論文書くときに関連研究の書き方をまねさせてもらってる論文を自分の備忘録的にまとめます.

ところどころ意訳なども含まれてるので,間違ってたら指摘お願いします.
あと,テンプレですが「※この投稿は個人の見解であり,(ry」

では,はじめます.

紹介する論文

Stanford大学のInrak ChoiさんがUIST2017に投稿した論文

Grabity: A Wearable Haptic Interface for Simulating Weightand Grasping in Virtual Reality
http://shape.stanford.edu/research/grabity/Grabity_UIST_2017.pdf

UIST2017のBest Paperに選ばれてます.

論文の内容

  • 物体を把持するときの触覚を提示可能な装着型デバイス “Grabity” を提案した論文
  • 把持する時の触覚を「接触→把持→重力→慣性」に分類
    • 接触と把持:ブレーキ機構で指の可動域を制限して実現
    • 重力と慣性:ボイスコイルモータによる振動で実現

grabity.PNG

特に,ボイスコイルモータの振動を使った「重力」の提示がキモのようです.
実験などの詳細が気になるなら読んでみてください.

その他詳細

デモ動画
https://www.youtube.com/watch?v=Vj79OLcxnDk

こっちが発表の様子
https://www.youtube.com/watch?v=QSMSFjBNyZo

ハンドヘルド型のデバイスをよく発表している方で,著者のホームページにほかの論文が載ってます.
http://inrak.weebly.com/

デバイスの分類

今回は,上記の論文の関連研究の部分を紹介します.

この論文は「重力を含めた把持感覚」を表現するデバイスの開発論文なので,主に触力覚を提示するデバイス中心となっています.
最初の比較対象として

  • Grounded haptic devices

を挙げています.

さらに,関連研究(RELATED WORK)の章で,以下のようにデバイスを分類しています.

  • Wearable and Handheld Haptic Devices
  • Skin Stretch Feedback

以下,それぞれについて解説していきます.

Grounded haptic devices

比較的大きな機構を地面や机などのしっかりした土台に置いて接地することで,触力覚を提示するデバイスのことを指します.

Phantom(日本バイナリー株式会社)とかがこれに当たります.
Haptic-Pen-Guides-Hand-of-Visually-Impaired-2.jpg

現実に近い触力覚の提示が可能な反面,サイズが大きく機構が複雑になるため提示領域が限られます.
これは,ユーザの動きを制限することにつながります.

Wearable and Handheld Haptic Devices

これは手に装着したり,把持して使用するデバイスの総称です.
力覚の提示を行うためには基本的に何かに接地し,作用反作用を用いて提示する必要があります.
この種類のデバイスでは,ユーザーの体に「接地」することで力覚を提示します.そのため,ユーザがデバイスを持ち運ぶことが可能であるため,提示領域が広がり,ユーザーの動きに対する制限が小さくなります.

これらを更に細かく分類します.

Wand-based controllers

これは,VRコントローラでよく使われている手に把持して使うタイプのデバイスです.
vive-hardware-controllers-1.png

このデバイスは,どこにも「接地」していないので,力覚の提示が困難です.
また,そもそも把持するタイプのデバイスである関係上,様々な物体を握ったりする感覚も提示困難となります.

しかし,それらの難点を補って余りある利点としては,コンパクトであることと,位置情報をかなり正確にVR空間にマッピングできる点が挙げられます.そのため,上図の HTC Vive や Oculus ,Nintendo Switchなどのコントローラとして用いられています.
一応,触覚提示の手段として振動子が入っていることが多いです.

Cutaneous force feedback displays

これは,外骨格型で手を覆うような形状をしたデバイス全般を指しています.

下図は,この論文と同じ著者の過去の論文で「Wolverine」[1]というデバイスです.
WolvBan_749_231.jpg

また,最近では製品としても流通しており,具体例としてEXOS(exiii株式会社)などがあります.
arm-b-low_whiteback.png

このようなデバイスは,自分の腕や手首,さらには指同士で「接地」することで力覚の提示を実現しています.
(個人的な感想ですが,やはり何かから反力を得ないと力覚の提示は難しいのですね...
空中の何もないところで力覚提示は夢物語なんですかねぇ)

しかし,これらの機構はあくまで「接触感」の提示であって,物体を把持すると当然発生する「重力」や「慣性」の提示はできません.

Skin Stretch Feedback

これは,皮膚を刺激して触覚の受容器を刺激するタイプのデバイスを指します.

有名なのは,舘研の「Gravity Grabber」[2]とかですかね.
project13_1.jpg

いわゆる振動子で刺激する系の研究もここに分類されるようです.
(ん?じゃあWand-based controllersはどうなるんだろう... たぶん,受容器を選択的に刺激しているかどうかだと思いますが...)

こういうデバイスは,知ってる人は知ってると思いますがほんとにたくさんあります.
触覚界隈の人たちがアクチュエータとか回路とかに詳しいのは,振動子系の研究のせいじゃないですかね(偏見)

そして,それだけ研究があるってことは,接触感や重力を含めた力覚を提示したものがいくつかあります.
もちろん[2]もですし,著者が追加で挙げているのは[3]と[4]とかです.

しかし,上図の「Gravity Grabber」のように指の周りにある比較的大きなアクチュエータが複数必要になるとのことです.

ここで,著者はSkin Stretch Feedbackの中で「Traxion: A Tactile Interaction Device with Virtual Force Sensation」という研究に注目します.(舘先生の次は暦本先生出てきた...しゅごい(語彙力))

これは,振動提示するときに振動子に入力する波形を非対称(下図の左)のようにすることで仮想の力を発生させることができる,というものです.

traxion.PNG

これを「慣性」の提示に利用できないだろうか,と試みた結果が今回の「Grabity」となるようです.

具体的には,普通の波形(対象的な波形)ならこの下図のように振動するところを...
(右側のやつはアクチュエータの模式図です.伝わりにくかったらすいません...)
図1.png

非対称にすることで任意の方向に仮想的に力を提示できるってことのようです.
(例えば下図は上向き)
図2.png

(下図は下向き)
図3.png

おわりに

とりあえず以上です.
力覚提示という観点で,VRで用いられているデバイスの分類についてでした.

実は,もう1つ「Haptic Devices for Weight Simulation」という分類があるのですが,これについては本当に関連研究って感じで分類ではないような感じだったので割愛です.
重力提示を行うデバイスの研究をする人なら一読の価値ありかもしれません.
今後時間があったら追記したいと思ってます.

振り返ってみるとこんなものでよかったんですかね...
間違いとかありそうなので,指摘などありましたら随時よろしくお願いします.

参考文献

[1] CHOI, Inrak, et al. Wolverine: A wearable haptic interface for grasping in virtual reality. In: 2016 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS). IEEE, 2016. p. 986-993.
[2] MINAMIZAWA, Kouta, et al. Gravity grabber: wearable haptic display to present virtual mass sensation. In: ACM SIGGRAPH 2007 emerging technologies. ACM, 2007. p. 8.
[3] SCHORR, Samuel B.; OKAMURA, Allison M. Fingertip tactile devices for virtual object manipulation and exploration. In: Proceedings of the 2017 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems. ACM, 2017. p. 3115-3119.
[4] TZEMANAKI, Antonia, et al. Design of a Wearable Fingertip haptic Device for remote Palpation: characterisation and interface with a Virtual environment. Frontiers in Robotics and AI, 2018, 5.62: 1-15.
[5] REKIMOTO, Jun. Traxion: a tactile interaction device with virtual force sensation. In: Proceedings of the 26th annual ACM symposium on User interface software and technology. ACM, 2013. p. 427-432.

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