GNU/Linux上でSony RC-S300を使ってICカードの情報を読み取る（Rust）

Sony RC-S300をヨドバシカメラで購入したので, 家にあるICカード（交通系IC）の情報を読み取って遊んでみます。

環境

• ArchLinux x86_64
  • kernel: 6.12.1-arch1-1
  • DE: GNOME 47.2

パッケージのインストールと有効化

sudo pacman -S pcsclite ccid opensc libusb pcsc-tools

sudo systemctl enbale --now pcscd

PC/SCとは？

PC/SCはPersonal Computer / Smart Cardの略でざっくり説明すると、Microsoft Windows上でスマートカードを扱うためのライブラリ及びAPI実装みたいです。
LinuxではPCSCLiteという形で実装されています。

スキャンしてみる

適当なコンソールで

pcsc_scan

を実行した後、スマートカードをリーダーに近づけるとカードのATRを得ることができます。またIDmも表示されます。

IDmはスマートカードに紐付けされた一意の文字列で、基本的には他のスマートカードと被らないように設定してある...らしいです。

ATRはカードリーダがスマートカードから得られた情報そのもので、どんなカードなのかを簡易的に知ることができます（例えば、Felicaに対応しているのか等）

Rustのコード上で扱う

コードのリポジトリはここ

重要な部分だけ解説していきます。

APDUコマンドを送信してIDmを取得

Application Protocol Data Unit（以下APDU）はICカードを通信するための国際規格です。策定されているAPDUコマンドを用いてカードとの通信を行い、データの読み取りや書き込みを行います。

imp.rs

    // カードからIDmを取得する
    pub fn get_idm(&mut self, card: &pcsc::Card) {
        let idm_cmd = hex!("FF CA 00 00 00"); // どういったカードなのかを知るコマンド
        let mut buf = [0; MAX_BUFFER_SIZE];
        match card.transmit(&idm_cmd, &mut buf) {
            Ok(res_apdu) => {
                let res_len = res_apdu.len();
                let result_code = &res_apdu[res_len - 2..res_len];
                if !(*result_code.get(0).unwrap() == 0x90 && *result_code.get(1).unwrap() == 0x00) {
                    self.idm = Err(pcsc::Error::InvalidAtr); // 適当にエラーを返す(無効な値)
                    println!("> IDmの読み出しに失敗");
                    return;
                } else {
                    self.idm = Ok(Vec::from(&res_apdu[0..8]))
                }
            }
            Err(err) => {
                eprintln!("APDUコマンドの送信（IDm読み取り）に失敗: {}", err);
                self.idm = Err(pcsc::Error::CommError); // 適当にエラーを返す2(通信エラー)
                return;
            }
        }
    }

FF CA 00 00 00という16進数の文字列がAPDUコマンドになります。

ICOCAの残高を取得する

 // 試しにicocaの残高を読み取ってみる
    pub fn icoca_bal(&mut self, card: &pcsc::Card) {
        // ICOCA属性情報のサービスコードは0x008B
        // http://jennychan.web.fc2.com/format/suica.html
        let mut buf = [0; MAX_BUFFER_SIZE];
        let select_file_cmd = hex!("FF A4 00 01 02 8B 00"); // サービスコードはリトルエディアンで指定
        let read_binary_cmd = hex!("FF B0 00 00 00");

        let r = match card.transmit(&select_file_cmd, &mut buf) {
            Ok(responce) => responce,
            Err(err) => {
                eprintln!("APDUコマンドの送信に失敗: {}", err);
                std::process::exit(1);
            }
        };
        println!("select file cmd: {:02X?}", r);

        let r = match card.transmit(&read_binary_cmd, &mut buf) {
            Ok(responce) => responce,
            Err(err) => {
                eprintln!("APDUコマンドの送信に失敗: {}", err);
                std::process::exit(1);
            }
        };

        println!("read binary: {:02X?}", r);

        // 残高表示
        // 10進数へ変換
        let comb = ((r[12] as u16) << 8) | (r[11] as u16);
        println!("💰残高: {} 円", comb);
    }

これもPC/SCのAPDU仕様書（PDF）を参考にコマンドを送信します。

簡単に説明するとFF A4 00 01 02 8B 00で読み取る場所を選択し、FF B0 00 00 00でバイナリデータを取得します。なお、AP選択の際に必要なサービスコードはリトルエディアンで記入します（今回だとICOCAのサービスコードは0x008Bなので8B 00をFF A4...の末尾につける。）

おわりに

ICOCAやSuicaの読み取りであれば、カードの残高だけでなく利用履歴やカードの発行場所なども知ることができるので面白そうです。

参考

ICOCA等のサービスコード