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SDEとSIEの基礎

Last updated at Posted at 2017-12-15

はじめに

3回目の記事投稿です。今回は確率微分方程式(SDE)と確率積分方程式(SIE)についてです。SDEもSIEも文字どおり微分方程式やRiemann積分の中に確率過程が入った方程式です。確率が入った場合をどのようにして計算できるようにするのか、ざっくりと見ていきましょう。

ODEとSDEの違い

一般的な微分方程式(ODE)といえばx(t)がtについて微分可能な関数でf(t,x)がtとxの関数であるとき区間0$\leq t \leq T$において
$
\frac{dx(t)}{dt}=x'(t)=f(t,x(t)),\
x(0)=x_0\
$
という形で、ここから$dx(t)=f(t,x(t))dt$と変形し、$x'(t)$の連続性から両辺をtで積分して
$
x(t)=x(0)+\int_{0}^{t}f(s,x(s))ds\
$
と表すことができる。

ここまではODEである。SDEはここに「ランダムな揺らぎ」を加えるのである。
前回の記事で定義したBrown運動B(t)は微分可能ではないが形式的に微分して
$
\xi(t)=\frac{dB(t)}{dt}=\dot{B}(t)\
$
ここで$\xi(t)$はWhiteNoiseと呼ばれる揺らぎである。

今、時刻t,位置xにおけるNoiseの強さを$\sigma(t,x)$と表すと0$\leq $t $\leq$ T全体でのNoiseの影響は
$
\int_{0}^{T}\sigma(t,X(t))\xi(t)dt=\int_{0}^{T}\sigma(t,X(t))\dot{B}(t)dt=\int_{0}^{T}\sigma(t,X(t))dB(t)\
$
と表される。

SDEを作ろう

拡散やBrown運動の数学モデルに関する物理現象に利用されるSDEの一般式を作るために水中の粒子の微視的な動きを例に取り上げよう。
速度変化する水中の粒子は色々な方向の粒子と衝突し、一定の衝撃度を引き起こすことによって不規則な動きをするが、「水中の温度」によってこの動きは激しさが変わる。時刻tにおける粒子の初期位置からの一方向における変位をX(t)とする。この時、時刻t、位置xにおける温度の影響を表す尺度を$\sigma(t,x)$とすれば微小な時間区間$[t,t+\delta t]$における衝撃度による変位は$\sigma(t,x)(B(t+\delta t)-B(t))$と表すことができる。

仮に時刻t、位置xにおける速度を$\mu(t,x)$とおけば先ほどの微小な時間の区間における水中の動きによる粒子の変位は$\mu(t,x)\delta t$である。

したがって時刻t、位置xにおける粒子の全変位は
$
X(t+\delta t)-x\approx \mu(t,x)\delta t+\sigma(t,x)(B(t+\delta t)-B(t))・・・(*)
$

SDEでは先ほどの式を次のように置き換える。
$
・\delta t=dt\\
・\delta B=B(t+\delta t)-B(t)=dB(t)\\
・X(t+\delta t)-X(t)=dX(t)\\
$

上記の3式と(*)を対応させると
$
dX(t)=\mu(t,X(t))dt+\sigma(t,X(t))dB(t)...(1)$
$
※\mu(t,X(t)...ドリフト係数(ざっくりいうと拡散過程の中で定義されるベクトル)\\
\sigma(t,X(t))...拡散係数(ざっくりいうと拡散過程の中で定義される行列)\\
$
(1)が確率過程X(t)におけるSDEの式である。

SDEからSIEへ

SDEとSIEの関係を簡潔にまとめます。

確率過程X(t)がSDEの解であるとはすべてのt>0に対して
積分$\int_{0}^{t}\mu(s,X(s))ds$と確率積分$\int_{0}^{t}\sigma(s,X(s))dB(s)$が存在し
かつ
$SIE:X(t)=X(0)+\int_{0}^{t}\mu(s,X(s))ds+\int_{0}^{t}\sigma(s,X(s))dB(s)$
を満たすことである。

SDEを金融の問題へ応用

以下のような問題を考えてみよう。

不確実なリターン率(リスク資産の収益率)で増える銀行預金講座に1円預けた時、時刻tでの価値x(t)を計算しよう。金利をrとすると複利計算からx(t)は$\frac{dx(t)}{x(t)}$=rdtを満たす。もしこのrにwhiteNoiseである$\xi(t)$を加えるとrはr+$\sigma\xi(t)$に変わる。

このとき、リスク資産の現在の価値を表す確率過程$X(t)$は
$\frac{dX(t)}{dt}=(r+\sigma\xi(t))X(t)$
$X(0)>0$
に従うとみなすことができる。これを変形すると
SDE:$dX(t)=rX(t)dt+\sigma\xi(t)X(t)dB(t)$
を得る。

ちなみに伊藤の一般公式に当てはめてあげて出てきた式
$X(t)=e^{(\mu-\frac{1}{2}\sigma^2)t+\sigma B(t)}$
(導出は省きました、一般公式に当てはめるだけ)
この解X(t)は幾何Brown運動と呼ばれ、金融のBlackScholesモデルにおけるリスク資産である。

参考文献

成田 著. 確率解析への誘い -確率微分方程式の基礎と応用-. 共立出版. p.34-37, 148-156.

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