【中級レベル】IoT/組込みシステム確認問題
以下の問題は、初級レベルの内容からさらに踏み込み、組込み技術とIoTに関する内容を結びつける中級レベルを想定しています。
初めに示したPDFの範囲内で扱われている「エンベデッドシステムスペシャリスト」向けの知識を踏まえ、問題を構成しました。
必要に応じて、ご活用ください。
1. 選択式問題
Q1. 組込みシステムにおけるRTOS(リアルタイムOS)の特徴として、IoTデバイス開発時に特に考慮が必要な項目はどれでしょうか?
- デバイス全体の動作が常にユーザ空間でのみ実行される
- 割り込み処理の遅延を最小限に抑えるスケジューリングを備えている
- 強力なグラフィカルユーザインタフェースを必須とする
- マルチコアCPU以外では動作しない
Q2. IoT向けの組込み機器において、ファームウェアのサイズや実行時メモリ使用量を抑えるための一般的な手法として不適切なものはどれでしょうか?
- リンカスクリプトを活用して不要なコードやデータを排除する
- 動的なライブラリ読込を増やし、都度メモリ領域を確保する
- コンパイル時の最適化オプション(-Osなど)を利用する
- メモリ管理領域の断片化を抑えるため、スタティックアロケーションを活用する
Q3. IoTシステムで利用する低電力通信規格(LPWA)に関して、以下の説明のうち正しいものはどれでしょうか?
- Sigfoxはライセンスバンドでのみ動作するため、初期導入コストが非常に高い
- LoRaWANは端末側で送信出力を制御する機能があり、バッテリ寿命を延ばす工夫ができる
- NB-IoTはセルラー方式だが、自由に基地局を設置できるため運用しやすい
- Wi-SUNは都市部での利用が難しく、農業分野のみで使われている
Q4. IoT組込み機器の開発において、UARTやSPI、I2Cなどの通信インタフェースを選定する際に最も重視される要素はどれでしょうか?
- 温度センサーの測定範囲
- 通信速度やデータ転送量、実装の複雑度
- ボタンの配置とクリック感
- 3Dグラフィックス描画の性能
2. 穴埋め問題
Q5. 組込みシステムでマイクロコントローラが起動後、最初に実行する初期化コード(スタックポインタ設定やBSS領域初期化など)を総称して「_____」と呼ぶ。
Q6. IoTデバイスで使用される省電力モードの一種で、CPUクロックや周辺回路をほぼ停止させ、最小限の動作のみ継続する状態を「_____」と呼ぶ。
Q7. 組込みソフトウェアの**ハードウェア抽象化レイヤ(HAL)**を活用するメリットとしては、異なるマイコン間でもコードを再利用しやすいことと、_____を単純化できることが挙げられる。
(ヒント: ドライバや周辺機能ごとに異なるレジスタ設定の違いを、アプリケーションレイヤから隠蔽できる)
3. 記述式問題
Q8. IoT組込み機器のソフトウェア開発では、イベント駆動型の制御とタスクベースのマルチスレッド制御がよく用いられます。
- イベント駆動型とタスクベースの制御設計それぞれの利点を1つずつ、簡潔に述べてください。
Q9. IoTデバイスの消費電力を最適化するために、ハードウェア面とソフトウェア面の両方で行いうる具体的な対策を1つずつ挙げてください。
4. 応用・設計問題
Q10. 組込み機器において、リアルタイム通信と大量データ処理が同時に求められる場合があるとします。
- リアルタイム処理では決められた時間内の応答が必須
- 大量データ処理では高い計算リソースを必要とする
このような要求を満たすアーキテクチャとして、どのような設計方針やシステム構成が考えられますか?
(例:メインマイコンと専用プロセッサとの分業など)
解答例(サンプル)
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Q1: 2
- RTOSは割り込み処理やタスク管理に重点を置き、リアルタイム性を保証するため、割り込み処理の遅延を最小化するような仕組みがある。
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Q2: 2
- 動的ライブラリ読込を多用すると、組込み機器ではメモリ不足や断片化が発生しやすい。一般的には不適切。
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Q3: 2
- LoRaWANではADR(Adaptive Data Rate)を活用し、最適な送信出力やデータレートに調整できる機能がある。
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Q4: 2
- 組込み機器のインタフェース選定では、必要とされる通信速度やデータ転送量、実装の複雑度(ピン数やコード量など)を総合的に検討する。
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Q5: スタートアップルーチン(startup code)
- または「ブートストラップコード」と呼ぶ場合もある。
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Q6: ディープスリープ(Deep Sleep)
- マイコンやベンダによって名称が異なる場合もある(Stopモード、Standbyモードなど)。
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Q7: デバイスドライバ開発
- HALを利用することで、特定のマイコンや周辺機能ごとのレジスタ操作を共通化し、ドライバ開発の手間を削減できる。
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Q8:
- イベント駆動型の利点例: 割り込みベースで効率的に処理できるため、リソースを無駄にせずに動作可能
- タスクベースの利点例: 優先度やタスク間の独立性を設計しやすく、機能の追加や分割が比較的容易
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Q9:
- ハードウェア面: 省電力マイコンや低消費電力周辺回路を選択、電源管理ICで各ブロックを個別にON/OFF制御
- ソフトウェア面: 不要時にはスリープモードに移行、タスクスケジューリングの最適化、動作周波数を動的に切り替え
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Q10:
- 例: メインマイコンはリアルタイム制御(割り込み優先設計など)を担当し、別途高性能CPUや専用プロセッサ(DSP/AIアクセラレータ)で大量データ処理を行う。
- 双方が独立したOSやスケジューラを走らせ、必要最低限のデータのみやり取りすることで、リアルタイム性と大量処理能力を両立する。
これらの問題を通じて、組込み技術とIoT技術を結びつけて理解する力を確認できます。PDFの学習範囲と照らし合わせながら、理解度をチェックしてみてください。