#はじめに
GithubとかにあるLora関連のソースコードで無線部分はEU(欧州)やUS(米国)仕様がほとんどですが見てもチャンネル制御などどうしてそうなっているのか分からないとJP(日本)仕様に移植できません.
EUとJPの両方のRegional Parametersだけでなく、無線規則も理解することが必要と思いました.
AS923仕様のソフトもありますがどうしてそうなっているのか理解できないと気持ち悪い?ので勉強がてらまとめてみました.(読み返してみると「個人の感想」も入ってしまいましたが)
バージョンの違いや読み落とし、理解間違いがあるかもしれません.間違いに気が付かれた方はやさしくそっと教えてください.
また、必要に応じてオリジナルに当たってくださいね.
なお、LoRaWAN™ 1.1 Regional Parameters (*1)にある必須チャンネルで日本で容易に入手できる出力20mWの特定小電力のモジュールを念頭に比較しています.
#各国規則
- EUではETSIが出しているEN300220-1/2 (*2)
- 日本ではARIBのSTD-T108 (*3)
- USでは47 CFR § 15.247 (*4)
(ここでは触れません)
#周波数
##必須チャネル
EU (MHz) |
---|
868.1 |
868.3 |
868.5 |
JP (MHz) |
---|
923.2 (Ch.37) |
923.4 (Ch.38) |
日本の周波数はAS923として各国の規則に従って決めたのだと思いますが、日本ではこの2つのチャネルは物流で使用されているUHF RFIDのリーダ(250mW!)と共用しているし、しかもLPWAの簡易無線局(こちらも250mW)とも共用しています.
後者は山林などで自営局で使われ始めており、知る限りではLoraとは互換性のない独自方式が使われています.
さらにSigfoxは日本では923.2MHz Ch.37を使っています.
別の方も言われています(*5)が日本ではLoRaとしてはCh.39やCh.40より上を使用するのが影響がなくよさげと思います.もしJP923ができるようならCh.39以上を割り当てましょう!
参考までに表にしたものを載せます.赤枠部が必須チャネルです.(2019.12.2追記)
##BeaconとPingチャネル
(2019.12.1追記)
EU (MHz) | JP (MHz) |
---|---|
869.525 | 923.4 (Ch.38) |
EUではClassB Beaconに別の周波数を割当てていますがJPでは必須チャンネルと同じチャネルを割り当てています.
なお、EUのこのチャンネルは10% DutyCycleで500mW(ERP) 出せるチャンネルです.
#電波出力
EU | JP |
---|---|
25mW ERP | 20mW アンテナ電力 |
≒40mW EIRP | =40mW EIRP |
実質同じです.ここは国際協調したものと思われます.
EIRPは等価等方輻射電力の略でWikipediaによれば「ある一定の方向に放射される電波の電力の強さのことを指す。」とあります.(*6)
#アンテナ
EU | JP |
---|---|
規定なし | 基本3dBi以下 |
EUではERP(実効輻射電力)で規定しているのでアンテナ込みの出力になるためアンテナそのものには規定がありません.日本では空中線電力とアンテナの利得の両方で規定していますが空中線電力を減らせばその分アンテナ利得をあげてもよい例外規定があり、実質EIRPでの制限となり同じとなっています.
#チャンネルアクセス規則
ここが一番違っているところで国際協調していませんね.
技術的方法にはDuty Cycle(DC)(送信時間の割合制限)とClear Channel Assessment(CCA) の2つがありますが、EUではどちらかでよく、EU868ではDCを採用していますがJPでは両方実装する必要があります.
EU | JP |
---|---|
どちらかあればよい.EU868ではDuty Cycleを採用 | 両方必須 |
日本ではCCAをなくす方向の見直し議論もあるようです.いつになるのか分かりませんが期待.
#キャリアセンス(CCA)
前述のようにEU規則にはありますがLoraのEU868ではDCのみを使うとされていますので日本では独自に実装する必要があります.(*1 2.2.2 EU863-870 ISM Band channel frequencies)
(EU仕様でも実装しているLoRaソフトはあるかも知れませんが..)
なお、JPではCh.38以下限定ですが5mSというのもあり、その場合は4秒も送信できて、50mS休止すればよくてDCの制限はありません.
パラメタ | EU | JP |
---|---|---|
時間 | 160μS | 128μS |
レベル | -81dBm | -80dBm |
#送信時間制限(Duty Cycle)
どちらも一時間率です.
EU | JP |
---|---|
1% | 10% |
ここは(ここだけ?)日本有利です!さらに最近日本では規定が改定され10%はチャネル毎とし、装置毎では20%までよいことになったみたいです.マルチチャンネルのGatewayには良いですね.
#最後に
Githubとかに上がっているソフトを日本仕様にするのに役に立つといいですが、規格は改定が付きものなので情報が古くなっている場合があります.
(ARIB STD-T108は古いの見てますし..)
#規格のありかなど
-
*1 LoRaWAN™ 1.1 Regional Parameters
https://lora-alliance.org/sites/default/files/2018-04/lorawantm_regional_parameters_v1.1rb_-_final.pdf -
*2 EN300220-1/2
https://www.etsi.org/deliver/etsi_en/300200_300299/30022001/03.01.01_60/en_30022001v030101p.pdf
-
*3 ARIB STD-T108
http://www.arib.or.jp/english/html/overview/doc/5-STD-T108v1_2-E3.pdf
(日本語版は有償、英語版は無償だけど古いし..元は電波法だけど規則やら告示やらで情報がバラバラになってるし...独り言です) -
*4 FCC 47 CFR § 15.247
-https://www.govinfo.gov/content/pkg/CFR-2013-title47-vol1/pdf/CFR-2013-title47-vol1-sec15-247.pdf -
*5 シスコシステムズの坂根昌一さんのスライド
https://www.slideshare.net/tanupoo/lorawan-as923-arib-stdt108 -
*6 ウィキペディア 実効輻射電力
https://ja.wikipedia.org/wiki/実効輻射電力