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n次元球の体積と表面積

$n$ 次元はお好きですか?僕は好きです。

n次元球の定義

$n$ 次元球というのは $n$ 次元の球です。
ちゃんと言うと、$n$ 次元空間内の「ある点」からの(ユークリッド)距離が「ある値」以下の空間を $n$ 次元球と呼びます。
「ある点」を球の中心、「ある値」を球の半径と呼びます。
なお、今回は球の中身は詰まってるものと考えます。球の定義が「『ある値』ちょうど」ではなく「『ある値』以下」になっているのはそのためです。
別に詰まってても詰まってなくてもいいんですが、僕は詰まってる方が好きなので詰まってることにします。

この定義に沿うと、$n<3$ の時も $n$ 次元球が定義できます。それは次のようになります。
・$2$ 次元球は円を指す。$2$ 次元球の中心や半径は通常の円の中心や半径と同じ。
・$1$ 次元球は線分を指す。$1$ 次元球の中心は線分の中点、半径は線分の長さの半分。

とこのように $n$ 次元球の定義はできたものの、$n$ が大きい場合はいまいち想像できませんよね。
$4$ 次元くらいなら想像できると思いますが、$5$ 次元の球なんてどうなってるのか分かりません。
そこで、今回は「 $k$ 次元球の体積から $k+1$ 次元球の体積を求める漸化式を作り、それを何回も適用する」という方針で体積を求めていきます。1

n次元球の体積

1. 漸化式を立てる

まずは $n$ が小さい場合の体積の公式を書いてみましょう。$n≦3$ なら中学生で習う公式だけで網羅できます。
ただし、半径 $r$ の $n$ 次元球の体積を $f_n(r)$ と書くことにします。
・$f_1(r) = 2r$
・$f_2(r) = \pi r^2$
・$f_3(r) = \frac43\pi r^3$

$3$ 次元球の体積 $f_3(r)$ の公式は中学生で習いますが、積分を使って計算することができます。
$3$ 次元球を縦に細かくスライスすると、たくさんの円をくっつけたものとみなすことができます。
単位球の中心からの距離が $x$ の位置でスライスすると、切り口の円の半径は三平方の定理より $\sqrt{1-x^2}$ となります。
また、半径 $r$ の $3$ 次元球の体積は、単位球の体積を $r^3$ 倍にすればよいです。
よって、$$f_3(r)=r^3\int_{-1}^1 f_2\big(\sqrt{1-x^2}\big) dx$$という積分の形で表すことができます。

ここで、定積分の部分は定数なので、$f_3(r)$ は $3$ 次単項式になります。
単位球の体積は定数であり、半径 $r$ の球の体積はその $r^3$ 倍であると考えると当たり前のことですね。
同様の理由で、$f_n(r)$ は $n$ 次多項式になります。そこで、$a_n$ という定数を $$f_n(r)=a_nr^n$$ となるように定義します。つまり、$a_n$ は単項式 $f_n(r)$ の係数です。
これを使い、上の積分の式は $$a_3=\int_{-1}^1 f_2\big(\sqrt{1-x^2}\big) dx=a_2\int_{-1}^1 \big(\sqrt{1-x^2}\big)^2 dx$$ と書き換えられます。

同じように、$2$ 次元球(=円)も縦に細かくスライスすると $1$ 次元球(=線分)がくっついたものとみなせます。
単位円の中心からの距離が $x$ の位置でスライスすると、切り口の線分の半径は三平方の定理より $\sqrt{1-x^2}$ となるので、$$a_2=\int_{-1}^1 f_1\big(\sqrt{1-x^2}\big) dx=a_1\int_{-1}^1 \sqrt{1-x^2} dx$$ となります。


$2$ 次元や $3$ 次元の場合と同じようにして、$n$ 次元の場合も細かくスライスすることで $n-1$ 次元球がくっついたものとみなすことができます。
半径が $1$ の $n$ 次元球においては、中心から距離が $x$ の位置でスライスすると、切り口の $n-1$ 次元球の半径は $\sqrt{1-x^2}$ になります。
よって、$$a_n=\int_{-1}^1 f_{n-1}\big(\sqrt{1-x^2}\big) dx=a_{n-1}\int_{-1}^1 \big(\sqrt{1-x^2}\big)^{n-1} dx$$ が成り立ちます。

2. 漸化式を計算する

$a_n$ に関する漸化式 $$a_n=a_{n-1}\int_{-1}^1 \big(\sqrt{1-x^2}\big)^{n-1} dx$$ が立てられたものの、定積分があっては不便です。
なので、この定積分を計算して積分記号を外すことにしましょう。
なお、この積分は $I_n$ とおくことにします。

