アナリティクス(AI)とビジネスインテリジェンス(BI)の融合を理解していきましょう。これはかなり前から起こっています。
まず、狩野モデルに基づいた製品開発の視点で見てみましょう。このモデルでは、製品にはさまざまなレベルの機能があるとしています。たとえば、基本機能、競争優位性のある基本機能、様々な問題を解決する機能、お客様のポジティブな反応を引き起こす「エキサイティング」な機能、お客様が自社製品と他社製品のどちらを選ぶかを決定するのにキーとなる重要な機能、などです。
この考え方は、BIで起きている変化にも適用できます。ある期間、ある機能は注目される機能となり、その後、一旦ユーザーの興味関心は下がり、また役立つ機能だと再認識され、そしてある時に基本機能になるのです。
従来のレポートによるBI
BIは今に始まったものではなく、数十年前から存在しています。比較的基本的な方法で、元々システムにあるデータと繰り返し実行機能で、定型帳票を生成してきました。例えば、ビジネスで発生したデータを集計し、年次報告書で活用されてきました。
ビジネスのリーダー層に本当の価値を提供するためには、より多くのレポートがより頻繁に生成される必要があります。しかしこれまで実際には、ボタンをクリックすると、大量のファイルを含むレポートが生成されて、集計担当者がそのデータを扱いにくいスプレッドシートにまとめ、分析を行い、調査結果をフォルダにまとめて、取締役会や関係者にプレゼンテーションを行って、部門のメンバー全体が忙しくなるほど、手作業による反復作業が行われていました。
自動化から、ダッシュボードで自動化されたBIへ
企業はこれまで長い間、繰り返し作業を「自動化」してきました。さらに、ここ5〜10年の間に、データレイクやデータウェアハウスの整備に向けて、サイロ化された独自のシステムやデータを統合する方向に進んでいます。その目的はもちろん、作り込まれたレポートから、より価値のあるインサイトを提供することであり、これはまさに 「ビジネス・インテリジェンス 」の核心をなすものです。
この傾向は徐々に、自動化されたダッシュボードで、ビジネスの概要を把握しようとシフトしていきました。自動化されていなければ、繰り返し作業を手作業で行うことになり、業務効率が低下してしまいます。そのため、ほとんどのデータウェアハウスには、データをまとめるための(自動)抽出・変換・ロード(ETL)機能が搭載されていますが、これは単なるコピー作業である場合もあります。
通常、自動化とBIは密接に関連しています。年に数回しかレポートを作成できない場合でも、本当は毎日もしくは毎週レポートを更新することが求められているはずです。そのBIは自動化しなければ成り立ちません。BIも自動化もビジネスの中核をなすものです。しかし、BIは、すでに起こったことを過去にさかのぼって見るものであり、予測やより高度な分析は、いまだに一部の専門家が手作業で行っていることが多いのが現状です。そこで、AIや機械学習(ML)の出番となるわけです。
自動化されたBIをAIで補い、強化する
現在、データはいわゆるETLジョブで、自動的に統合されて、便利に使いやすい形で提供されるようになってきています。そしてデータチームは、より多くのデータを活用し、より多くのモデルを作成し、これまで不可能だったビジネス上の質問の答えを得ることができるようになってきています。わかりやすく区別するために、これをBI 2.0と呼ぶことにします。さらにこの新しく改良されたBI(現状を明らかにし、チームが下す意思決定を形成するビジネスの中核的機能)は、AIとMLの「未来を見る」機能とともに使えるよう形を変えてきています。たとえば、ネガティブなレポートにも、KPIに関する様々な信頼性の高い予測を付け加えることができるようになります。
過去のデータだけではなく、将来の予測に基づいて行動を起こすためには、ビジネス上の問題を逆方向に考える必要があります。ある収益のしきい値に到達するため、あるKPIに注目したとします。6ヵ月後の収益を予測するより、「収益のしきい値Xを達成するには、どのような行動が必要か?」と考える方がはるかに有益です。この質問に答えるためには、自動化されたワークフローを実装し、BIで個々のデータソースを探索し、AIの出力結果を加えて、目標に到達するための手段を知ることができるようになります。
3つの要素を融合
自動化、BI、AIの融合は、積み木のようなものです。BIがある程度できていないとAIはできません。データアナリストが手作業でデータをコピーするのは、非効率的で貴重な時間を無駄にします。予測などの高度な分析を手動で行う場合も同様です。そこで必要になるのは自動化です。AIは明確なビジネス課題の解決を目的に使われるべきですが、その前提の元、自動化、BI、AIを1つのビジネス機能として有機的に融合させることは極めて重要です。
結局のところ、これら3つの要素が融合していることに意味があります。サイロ化されたツールで分断させず、目的を持ってこれらをまとめることで(データチームがビジネスの方向性を理解し、将来的にどのように発展/進化させるかを検討する)、ビジネスを正しい方向に導くことができるようになります。2022年に向けて、アナリティクスとBIや、データサイエンスとMLの融合が、より加速すると考えています。ツールの分断を減らし、BIやAIでビジネス課題に取り組む人々/チーム間の分断を減らし、チーム間のプロジェクトの見える化やコラボレーションを向上させていきましょう。