Brown運動

Brown運動と確率積分

はじめに

第2回目の記事投稿です。今回はBrown運動を定義し、確率積分の導入へと入ります。確率積分とは何者なのか、どのようにしたら計算が可能になるのかを見ていきます。この知識が次のSDEとSIEに繋がっていくので重要なポイントをかいつまんで紹介させていただきます。

Brown運動の定義

Brown運動を定義するためにはまずBorel集合を定義しなければなりません。そしてBorel集合の定義には$\sigma$-フィールドの定義も必要なので順番にまとめます。

フィールドFの定義

次の2つの性質を満たす$\mathbf{F}$をフィールドという。
(1)$\phi$,$\Omega$$\in$$\mathbf{F}$
(2)A$\in$$\mathbf{F}$,B$\in$$\mathbf{F}$ならばA$\cup$B$\in$$\mathbf{F}$ ,A$\cap$B$\in$$\mathbf{F}$ ,A\B$\in$$\mathbf{F}$

続いて$\sigma$-フィールドを定義する。
次の3つの性質を満たす$\mathbf{F}$を$\sigma$-フィールドという。
(1)$\phi$,$\Omega$$\in$$\mathbf{F}$
(2)$\mathbf{A}$$\in$$\mathbf{F}$ならば$\mathbf{A^c}$$\in$$\mathbf{F}$
(3)$\mathbf{A_1}$,$\mathbf{A_2}$,$\mathbf{A_3}$・・・$\mathbf{A_n}$・・・$\in$$\mathbf{F}$ならば$\bigcup_{n=1}^{\infty}$$\mathbf{A_n}$$\in$$\mathbf{F}$、$\bigcap_{n=1}^{\infty}$$\mathbf{A_n}$$\in$$\mathbf{F}$

さらに$\mathbf{A}$を$\Omega$の部分集合の集まりの1つとする。
次の性質を満たす$\mathbf{S}$を$\mathbf{A}$から生成された$\sigma$-フィールド$\mathbf{S}$=$\sigma$($\mathbf{A}$)とかく。
(1)$\mathbf{S}$$\supset$$\mathbf{A}$
(2)$\sigma$($\mathbf{A}$)は$\mathbf{A}$を含む最小の$\sigma$-フィールドである。

以上からBorel集合を次のように定義する
$\Omega=\mathbf{R}$と仮定し、$\mathbf{A}$={[a,b]:-$\infty$$\leq$a$\leq$b$\leq$$\infty$}とする。
この時、$\sigma$($\mathbf{A}$)を$\mathbf{B}$で表し、$\mathbf{R}$のBorel$\sigma$-フィールドという。
そしてB$\in$$\mathbf{B}$の時、Bを$\mathbf{B}$のBorel集合という。

っっっっと、ここまできてやっとBrown運動が定義できるよ。早速見ていこう。

t$\in$[0,$\infty$]に対して$\mathbf{R}$上に値をとる確率過程B(t)が次の性質を持つとき、
B(t)をBrown運動という。

(1)B(0)=0 a.s. (a.s.は、ほとんど確実に確率1でという意味)
(2)B(t)の見本経路は連続a.s.
(3)任意の有限個の時点0<$t_1$<$t_2$<...<$t_n$と$\mathbf{R}$のBorel集合$A_1$,$A_2$...$A_n$に対して
P(B($t_1$)$\in$$A_1$,B($t_2$)$\in$$A_2$...B($t_n$)$\in$$A_n$)
=$\int_{A_1}$$\int_{A_2}$...$\int_{A_n}$p($t_1$,0,$x_1$)p($t_2-t_1$,$x_1$,$x_2$)...p($t_n-t_{n-1}$,$x_{n-1}$,$x_{n}$)$dx_1$$dx_2$...$dx_n$

($\int_{A}$はBorel集合$\mathbf{A}$上での積分を意味し、$p(t,x,y)$=$\frac{1}{\sqrt{2\pi t}}$$e^{- \frac{(x-y)^2}{2t}}$, $x,y$$\in$$\mathbf{R}$)
この$p(t,x,y)$は推移確率密度関数という。

Brown運動が持つ確率過程はGauss過程とマルコフ過程があるが今回は触れない。
(興味があったら調べてみてね!)