2-1. (√1-x^2)^(n-1)の積分

求める積分は $$I_n=\int_{-1}^1 \big(\sqrt{1-x^2}\big)^{n-1} dx$$ です。
$x=\sin t$ とおくと、積分区間は $[-1, 1] \to [-\frac{\pi}2, \frac{\pi}2]$ になり、また $\sqrt{1-x^2}=\cos t, dx=\cos tdt$ なので 2 、置換積分をすることで $$I_n=\int_{-\frac{\pi}2}^\frac{\pi}2 \cos^ntdt$$ というとてもシンプルな形になります。

2-2. cos^n tの積分

$I_n$ を部分積分し、同じ形を作り出します。$n≧2$ であることに注意してください。

\begin{align}
I_n &= \int_{-\frac{\pi}2}^\frac{\pi}2 \cos^ntdt \\
&= \int_{-\frac{\pi}2}^\frac{\pi}2 \cos^{n-1}t \cdot \cos tdt \\
&= \big[\cos^{n-1}t \sin t\big]_{-\frac{\pi}2}^\frac{\pi}2 - \int_{-\frac{\pi}2}^\frac{\pi}2 (\cos^{n-1}t)' \sin tdt \\
&= 0 - \int_{-\frac{\pi}2}^\frac{\pi}2 (n-1)\cos^{n-2}t \cdot (-\sin t) \cdot \sin tdt \\
&= (n-1) \int_{-\frac{\pi}2}^\frac{\pi}2 \cos^{n-2}t \sin^2tdt \\
&= (n-1) \int_{-\frac{\pi}2}^\frac{\pi}2 \cos^{n-2}t (1-\cos^2t)dt \\
&= (n-1) \int_{-\frac{\pi}2}^\frac{\pi}2 \cos^{n-2}t dt - (n-1) \int_{-\frac{\pi}2}^\frac{\pi}2 \cos^nt dt \\
&= (n-1)I_{n-2} - (n-1)I_n \\
nI_n &= (n-1)I_{n-2} \\
I_n &= \frac{n-1}nI_{n-2}
\end{align}

$I_0=\pi$ (2-1.で得られた積分に $n=0$ を代入すると得られる) より、$n$ が偶数のとき $$I_n=\frac{n-1}n\cdot\frac{n-3}{n-2}\cdot \dots \cdot \frac12 \cdot I_0
=\frac{(n-1)!!}{n!!}\cdot \pi$$ です。
ただし $!!$ は二重階乗です(例えば $5!!=1\cdot3\cdot5$ や $6!!=2\cdot4\cdot6 $ など)。

$I_1=2$ (2-1.の元の積分に $n=1$ を代入すると得られる) より、$n$ が奇数のとき$$I_n=\frac{n-1}n\cdot\frac{n-3}{n-2}\cdot \dots \cdot \frac23 \cdot I_1
=\frac{(n-1)!!}{n!!}\cdot 2$$
です。

これらの結果は、

\begin{eqnarray}
c_n=
  \begin{cases}
    \pi & ( nが偶数 ) \\
    2 & ( nが奇数 )
  \end{cases}
\end{eqnarray}

として定義される定数 $c_n$ を用いることで $$I_n=\frac{(n-1)!!}{n!!}c_n$$ とまとめて表すことができます。

3. 一般項を求める

$a_n$ の漸化式がかなり簡単な形になったので、一般項を求めてみましょう。
$a_n$ の漸化式は $$a_n=a_{n-1}I_n=a_{n-1}\frac{(n-1)!!}{n!!}\cdot c_n$$
です。また、$f_1(r)=2r$ より $a_1=2$ です。これらより、

\begin{align}
a_n &= \left( \prod_{k=2}^nI_k \right) \cdot 2 \\
&= \frac{(n-1)!!}{n!!} \cdot \frac{(n-2)!!}{(n-1)!!} \cdot \dots \cdot \frac{1!!}{2!!} \cdot \left( \prod_{k=2}^nc_k \right) \cdot 2 \\
&= \frac{1!!}{n!!} \cdot \left( \prod_{k=2}^nc_k \right) \cdot 2 \\
&= \frac2{n!!} \cdot \prod_{k=2}^nc_k
\end{align}

となります。

ここで、$n$ が偶数のときは

\begin{align}
a_n &= \frac2{n!!} \cdot \prod_{k=2}^nc_k \\
&= \frac2{\big(\frac n2\big)! \cdot 2^{\frac n2}}\cdot\pi^{\frac n2}\cdot2^{\frac n2-1} \\
&= \frac{\pi^{\frac n2}}{\big(\frac n2\big)!}
\end{align}

