1. はじめに
小学校におけるプログラミング教育必修化などの影響を受け、昨今では教育向けマイコンボード等にも脚光が集まりつつある。
中国をはじめとした諸外国からも次々と魅力的なマイコンボードがリリースされているが、国内では技術基準適合証明等のマーク、いわゆる技適マーク (Fig.1) がないためただちには使用できない場合も多い。
技適マークがないマイコンボードを使用する場合、外部に電波漏洩を起こさぬよう電波暗室 (Fig.2) を用いるか、技適帽子 (Fig.3) を頭に装着することで使用者の脳内を電波暗室状態にする必要がある。
しかしながら、電波暗室を有する教育機関は非常に限られており、また技適帽子に関しても、装着者の脳内で電波が遮断されたように感じられるだけではないかと識者の間でも意見が分かれるところであるため1 、教育現場での使用には若干抵抗がある。
Fig.1技適マーク | Fig.2電波暗室 | Fig.3技適帽子 |
そこで今回、無線周波数帯の電磁波を吸収することで周囲を電波暗室状態にする装置およびその中核となるトンネルダイオードを開発し、一定の成果を得たので報告する。
また副次的効果として、無線周波数帯のみならず可視光領域の電磁波も吸収することにより周囲の照度を減ずる効果も得られたためこれも合わせて報告する。
2. 動作原理
2-1 発光ダイオードとトンネルダイオード
ダイオードには電流を一方向のみに流す整流作用のほかに、電磁波を放出する性質をもつものがある。
可視光領域の電磁波を放出するものは一般にLEDとして知られており、p型半導体とn型半導体の接合部付近で電子と正孔が再結合する際、高く不安定なエネルギー準位から元の安定なエネルギー準位に遷移する際のバンドギャップ(禁制帯幅)に相当するエネルギーが光として放出される(Fig.4)。
Fig.4 LEDのしくみ |
逆に、再結合時にエネルギー準位が降下する場合は周囲から電磁波を吸収することにより元の安定なエネルギー準位に遷移する。
今回、この電磁波吸収を効率的に行うために、順バイアス時に大きな負性抵抗領域 (Fig.5) を持つトンネルダイオードを開発した。
Fig.5 トンネルダイオードの負性抵抗領域 |
2-2 ウラン-一酸化硫黄接合トンネルダイオード(U-SOダイオード)
今回開発したトンネルダイオードはpn層にウランおよび一酸化硫黄を用いたトンネルダイオードである(以降U-SOダイオード)。
負性抵抗の勾配および消費エネルギーを増大させ十分なエネルギー準位降下を得るため、スパッタ法を用いてシリコン基板に微量のウランを注入し、さらに電極をガラス管で覆い不安定な気体である一酸化硫黄を封入した。
ウランは放射性物質ではあるが、使用している量はごく微量でありただちに人体に危険はない2。
3. U-SOダイオードを用いた電波暗室効果
3-1 装置起動前後の電波強度変化とホト=ショ効果
下記のFig.6およびFig.7はU-SOダイオードに電流を流す前後で技適無線周波数帯域の電波が著しく減っていることを表す。
この効果はホト=ショ効果として広く既知であるが3 、通常はごく微量な変化であり今回のような大幅な効果はこれまでに知られていなかった。
Fig.6 装置起動前の電波強度 | Fig.7 装置起動後の電波強度 |
3-2 可視光の減少
U-SOダイオードは帯域特性にも優れ、可視光帯域を含む広い帯域で電磁波の減少をもたらす。
Fig.8は広帯域にわたる電磁波の減少がもたらす副次的な効果によりLEDの周囲が暗くなっている様子である。実際には最大でマイナス12[lm]程度の光束減少であり写真では効果がわかりにくいため、コントラストをやや上げてある。
Fig.8 明るさの反転がおきている様子 |
4. まとめ
新たに開発したU-SOダイオードにより電波暗室効果を得ることができた。
また、副次的効果として空間の照度を下げる効果を確認した。
5. 今後の課題
U-SOダイオードに使用したウランは高価である上、ただちに健康上の問題はないものの長期的な利用には向いていない。また一酸化硫黄は気体かつ不安定であるため取り扱いが難しい。今後はこれらを解決する代替物質についても検討していく必要がある。
6. 謝辞
実験およびトンネルダイオード開発にあたり、トンネルダイオードの発明者である江崎玲於奈氏の孫に当たる一粒三百米大学の江崎久理子博士に多大なるご協力をいただいたことに感謝いたします。
また、記事をここまで読んでいただいた皆様にもエイプリルフールのネタにお付き合いいただき重ねて感謝いたします。
7. 参考文献