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n次元錐体の体積

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タイトルに$n$次元錐体と書きましたが、そもそも$n$次元錐体とは何でしょうか。
$n$次元錐体と言われても想像がしづらいと思うので、まずは低次元の錐体を考えてみましょう。
###低次元錐体
####3次元錐体
一番想像しやすいのは$3$次元錐体でしょう。要するにただの錐体です。
$3$次元錐体は底面が$2$次元の図形、つまり平面図形になっています。
そして、錐体には高さがあり、これは正の値を取ります。錐体において、底面から高さだけ離れた所はその錐体の頂点になります。
また、錐体を底面と平行な面で切ると、その切断面は底面の図形と相似になっていて、切断面の大きさは底面から離れるほど小さくなります。
つまり、底の平面図形が$G_2$、高さが$h\ (h>0)$であるような錐体は、底面との距離が$k\ (0≦k≦h)$であるような平面で切断すると、その切断面は$G_2$と相似で、$G_2$と切断面の相似比は$h:h-k$になります。
####2次元錐体
$3$次元錐体が分かったところで早速$n$次元錐体を、と行きたい所ですが、さらに次元を$1$個下げて次は$2$次元錐体を考えてみましょう。
なぜ$2$次元錐体を考えるのかというと、なんやかんや計算して$n$次元錐体の体積を求める式が出来た時、その式の検算に$n=3$しか使えないのよりも$n=2,3$の両方が使えた方が良いからです。
それでは、$3$次元錐体の定義と同じように$2$次元錐体も定義してみましょう。
#####2次元錐体の定義
$3$次元錐体の底面は$2$次元だから、$2$次元錐体の底面は$1$次元になります。底面というか底辺ですね。
$2$次元錐体にも同じように高さがあり、正の値を取ります。そして、底辺からその高さ分だけ離れた所はその$2$次元錐体の頂点になります。
つまり、$2$次元錐体には底辺と高さがあり、頂点があり、底辺と頂点は高さだけ離れていることになります。
この$2$次元錐体の正体は分かりましたか?
そう、この$2$次元錐体とは三角形のことです。

$2$次元錐体の正体が分かった所で、これも$3$次元錐体と同じように定義します。
$2$次元錐体の底辺を$G_1$とし、高さを$h$とします。
この$2$次元錐体を底辺との距離が$k\ (0≦k≦h)$であるような直線で切断すると、その切れ目は$G_1$と相似になり、$G_1$と切れ目の相似比は$h:h-k$になります。
相似と言っても$G_1$は線分なので、切れ目も当然ただの線分です。相似比というのは線分の長さの比のことになります。
つまり、これは簡単に言うと「$2$次元錐体を底辺から$k$離れた直線で切ると、その切れ目は$G_1$の$\frac{h-k}{h}$倍の長さになる」となります。$2$次元錐体が三角形であることを考えれば当たり前ですね。
###n次元錐体
それでは、$n$次元錐体を考えていきましょう。$n$次元錐体にも低次元錐体と同じように底と高さがあるはずです。
$3$次元錐体の底は$2$次元図形、$2$次元錐体の底は$1$次元図形だったことを考えると、$n$次元錐体の底は$n-1$次元図形と考えるのが妥当でしょう。これを$G_{n-1}$とします。
高さは低次元図形と同じように正の値を取るものとします。これも先ほどと同じように$h\ (h>0)$とします。
すると、$n$次元錐体は、底との距離が$k\ (0≦k≦h)$であるような$n-1$次元空間で切ると、その切れ目は$G_{n-1}$と相似で、$G_{n-1}$と切れ目の相似比は$h:h-k$になります。
...と言われても、全く想像できませんね。では、$n=4$の場合、つまり$4$次元錐体を考えてみます。
####4次元錐体
#####4次元錐体の定義
$4$次元錐体は$3$次元図形の底と正の値を取る高さを持ち、それぞれ$G_3, h\ (h>0)$とします。
$4$次元錐体は、底との距離が$k\ (0≦k≦h)$であるような$3$次元空間で切ると、その切れ目は$G_3$と相似で、$G_3$と切れ目の相似比は$h:h-k$になります。
#####4次元錐体の想像
$4$次元の図形を想像する時、便利な方法があります。
まずは、$4$次元空間に$x,y,z,t$の$4$個の座標軸を置き、$xyzt$座標空間とします。
ここで、$x,y,z$の軸は$3$次元空間の時と同じように現実世界に置き、$t$の軸は時間軸とします。
つまり、時間経過によって形が変化していく$3$次元図形と考えるのです。
こうすると、底の図形が$G_3$で高さが$h$の$4$次元錐体は、時刻$0$に突然図形$G_3$が現れ、時間が経つにつれ段々と小さくなっていき、時刻$h$にはただの点になるようなもの、と考えることができます。
あるいは、時間軸の代わりにスマホアプリのスライダーのようなものをイメージしてもらい、それを左右に動かすことで現実世界の$3$次元物体が変化する、と考えてもいいかもしれません。
###n次元錐体の体積
さて、$n$次元錐体が定義できたので、ようやく$n$次元錐体の体積を考えていきます。
ただ、いきなり$n$次元錐体の体積を考えるのではなく、ここでは低次元錐体の体積をまず求め、それを一般化して$n$次元錐体の体積を考えることにします。
ただし、以下では図形$G$の体積($G$の次元によっては面積や長さになるかもしれない)を$S(G)$と表すことにします。
####3次元錐体の体積
$3$次元錐体の底面と高さをそれぞれ$G_2, h$とした時、$3$次元錐体の体積が$\frac13hS(G_2)$と表せるのは広く知られていると思いますが、これを計算で求めましょう。
この錐体に関してさっき「底面との距離が$k\ (0≦k≦h)$であるような平面で切断すると、その切断面は$G_2$と相似で、$G_2$と切断面の相似比は$h:h-k$になる」と分かりました。
$G_2$と切断面の相似比が$h:h-k$ということは面積比は$h^2:(h-k)^2$になるので、切断面の面積は$G_2$の$\frac{(h-k)^2}{h^2}$倍です。
よって、この錐体の体積は定積分を使って

