この記事は?
VR機器を用いて配信を行う際、 バーチャルキャスト を使うと、背景にPCのディスプレイ画面を映しつつ、複数人の演者がその前に立ってパフォーマンスを行うことができます。本記事はその方法についてのメモ書きになります。映像 Credit: SpaceX
すでにバーチャルキャストで配信を行った経験のある方に向けた内容です。
執筆時点でバーチャルキャストの「スタジオ」は「ルーム」へ移行されることが決まっており、閲覧時点で本記事の内容は有効ではない可能性があります。
ディスプレイを直接見ることができるのは配信者1人だけで、ゲストは各自配信画面をローカルの物理ディスプレイに全画面表示する必要があります。ゲスト側では遅延が数秒~数十秒発生します。
ナイショ
NeosVRやVRChatならバーチャル内で遅延なくディスプレイ画面が共有できるらしいぞ?(Neosは導入が難しく、VRChatは配信に向いていない)権利映像、権利楽曲の利用、ゲームのネタバレ、センシティブな映像の映り込み等に十分注意しましょう。
バーチャルキャストにおいてディスプレイを背景とするメリット
YouTuber、VTuberの配信ではPC画面を見せたい場合、主にクロマキーを使って人物・キャラクターをOBS上で合成しています。キャラクターを表示するためのアプリなどを別途起動しておく必要があり、場合によってはPCに大きな負荷がかかりますが、こうした合成をバーチャルキャスト単体で済ませてしまう事が可能になり、マシンパワーを画質向上に充てられるようになります。そもそもクロマキーが存在しない為、除去しきれなかった緑や紫のクロマキーのノイズがキャラの周囲に残ることもありません。クロマキーがないので衣装の色も自由に選ぶことができ、ゲストとの事前の打ち合わせも不要です。
上の写真は saiさん (向かって右の机に座っている)が現実で立体パズルを解いている配信。Webカメラの映像をディスプレイとしてVR空間へ投影し、私や しろひげちゃん は大画面の仮想モニターとして観覧しています。視聴者に背中を向けているのはトーク番組等であれば論外ですが、あえて背中を向けることで日常の一コマを演出できています。
コメントだけでなく、視聴者はゲストとしてスタジオ内でより深く番組に関われるようになるため、長時間配信でもダレにくくなります。音声のやりとりもバーチャルキャスト内で完結するため、Discord等を使用する必要がありません。ワンオペでの複数人配信との相性が本当に良いのです。
上の写真ではスライドを用いて解説をしています。だいぶ手軽になったとはいえ、各VRプラットフォーム内でスライドを表示させる場合、数クリックの変換作業が必要になりますが、バーチャルキャストスタジオのディスプレイ表示なら生のファイルそのままを表示することができます。この手軽さは他のプラットフォームにはない大きなアドバンテージです。
デスクトップ表示と配信の相性が良くないもの(クリックで開きます)
バーチャルキャスト自体がそれなりに高い3Dグラフィック性能を要求するため、PS5 / Xbox series X 相当の高いグラフィックを要求するPCゲーム実況配信には向いていません。そもそもHMDをかぶった状態でゲームすることが難しいので、ゲーム配信全般との相性はLive2D系の技術に軍配が上がります。一方でSwitch,PS4,PS5,Xboxなどゲームコンソール機からの外部映像入力との相性は良いようで、バーチャルキャストスタジオ内でのディスプレイ表示機能でゲーム実況配信されている方は多かったりします。先に難しいとしたPCゲーム配信も、ゲーミング用PCと配信用PCがあればコンソール機並みにハードルが下がるでしょう。必要なもの
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バーチャルキャストが配信できるVR機器とPC環境
すでに用意できていて配信経験もあるものとし、ここでは割愛します。 -
物理ディスプレイ
1画面でも十分可能ですが、OBSなどの管理用に2画面以上あると配信がよりスムーズになります。
配信にはいずれか1つの物理ディスプレイを使用します。 -
物理ディスプレイの解像度
背景に用いる映像はディスプレイに限らず、高解像度であることが望ましいです。縦横比率16:9、1080p 以上の解像度が推奨されます。縦横比率21:9などのワイドディスプレイも問題なく表示できますが、左右が切り抜かれてしまうか、上下を表示しない形に縮小して全画面を表示するなどの工夫が必要になります。
曲面ディスプレイはVR空間内では平面に変換されます。
画面解像度としてバーチャルキャスト側では出力映像に最高1080p(1920x1080)の制限がありますが、2K、4Kモニタを使用しても問題はありません。 4Kモニタはバーチャルキャスト内でも4K解像度で表示されるため、 より高画質で出力できるだけでなく、HMDの解像度次第では 物理ディスプレイよりも高画質・大迫力で見ることができます。
