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高い効果が見込まれるAIエージェントのユースケースの選定方法

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多くの企業では、最適なAIエージェント活用事例の選定に苦慮しており、見栄えを重視したデモに振り回されたり、付加価値の低いプロジェクトに時間を浪費しがちです。先日のウェビナーで、同僚のクリスチャン・カプデヴィル(Christian Capdeville)とともに、組織が成果とROIをもたらすAIエージェントの活用事例を選出するための、シンプルな5ステップフレームワークをご紹介しました。

AIエージェント活用を誤るコスト

「将来の取り組みの信頼性を築くためには、適切な活用事例を選定することが不可欠です。」
— クリスチャン・カプデヴィル、Dataiku コンテンツ&プロダクトマーケティング担当 シニアディレクター

このウェビナーでは、誤った活用事例を選ぶことによる組織的なリスクについても詳述しました。一つの失敗にとどまらず、以下のような広範な悪影響が生じます:

  • 未来のAI施策に向けた信頼を失い、種をまく前に芽を摘んでしまう
  • 効率や価値が小さいプロジェクトに時間、資源を浪費する
  • 競争上の優位性を得られる「6~12カ月の窓」を逃す
  • ステークホルダーの信頼を失い、回復が困難になる

リーダーが求めているのは、単なるテクノロジーのデモではなく、定量可能なKPIと明確な事業価値です。

AIエージェントの活用事例を選定する際には、リーダー層との信頼関係を築くことが極めて重要です。なぜなら、リーダーは単なる技術のデモンストレーションではなく、測定可能なKPIと明確なビジネス価値を求めているからです。AIエージェントの活用事例を戦略的に選定することで、市場における優位性を確保するチャンスが生まれます。とくに、先行企業が意味のある差別化を図れる6~12か月の間があります。活用事例の選定と導入を的確に行う企業は、まだ試行錯誤を続けている競合他社よりも迅速に業務プロセスを変革することが可能です。

AIエージェントは本当に必要か?3つの質問テスト

次の3つの基準を用い、本当にAIエージェントが適切かどうかを判別します。不要な投資を避けるための判断材料です。

1. 複雑性のレベル

  • スキップすべき:シンプルなif‑thenルール、基本的な自動化、従来ソフトで対応可能な問題
  • 適用すべき:複数の入力に基づく推論が必要な場合、新たな状況に適応が求められる場合、複数変数を考慮した判断が必要な場合

2. データソースの多様性

  • スキップすべき:単一かつ構造化されたクリーンデータのみ
  • 適用すべき:構造化/非構造化データの統合、複数データソースの連携が求められる場合

3. プロセスタイプ

  • スキップすべき:固定的で毎回同じプロセスのみ
  • 適用すべき:学習により改善されるプロセス、複雑な分岐ロジックを含むワークフロー、状況に応じた柔軟な対応が必要な場合

5 ステップフレームワークで活用事例を選ぶ

多くの導入実績を基に組織的かつ安全に選定できる方法です。

ステップ①:テクノロジーではなくビジネス課題から

「重要なのは流行のテクノロジーではなく、ビジネス上の課題に根ざした活用です。」
— マリッサ・クリアトーレ、 Dataiku プロダクトマーケティングマネージャー

新しい技術に飛びつくのではなく、以下の3つの観点から真の課題を抽出します:

  1. プロセスの苦痛ポイント:どこで手間や時間がかかっているか、情報取得に手間があるか、重要意思決定が遅れているか
  2. ナレッジワーカーの制約:専門家が定型業務に時間を取られている、複数システムへのアクセスがボトルネックになっている場合
  3. 意思決定支援のギャップ:重要な情報が散在し、統合的な情報支援が不足している場合

ステップ②:3つの価値タイプにマッピング

AIエージェントには提供価値に応じた3タイプがあります:

  1. プロセス自動化型:システム間での多ステップ自動化。まずは人を交えた形で運用し、徐々に完全自動化へ
  2. ワーカー支援型:人の判断を補助し、定型業務をAIに任せることで人はクリティカルな意思判断に集中
  3. インテリジェント業務連鎖型:プロセス全体をAI視点で再設計し、新たなビジネスモデル創出まで達成できる最も変革力の高いタイプ

ステップ③:技術的準備状況の確認

多くの失敗は導入前に基礎が未整備なことから生じます。以下の3点について確認を:

データアクセビリティーは、AIエージェントのユースケースを成功させるための基盤となります。組織は、関連するデータがデジタル化され、アクセス可能であること、チームが必要なシステムへのアクセス権限を持っていること、そして大きな構造変更なしにデータが統合可能であることを確認する必要があります。マリッサがセッション中に強調したように、データアクセスの取得に6か月以上かかるようであれば、そのAIエージェントのユースケースは、最初の導入対象としては適していない可能性があります。

警告サイン: データアクセスの取得に6か月以上かかる場合、そのAIエージェントのユースケースは最初の導入には適していない可能性があります。

プロセス文書化は、AIエージェントのユースケースにおいてとくに重要です。現在の業務プロセスは、明確な成功指標とともに十分に文書化されている必要があります。また、実装をリードし、AIエージェントが正しく機能しているかを検証できる有識者を特定する必要があります。

ガバナンス体制はAIエージェントのユースケースによって大きく異なります。組織は、導入が拡大するにつれて管理と可視性を維持するために、当社のトレースエクスプローラー機能のような組み込み型のガバナンス機能を必要とします。