伊藤過程

さてさてこっからは確率積分の導入へと入って行く。今回注目するのは伊藤過程における確率積分である。(伊藤過程の他、階段過程による確率積分や適合過程による確率積分もあるがそれについては別の記事で書きます。)

例として連続微分可能な実数値関数$x(t)$, $0\leq t\leq T$を取り上げる。
実数値関数では$x(t)^2$=2$\int_{0}^{t}x(s)x'(s)ds$となる。ところが確率積分のように扱う関数が$x(t)$ではなくBrown運動$B(t)$では実数値関数と同様にはいかない。そこで新しく伊藤過程を導入し、その確率過程のもと確率積分を作る。

次のように表される確率過程$X(t)$が伊藤過程である。
$X(t)=X(0)+ \int_{0}^{t}a(s)ds+ \int_{0}^{t}b(s)dB(t)$ ,$0\leq t\leq T$
($a(t),b(t)は[0,T]× \Omega$上で可測、さらに$\int_{0}^{T}|a(t)|dt<\infty ,\int_{0}^{T}b(t)^2dt<\infty$)
同時に確率微分は$dX(t)=a(t)dt+b(t)dB(t)$で表される。

例えば、$X(t)=B(t)^2$の確率微分は$\int_{0}^{t}B(s)dB(s)=\frac{1}{2}B(T)^2-\frac{1}{2}T$を許すと
$B(t)^2=t+2\int_{0}^{t}B(s)dB(s)=\int_{0}^{t}ds+\int_{0}^{t}B(s)dB(s)$と書ける。

(式ばっかりで難しいけど、大まかな流れは実数値関数に確率積分特有の項を入れた時の積分と微分を定義している)

伊藤の一般公式

最終章として伊藤の一般公式を紹介する。この一般公式を用いれば先ほどの確率微分で表される伊藤過程を変換して新しい伊藤過程を作るときに強力な武器となる。

まずは$X(t),Y(t)$という同じ$Brown運動B(t)$に関する伊藤過程の確率微分の形
$dX(t)=a_X(t)dt+b_X(t)dB(t)$
$dY(t)=a_Y(t)dt+b_Y(t)dB(t)$
という式からスタートする。

2変数関数F($x,y$)のTaylor展開を考えると
$dF(X,Y)\approx (F_x'(X,Y)(dX)+F_y'(X,Y)(dY))$
+$(\frac{1}{2}F_{xx}''(X,Y)(dX)^2+F_{xy}''(X,Y)(dX)(dY)+\frac{1}{2}F_{yy}''(X,Y)(dY)^2)$

ここで伊藤過程に対する2次変分と伊藤の乗積表より
$(dX)^2=dXdX=d[X,X](t)=d[X](t)=b_X^2dt$
$(dY)^2=dYdY=d[Y,Y](t)=d[Y](t)=b_Y^2dt$
$(dX,dY)=d[X,Y](t)=b_xb_ydt$
を使うと
先ほどのTaylor展開から伊藤の一般公式が導かれる。
(*2次変分と伊藤の乗積表についてはまた別記事で書きます...)

$dF(X,Y)\approx (F_x'(X,Y)(dX)+F_y'(X,Y)(dY))$
+$(\frac{1}{2}F_{xx}''(X,Y)b_X^2dt+F_{xy}''(X,Y)b_xb_ydt+\frac{1}{2}F_{yy}''(X,Y) b_Y^2dt)$

終わりに

今回は式の紹介という感じばかりで「???」となった方も多いと思いますが、確率積分を伊藤の修正項というものが入ってもRiemann積分で表現できる形にするための準備段階と思ってください。これは次の記事へと繋がるのでよかったらそちらも見てください。