であり、$n$ が奇数のときは

\begin{align}
a_n &= \frac2{n!!} \cdot \prod_{k=2}^nc_k \\
&= \frac2{n!!} \cdot \pi^{\frac {n-1}2}\cdot2^{\frac {n-1}2} \\
&= \frac2{n!!} \cdot (2\pi)^{\frac {n-1}2}
\end{align}

です。
ちなみに、ガンマ関数(階乗を実数や複素数の範囲に拡張した関数)を使うと $n$ が偶数のときと奇数のときをまとめて書けるみたいです。3

こうして、$n$ 次元球の体積 $f_n(r)=a_nr^n$ が求まりました。

n次元球の表面積

$n$ 次元球の表面積は $n$ 次元球の体積から計算することができます。
半径 $r$ の $n$ 次元球の体積を $V_n(r)$ とし、表面積を $S_n(r)$ とします。
$V_n(r)$ は前に出てきた $f_n(r)$ と同じものを表しています。

$n$ 次元球の厚さ $h$ の表面を考えます。これは半径 $r$ の $n$ 次元球から半径 $r-h$ の $n$ 次元球をくり抜いたものなので、その体積は $V_n(r)-V_n(r-h)$ になります。
また、この体積は $h$ が小さくなると $S_n(r)h$ に近づきます。
つまり、$h$ が小さくなるにつれて $V_n(r)-V_n(r-h)$ と $S_n(r)h$ は近づいていきます。
よって、

\begin{align}
&\lim_{h \to 0}\frac{V_n(r)-V_n(r-h)}{S_n(r)h}=1 \\
S_n(r)={}&\lim_{h \to 0}\frac{V_n(r)-V_n(r-h)}h=(V_n(r))'
\end{align}

となります。$V_n(r)=a_nr^n$ より、$S_n(r)=na_nr^{n-1}$ です。4

こうして、$n$ 次元球の表面積も求まりました。

結論

\begin{eqnarray}
a_n=
  \begin{cases}
    \frac{\pi^{\frac n2}}{\big(\frac n2\big)!} & ( nが偶数 ) \\
    \frac2{n!!} \cdot (2\pi)^{\frac {n-1}2} & ( nが奇数 )
  \end{cases}
\end{eqnarray}

とおくと、半径 $r$ の $n$ 次元球の体積は $a_nr^n$、表面積は $na_nr^{n-1}$ である。3

利用

・$n=1$ のとき $a_n=\frac2{1!!} \cdot (2\pi)^0=2$
 ・$1$ 次元球の体積は $2r$ となり、既知の結果と一致します。
・$n=2$ のとき $a_n=\frac{\pi^1}{1!}=\pi$
 ・$2$ 次元球の体積は $\pi r^2$、表面積は $2 \pi r$ となり、既知の結果と一致します。
・$n=3$ のとき $a_n=\frac2{3!!} \cdot (2\pi)^1=\frac43\pi$
 ・$3$ 次元球の体積は $\frac43\pi r^3$、表面積は $4 \pi r^2$ となり、既知の結果と一致します。

・$n=4$ のとき $a_n=\frac{\pi^2}{2!}=\frac12\pi^2$
 ・$4$ 次元球の体積は $\frac12\pi^2 r^4$、表面積は $2\pi^2 r^3$ となります。


  1. $3$ 次元の解からは $4$ 次元の解が求まり、$4$ 次元の解からは $5$ 次元の解が求まり、といった風にドミノ倒し的に $n$ 次元の解が求まります。 

  2. $\sqrt{1-\sin^2t}=\cos t$ は一般には成り立ちませんが ($\cos t<0$ の場合)、今回考えている $t$ の範囲 $-\frac{\pi}2≦t≦\frac{\pi}2$ ではこの等式は常に成り立ちます。 

  3. ガンマ関数を使うと $a_n=\frac{\pi^{\frac n2}}{\Gamma\big(\frac n2+1\big)}$ 、あるいは同じことですがパイ関数を使うと $a_n=\frac{\pi^{\frac n2}}{\Pi\big(\frac n2\big)}$ と表すことができます。 

  4. $n$ 次元球の球面を細かく分割し、分割された各ピースと球の中心を結んでできるたくさんの細長い錐を考えることでも、$n$ 次元球の表面積は体積の $\frac nr$ 倍になっていることが分かります。なお、この場合は $n$ 次元錐の体積が (底面積) × (高さ) ÷ $n$ で求まるという前提知識が必要です。 

Euglenese
競プロとかMinecraftとかが好き
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