必須ではないけどあると便利
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OVR Advanced Settings
空中浮遊ができるSteamVRアドオン(無料)。数メートルサイズになるディスプレイを上空から設置作業を行うことができ、大変便利。 -
Elgato - Stream Deck
キートップにカスタム画像、アニメーション、ステータス表示を設定できる物理キーボード。一般的なマクロキーボード・拡張キーボードとしても使える大変便利なガジェット。なによりかっこいい。
参考: オモイカネ杯での利用例
バーチャルキャスト内での準備
公式アイテムの「ディスプレイ」から、バーチャルキャストが起動しているPCに接続されている物理ディスプレイが選択できると思います。VR空間内で表示させたいディスプレイを選択しましょう。
以下がスタジオでPCのディスプレイを出した直後の状態。初期状態のディスプレイはサイズが小さく、位置もまちまちです。これからこのディスプレイをモニターカメラのサイズに引きのばして設置していきます。モニターカメラは16:9、VRスタジオ内での横幅が180cmあります。
スタジオでのモニターカメラはサイズ固定。ルームではサイズを変更することができます。縦横比率はいずれも16:9で固定。
位置の決定には らんさん の 「ルーム仮対応_モニターカメラ表示範囲可視化ツール」 (下図)を使います。仮にアイテムが削除されている場合はTHE SEED ONLINEから 「モニターカメラ」 で検索するとよいでしょう。
スタジオ背景のロケーションには 瑞姫 亞希乃さん の 「グリッド実験ドーム (直径1km)」 を使っています。後述しますが床が透けているのでディスプレイの一部が地下に潜っても位置決めがしやすいです。
上の画像ではモニターカメラとディスプレイの距離が2mですが、これでは演者が動いたりアイテムを配置することが困難です。モニターカメラから5m以上離すと適度にバーチャル空間を活用できるようになります。 おすすめは10mです。 可視化ツールをトリガーボタンでUseしていくと1段階づつ遠くに表示されるので見やすい位置を探っていきましょう。
以下はHMDから空間内のディスプレイが距離によってどう見えるかの図です。
これはSteamVR側での内部的な表示イメージであり、HMD上では小さく切り抜かれたものが視界いっぱいに表示される、と考えてください。
一見すると3m離れていれば全部見えそうですが、Valve Indexでは周辺が切り取られて視野に入りません。10m離して画面がすべて見え、かつ適度に大画面で見られるようになります。さらに離していけばより画面を小さくできますが、モニターカメラ側に全画面で表示させるために空間内におけるディスプレイサイズも巨大化するため、10mと50mでは見た目の差は少なくなります。
ディスプレイを背景とするにあたっての最大の障害がスタジオのロケーション。モニターカメラの設置高さにもよりますが、身長160~170cmのアバターをバストアップで映す場合を想定してモニターカメラを設置したとします。この場合3mの距離まではディスプレイは地上に表示されますが、それ以上離すと下半分が地下にもぐってしまいます。 床のないロケーションを使いましょう。
使用したロケーション : 「どこかの田舎道」
THE SEED ONLINEの検索から床なしのロケーションを探すのは困難です。(バーチャルキャストさん改善して!)
床なしの一例として 瑞姫 亞希乃 さんの 「AllSky」、「日本列島360_1」、「8k宇宙から見る地球」 などがおすすめです
「AllSky」を使ってみました。スッキリ置けそうですね!
床がないので高所恐怖症の方は注意が必要です。また平衡感覚にも影響が出るのでHMDをかぶった状態では転倒のおそれがあります。割とすぐ慣れますけども・・・
ディスプレイを配置する
あとはアイテムとしてのディスプレイを可視化ツールに合わせて手作業で配置していきます。ディスプレイなどのアイテムは両手Grabで拡大、縮小します。背景のロケーション例として 「日本列島360_2」 を使用しています。
全画面にする必要はありません。ディスプレイを小さくし、右隅を開けることでコメント窓やアバター表示スペースを設け、よく見るVTuber配信のスタイルにもできます
モニターカメラ上で大雑把に位置決めをしたら、最後の微調整はOBSに渡すVirtualCastのウィンドウとにらめっこしながら行います!終わったら可視化ツールは削除しておきましょう。
きっちり合わせようとこだわり始めると微調整だけで15分以上かかります。ほどほどに。
おつかれさまでした。