生成AI(GenAI)は、取締役会、市役所、地域コミュニティーなど、あらゆる場所で注目の話題となっています。しかしその盛り上がりとは裏腹に、実際に導入を担うリーダーたちにとっては、課題が山積する複雑な現実があります。AI&Usシーズン3(英語)の第2話では、ロサンゼルス市のCIO(最高情報責任者)テッド・ロス氏(Ted Ross)と、FLOAのChief Transformation Officer(最高変革責任者)セバスチャン・ロバート氏(Sébastien Robert)にお話を伺い、責任ある現実的なAIイノベーションのリーダーシップとは何かを探りました。
生成AI時代におけるCIOの進化する役割
アメリカで2番目に大きな都市のテクノロジーを統括するロス氏にとって、CIOの役割は単なるシステム管理ではありません。
「CIOは、テクノロジー全般を担います。つまり、戦略・運用・そして組織のあり方を変える可能性のあるイノベーションまでも含まれるのです。」と彼は語ります。
生成AIは、このCIOの役割を根本的に変えつつあります。現在のCIOは、実装を導く技術力、組織目標と連携する戦略力、そして予期せぬ結果を先読みする先見性をすべて兼ね備えることが求められています。
「私たちは今、デジタル倫理に真剣に向き合い、イノベーションそのものだけでなく、その「意図しない影響」も管理する必要があります。」
ー テッド・ロス氏、ロサンゼルス市, CIO
つまり、最新ツールの導入に目を奪われるのではなく、その長期的な影響について真剣に考える必要があるということです。
理論から実践へ:具体的な変化の事例
両氏とも、組織が実験段階を超えて、生成AIを実際の業務に適用し始めていると話しました。
ロサンゼルス市では、「311」というモバイルアプリに生成AIを活用したプロジェクトが始まっています。住民が落書きや道路の穴などの問題を撮影すると、AIがその内容を自動で分類し、適切な部署に連携されます。多くの場合、落書きは即日または翌日中に消され、道路の穴もすぐに補修されます。
一方、FLOAでは、カスタマーサービスの向上に生成AIを活用しています。
「私たちは、音声AIを活用したカスタマーセンターや顧客対応のプロジェクトなど、いくつか非常に良い取り組みを行っています。」とロバート氏は語ります。目的は人間の対応を置き換えることではなく、より迅速かつスマートに対応できるツールを提供することです。
人間の要素:マインドセットとスキルセット
両氏とも、今後の課題に対して現実的な見方をしています。
生成AIは、組織内のあらゆる人が高度なツールにアクセスできるようにする力を持っています。しかし、それを使いこなすにはスキルと心構えが必要です。
「生成AIは、社内のすべての人が使えるツールになります。だからこそ、全員が正しいスキルとマインドセットを持てるようにしないといけません。」
ー セバスチャン・ロバート氏、FLOA 最高変革責任者
ロス氏は、生成AIを身近な例で説明することで、チームや関係者の理解を深めています。
「私はよく、生成AIを「インターンが1000人いるようなもの」と説明します。彼らは一生懸命働き、多くのことをこなせますが、結果を完全には信頼できません。」と彼は笑います。
この例えが示す通り、生成AIは万能ではなく、監督・検証・そして業務への慎重な統合が必要です。
「技術が“勝手にうまくいく”と思い込むのは危険です。」とロス氏は警鐘を鳴らします。
最後に:AIの「守護者」から「案内人」へ
ロス氏やロバート氏のようなCIOや変革リーダーは、AIを「人のために機能させる」最前線にいます。彼らの経験が示すのは、AIや生成AIを成功させるカギは「流行を追うこと」ではなく、以下の点にあります:
- テクノロジーを現実の課題解決に結びつけること
- 組織全体でスキルや倫理観を育てること
- イノベーションをシンプルかつ透明に保つこと
ロス氏はよると、「今のCIOは大きな責任を背負っています。技術的でもあり、戦略的でもあることが求められます。システムがダウンしたときにも駆けつけ、組織を前進させる存在でもあるのです。」生成AIの登場はこの責任を変えるものではありません。それをさらに大きくするのです。
エピソード全編を視聴しよう
AI&Usのエピソードでは、先進的なリーダーたちが生成AIを概念から実行へと移行させる方法を紹介しています。彼らは実際のプロジェクトを試験的に導入し、デジタル倫理を戦略に組み込み、AIを活用する未来に向けてチームを備えています。
原文:Guardians of AI Innovation: Lessons From FLOA and the City of Los Angeles