はじめに
聞こえない私はこれまで技術系資格を受験してきた。
その度に情報保障(特別措置)をしてくれたことに感謝しているので、ここにまとめる。
なぜソフト系資格を受験したのか?
エンジニアにとっては資格は意味ないかもしれない。
しかし、聞こえない私には、ソフト系資格を取得することに大きな意味がある。
会社の用意した研修を十二分に受けられないこともあるし、社内で仕事をもらうとき「聞こえないから知識なんかないだろ?」というひどい偏見を下げることもあるからだ。
そういうこともあって、資格コレクターではないが、多くの資格を意識的に取得してきた。
聞こえないエンジニアの情報格差と情報保障
ここでいう情報格差とは、聞こえないエンジニアが感じる壁であり、職場環境によって大きく増減する問題である。
聞こえていれば当たり前のように耳と音声で知識を吸収したり、情報を共有したりすることが、聞こえないエンジニアには困難だ。その結果、Qittaに投稿できるほど優秀な技術を持ち合わせながらも、十分に仕事に活躍できない。
しかし、耳と音声の代りに手話、文字などの手段で情報を提供すれば、聞こえないエンジニアには業界特有の知識を蓄積したり、社内特有の情報を共有したり、周囲の技術力のレベルを確かめたりして、自分自身の技術をたかめながら、チームの一員としてすばらしいものを世に出すことができる。これを情報保障という。
職場環境によって壁が変わるので、情報格差と情報保障は実にさまざまである。
資格取得にむけての情報格差
資格の取得は、勉強、受験、資格証明書の受理という流れが一般的であるが、ここでは、資格受験にしぼる。
私自身聞こえないので、資格受験の会場にある情報を完全にあげることはできないが、以下の通りだろう。
- 会場の案内
- 試験前の注意事項の説明
- 試験始めと止めの合図
- トイレや落とし物の連絡
- 試験監督のはげましとねぎらい
この情報は、資格試験の合否に直接的な関係がないが、聞こえないエンジニアには、多くの時間を犠牲にして資格勉強をしてきた成果を十分以上に発揮するためにも必要なものだ。
試験会場における情報保障
ここでいう情報保障とは、試験会場での情報格差で得にくい情報を十分に提供することである。資格試験主催団体や会場によっては情報保障が違うこともあるが、私自身がこれまでいただいた支援をひとくくりにまとめる。
- "身体上の障害等に係る特別措置"の申請
- 受験申込み書に記入覧あり
- 記入欄がない場合、連絡先のメールアドレスが記載
- 試験会場の案内
- 特に対応なし
- 受付は筆談で対応してくれる場合がある
- 試験会場の設営
- 一般の方と別室になることが多い
- 災害が発生したときの避難支援がしやすいかもしれない
- 同室になる場合は一番前の席になることが多い
- 一般の方と別室になることが多い
- 試験前の注意事項の説明
- レジュメ(1枚にすべての注意事項が記載)
- 試験監督者が口頭に合わせてペンでなぞる
- 予め印刷した紙(1枚に1つの注意事項が記載)
- 補足説明があるとき、手書きで追記することもある
- パワポとプロジェクタで投影(1枚に1つの注意事項を表示)
- プロジェクタの調子が悪くなると緊急に手書きに変わることもある
- レジュメ(1枚にすべての注意事項が記載)
- 試験始めと止めの合図
- 予め印刷した紙
- 「退室可能の時間」「残り10分前」「残り5分前」「記入をやめてください」など細かく準備
- 予め印刷した紙
- トイレや落とし物の連絡
- 「何かあれば、記入して手をあげてください」と手書きした白紙の用意
- 試験監督のはげましとねぎらい
- 手書きで書いてくれることが多い
むすびにかえて
一般のエンジニアや技術者、科学愛好者などには馴染みのない情報格差と情報保障の話をする際に、まずは定義を書かねばならず、長々になってしまった。
Qittaの愛読者に入社試験、社内昇格試験、社内認定資格試験などを担当する社員がおられるかもしれない。聞こえない技術者に試験を実施するときに、本記事を参考にして受験者と相談してくれればありがたいことである。