インタネットユーザーの急増に伴い、情報通信ソリューション・技術の革新も日々進んでいます。データ通信量(トラフィック)の激増に応じて、次世代ネットワークやデータセンターへの構築・強化・移行が促されます。その中に、ネットワークの構築に欠かせないL2スイッチとL3 スイッチ、異なるネットワーク階層に存在する2つのLAN スイッチの違いについて、詳しく説明します。
目次
レイヤ2スイッチとレイヤ3スイッチの選び方、重視すべきポイントとは
OSI参照モデルとは
ネットワークの仕組みを簡単に説明すると、下記のOSI参照モデル図に示すようになります。OSI参照モデルは、ネットワークの機能を7つの階層に分割するという国際標準化機構(ISO)によって定義された標準モデルです。
図1:OSI参照モデル
7つの階層を下から見ると、それぞれはレイヤ1(L1)物理層、レイヤ2(L2)データリンク層、レイヤ3(L3)ネットワーク層、レイヤ4(L4)トランスポート層、レイヤ5(L5)セッション層、レイヤ6(L6)プレゼンテーション層、レイヤ7(L7)アプリケーション層です。
レイヤ2(L2)スイッチとレイヤ3(L3)スイッチの比較
レイヤ2(L2)はOSI参照モデルの第2層における「データリンク層」のことを指しています。レイヤ2に位置するL2 スイッチは同じネットワーク内にある全ての機器・デバイスに接続しています。L2 スイッチによって、接続された機器・デバイスのMACアドレスが記憶され、ネットワーク内でのデータ通信が行わます。しかし、L2 スイッチではVLAN(Virtual LAN、物理的に独立している接続形態を持ち、仮想的なLANセグメントを作る)間の通信はできません。
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レイヤ3はOSI参照モデルの第3層における「ネットワーク層」のことをさしています。レイヤ3に位置するL3 スイッチはL2 スイッチの機能とルーター機能(異なるネットワークを跨ぎ、パケット送信の最優経路を決めるルーティング機能)を持っています。
L3 スイッチによって、データ転送処理が行われ、異なるネットワーク同士を繋ぐことが実現されます。L2 スイッチとは違い、VLAN(意味)を設定することができます。レイヤ2スイッチとレイヤ3スイッチのネットワーク構成は下記の図に示すように:
アイテム/作動原理 | レイヤ2スイッチ | レイヤ3スイッチ |
---|---|---|
ルーティング機能 | 唯一のMACアドレス | 静的もしくは動的ルーティング機能をサポート |
IPアドレスに基づくVLANの割り当て | NO | YES |
VLAN間ルーティング | NO | YES |
仮想ルーティングのシナリオ | ブロードキャストドメインを分割するL2の仮想技術 | 接続されたレイヤ2スイッチを集約してデータ通信を行う |
ルーターとは
ルーターは2つ以上の異なるネットワークをまたぎ、そのデータ中継を行う通信機器です。OSI参照モデルのネットワーク層(レイヤ3)ルーターはネットワーク間のやり取りを中継し、宛先のIPアドレスをもとにデータ転送を行います。例えば、2つの異なるLAN(Local Area Network)間、WAN(Wide Area Network)間、あるいはLANとISP(Internet Seveice Provider)の間です。通常、ルーターはゲートウェイに位置し、複数の規格の異なるネットワークを中継します。
パケットヘッダーとルーティングテーブルに基づいて、ルーターはネットワーク上のルーティングに関する決定(最適な経路を通じてパケットを転送する)を行います。また、ルーターにおいて、ICMP(Internet Control Message Protocol、インターネット制御通知プロトコル)のようなプロトコルが用いられ、機器間の通信や通知に関する情報の通知などのために使用されます。そのプロトコルを通じて、ホスト間の通信中継を行うルーターはネットワークを経由し、パケットを伝送します。機種 | ルーター | レイヤ3スイッチ |
---|---|---|
主体となる処理 | ソフトウェア | ハードウェア |
処理速度 | 低速・中速 | 高速 |
対応プロトコル | マルチプロトコル | TCP/IPのみ |
コスト | 比較的に安価 | 高価 |
ネットワーク規模 | 中・小規模に適用 | 中かつ大規模向け |
機能 | 機能追加が容易で多機能 | 機能が少ない |
拡張性 | 高い | 低い |
実例商品 | ルーター |
(20x10Gb SFP+、4x25Gb SFP28) |
レイヤ2スイッチとレイヤ3スイッチの選び方、重視すべきポイントとは
レイヤ2あるいはレイヤ3スイッチを購入する前に、フォワーディングレート、バックプレーン容量、最大VLAN数、MACアドレスのフラッシュメモリ、遅延などの要素を考慮する必要があります。その中、フォワーディングレートとはスイッチなど最初のビットを送信してから最後のビットを送信するまでの平均時間ということです。すべてのインターフェースでワイヤスピード(理論的に考えられる最大フレームがケーブルに流れているときの通信状況)を実現することはノンブロッキングと言います。
フォワーディングレートは転送レートとも呼ばれ、パケット処理速度pps(packetsper secondの略で、1秒あたりに転送処理できるパケット数を表す)という指標でパフォーマンスを判断することができます。
計算公式
装置全体で必要な転送能力 = ワイヤースピード出る転送能力(pps) × インターフェース数。 いわゆる: フォワーディングレート(pps)=10G対応のポート数×14,880,950 pps+1G対応のポート数×1,488,095 pps+100M対応のポート数×148,809 ppsです。ここでは、【FS】S5860-32S2Q(10G対応のポート×32+40G対応のポート×2)の例を挙げて説明すると、以下のようになります。
32 * 14,880,950 pps + 2 * 4 * 14,880,950 pps = 595,238,000 pps ≈ 596 Mpps
バックプレーン容量とはスイッチ全体での1秒間で処理できるデータ量ということです。バックプレーンは「イッチングファブリック」とか、「スイッチング容量」なんて呼ばれたりすることもあります。通常スイッチは全二重通信を行うため、1ポート上りと下りで2倍の通信量が発生します。つまり、バックプレーン容量(bps)=ポート数×転送速度×2となります。
FS S5850-32S2Qの場合は(32 * 10 Gbps + 2 * 40 Gbps) * 2 = 800 Gbpsとなります。
スイッチングハブを選ぶ際に、最大VLAN数「IPアドレス設定可能数」とMACアドレスの最大登録数(普通8k or 128k)を考慮しなければなりません。ほかに、伝送遅延、伝搬遅延などのネットワーク遅延の発生を最小限に抑えられるのかを確かめる必要もあります。