ステップ④:AIエージェントのユースケースを影響力でランク付け

2×2マトリクスを用い、以下3軸で評価します:

image.png

  • ROIの可能性:削減できる時間、収益やコスト効果、リスクや品質向上の見込み

  • 導入の難易度:データ準備はどうか、カスタマイズ量はどれくらいか、連携のハードルは

  • 利用者の受け入れ:AIに対する抵抗はないか、変化管理の体制は整っているか、経営層に支持があるか

高い価値と導入容易性が両立する「スイートスポット」を優先し、価値大だが難易度も高いものは“第2波案件”として計画します。

ステップ⑤:最初は一つに集中し、速く拡大

「リーダーから『エージェントはどこにあるの?昨日から実装すべきだったのに』と言われることもありますが、まずは一つのケースに集中することが大切です。」
— マリッサ・クリアトーレ、Dataiku プロダクトマーケティングマネージャー

なぜ1つから始めるとうまくいくのか:

  • 最初のプロジェクトから学びを得られる
  • キーステークホルダーとの関係構築が可能
  • 成果を踏まえた経営層の信頼と支援を得やすい
  • 複数案件に分散せず、リソースを最大限に活用できる

成功後は、既存の統合、ガバナンス、信頼を基盤に、より高価値なAI案件へ展開できます。

実際の導入事例(本番稼働中)

ウェビナーでは以下5つの事例を紹介、いずれも実業務で効果を挙げています:

  • チケットサポートエージェント(プロセス自動化):ITサポート業務に跨る自動問い合わせ対応
  • 保守スケジューリングアシスタント(ワーカー支援):製造業で複数エージェント協調による保守計画
  • 動的販売アシスタント(ワーカー支援):小売業での価格や在庫の最適化支援
  • AML調査アシスタント(ワーカー支援):金融サービスのコンプライアンス業務支援
  • 臨床試験インテリジェンスアシスタント(インテリジェント業務連鎖):ライフサイエンス領域でのサイト選定自動化

詳細は別途ご案内しているガイド「5 AIエージェント活用事例で変革を加速」にてご覧いただけます。

技術基盤と成功の鍵

Q&Aでは以下の技術要素が要点として挙げられました:

  • LLMフレキシビリティー:OpenAI、Anthropic、ローカルモデルなど複数モデルに接続可能なアーキテクチャー
  • ガバナンス機能:トレースエクスプローラーによる操作履歴の可視化、規制や監査対応を支える
  • 開発手段の多様化:ビジュアルでもコードでも設計可能。専門家と技術者の協働を支援

成功するためのエキスパートアドバイス

1. 明確なビジネス価値を起点とする
導入コストに見合う、ROI(投資対効果)が測定可能なAIエージェントのユースケースを選定してください。印象的な技術に目を奪われるのではなく、実際の課題に着目することで、真にビジネスニーズに応えるソリューションの実現が可能となります。

2. まずは強固な基盤を構築する

  • 開発を開始する前に、データへのアクセスとその品質を確保。
  • 業務プロセスは明確な成功指標とともに文書化。
  • ガバナンスやモニタリングの仕組みも初期段階から整備。

3. 専門知識を持つ関係者を常に巻き込む
業務プロセスに最も精通した担当者と連携してください。非技術者でも理解できる可視化ツールを活用し、エージェントへの指示や期待される成果に関して彼らの意見を反映させることで、ビジネス要件を満たさない技術偏重のソリューションを回避できます。

4. 透明性を計画的に確保する
エージェントの動作内容を可視化できるツールを導入し、関係者の信頼を得てください。また、規制遵守や社内ガバナンスの観点から、エージェントの判断を説明できるようにし、ビジネス環境の変化に応じて継続的な監視と改善を行う体制を整えることが求められます。

AIエージェントのユースケース、次の一手は?

「今後6〜12か月は、AIエージェントの活用によって真に差別化された価値を創出できる絶好の機会です。」
— クリスチャン・カプデヴィル、 Dataiku コンテンツ&プロダクトマーケティング担当 シニアディレクター

競争優位性を確保するためのタイミングは、永遠には続きません。私たちのセッションで実施したアンケート結果によると、各組織のAIエージェントユースケースへの取り組み状況には差があります。

  • 部門横断的なプロセスを構築し、体系的にユースケースを選定している企業
  • 部門単位や中央チームによる判断に依存している企業
  • 多くの企業が未だにユースケース選定の方法論を模索している段階

重要なのは、「AIエージェントを導入するかどうか」ではなく、「戦略的に選定できるかどうか」です。競争優位性を維持するためには、この点が極めて重要になります。Dataikuは、LLMメッシュや組み込み型ガバナンスといったエンタープライズレベルの導入に対応するツールから、ビジネス部門と技術部門の連携を可能にするビジュアル開発環境まで、体系的なアプローチを実行するために必要なすべてを提供しています。

当社の「5ステップフレームワーク」のような体系的手法に基づいて取り組む組織は、長期的な成功を見据えた基盤を築くことができる一方で、非体系的な手法に依存する組織は、試行錯誤に終始してしまう可能性があります。重要なのは、実績ある方法論を着実に実行することであり、選定プロセスが不十分なまま、個別のユースケースの成功に期待するべきではありません。

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原文:How to Select High-Impact AI Agent Use Cases

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