はじめに
前回の記事に関連して、DMARCの記事です。
BIMI(Brand Indicators for Message Identification)導入の前提として、筆者がDMARC p=rejectを実現するために実施した手順・流れについて備忘録として残しておく。
背景
筆者はBtoC企業の情シスとして勤務しており、顧客向けにメールを送信するのは日常茶飯事であった。
そんな中、2023年12月頃にGmail送信者ガイドラインというお達しがあり、メールが届かなくなるという可能性が出てしまったことから、至急DMARCの導入を進める必要があった。
■Gmail送信者ガイドライン
https://support.google.com/a/answer/81126?hl=ja
What's DMARC?
送信元ドメインの認証技術であるSPF(Sender Policy Framework ※1)とDKIM(DomainKeys Identified Mail ※2)を組み合わせ、メールの認証と送信元の信頼性を確認する規格。
※1 SPF:IPアドレスを使用し、送信元メールサーバの正当性を確認する規格。
※2 DKIM:メール送信時に電子署名を行い、受信時に検証することで、メールが改ざんされていないか、または不正なドメインから送信されていないかを確認する規格。
DMARC=passとなる条件
前提知識
・Envelope-From(エンベロープ フロム)
簡単に言えば、SMTPサーバで認識するドメイン。
・Header-From(ヘッダー フロム)
簡単に言えば、メール本文に記載されるドメイン。
・SPFはEnvelope-fromのドメインを認証する。
・DKIMは Header-From のドメインを認証する。
DMARC=passとなる条件
・SPF認証でpassかつアライメント(※3)がOK。
・DKIM認証でpassかつアライメントがOK。
※3 アライメント:メールに表示される送信元メールアドレス(Header-From)が、SPFやDKIMで認証したドメインと一致させること。
アライメントがOKということは、"Header-Fromが認証されている"ということ。すなわち、"本文の差出人は認証されている"ということを示す。
なお、SPFでチェックすることをSPFアライメント、DKIMでチェックすることをDKIMアライメントと呼ぶ。
調査を進める上でよく出会ったパターン
・"Envelope-from"と"Header-From"が異なり、SPFのみ登録されているパターン
例:Salesforce。
"Envelope-from"はSalesforceのドメインで、"Header-From"は自社のドメイン。SPFはSalesforceで登録済み。DKIMは登録しておらず。
SPFはpassされるが、SPFアライメントでNGとなり、"DMARC=fail"となる。
では、どのようにDMARCの導入を進めたか
①送信メールドメインと送信元サーバ(SMTPサーバ)の洗い出し
具体的には、rua(集約レポート)の分析で行う。以下のようなDMARCレコードをp=noneで指定し、report@hoge.comにレポートを送信させる。
_dmarc.hoge.com TXT "v=DMARC1; p=none; aspf=r; adkim=r; rua=mailto:report@hoge.com"
送信させたruaレポートは、ツールを利用して分析する。
※筆者は有償のツールを利用したが、無料で利用できる優秀なツールが存在する。(DMARCvisualizer等)
次に洗い出した送信メールドメインと送信元サーバのIPアドレス以外に、以下についても調査した。
■基盤
メールサービスが稼働している基盤を確認する。SaaSの場合、DKIMを登録してくれない場合がある。
■利用目的
対顧客向け(BtoC)メール or ビジネス(BtoB)メールであること(すなわち、受信メーラーがOutlookやGoogle Workspace等でGmailではないこと)を確認する。
Gmailガイドラインによると、送信メール数が5000通を超える場合はSPF・DKIM両方対応する必要がある。
整理するとこんな感じ。
(例)
サービス名 | 送信ドメイン | IPアドレス | 基盤 | 利用目的 |
---|---|---|---|---|
Aサービス | @hoge.com | xxx.xxx.xxx.xxx | オンプレ | BtoBメール |
Bサービス | @ex.hoge.com | yyy.xxx.xxx.xxx | IaaS | BtoCメール |
Cサービス | @hoge.com | zzz.xxx.xxx.xxx | SaaS | BtoCメール |
整理した結果、どのように対応を進めるかを整理する。
・基本的にはSPF&DKIMは設定する。
・しかしながら、一部にはDKIMに対応していないサービスがある。
・その際は、Gmailガイドラインに準拠する必要があるかどうかを判断する。
・必要が無ければ、SPFのみの設定とする。
・準拠させる必要がある場合は、メールサービスの変更を検討する。
幸い筆者の場合はメールサービスの変更という最悪のパターンが発生することはなかった。
対応方針が確定したら、あとはひたすらにSPFとDKIMを登録を進める。
だいたい、DMARC=passが98%くらいでp=noneからp=rejectに変更した。