\int_0^h\frac{(h-k)^2}{h^2}S(G_2)dk
=
\biggl[-\frac13\cdot\frac{(h-k)^3}{h^2}S(G_2)\biggr]_0^h
=
\frac13hS(G_2)

と表すことができ、$3$次元錐体の体積の公式通りになりました。
####2次元錐体の体積
$2$次元錐体の底辺と高さをそれぞれ$G_1, h$とした時、$2$次元錐体、つまり三角形の面積は$\frac12hS(G_1)$です。これも計算で求めましょう。
この錐体に関してもさっき「底辺との距離が$k\ (0≦k≦h)$であるような直線で切断すると、その切れ目は$G_1$と相似になり、$G_1$と切れ目の相似比は$h:h-k$になる」と分かりました。
$G_1$と切れ目の相似比が$h:h-k$ということは長さの比も$h:h-k$になり、切断面の面積は$G_1$の$\frac{h-k}{h}$倍になります。
よって、この錐体の体積は

\int_0^h\frac{h-k}hS(G_1)dk
=
\biggl[-\frac12\cdot\frac{(h-k)^2}hS(G_1)\biggr]_0^h
=
\frac12hS(G_1)

となり、三角形の面積の公式通りになりました。
####n次元錐体の体積
$3$次元錐体と$2$次元錐体の体積を定積分を使ってそれぞれ求めましたが、やってることはほとんど同じですね。
それでは、$n$次元錐体の体積もそれらと同じように計算しましょう。
$n$次元錐体の底辺と高さをそれぞれ$G_{n-1}, h$とします。
$n$次元錐体はさっき「底との距離が$k\ (0≦k≦h)$であるような$n-1$次元空間で切ると、その切れ目は$G_{n-1}$と相似で、$G_{n-1}$と切れ目の相似比は$h:h-k$になる」と分かりました。
$G_{n-1}$と切れ目は共に$n-1$次元の図形なので、それらの相似比が$h:h-k$ということは体積比は$h^{n-1}:(h-k)^{n-1}$になり、切れ目の体積は$G_{n-1}$の$\frac{(h-k)^{n-1}}{h^{n-1}}$倍になります。
さっきと同じようにまた積分して、この錐体の体積は

\int_0^h\frac{(h-k)^{n-1}}{h^{n-1}}S(G_{n-1})dk
=
\biggl[-\frac1n\cdot\frac{(h-k)^n}{h^{n-1}}S(G_{n-1})\biggr]_0^h
=
\frac1nhS(G_{n-1})

となりました。試しに$n=2$や$n=3$を代入してみると、上で求めた式と同じになるので、どうやら正しく求まっているようです。
###結論
$n$次元錐体の体積は、底の$n-1$次元図形の体積を$S$、高さを$h$とすると、$\frac1nhS$と表すことができる。

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