Ⅰ:マルチベンダー対応のエンジニアを育てる必要性
ITが進化する中で、様々なベンダーや製品が登場し、活用されています。そんな中で、マルチベンダー対応のエンジニアを育てる必要性が増しています。
マルチベンダー対応のエンジニアを育てる必要性を6つにまとめると、以下となります。
-
IT環境の多様化・複雑化
企業のITシステムは、多くのケースで複数のベンダーの製品やサービスを組み合わせて構築されます。そこで特定のメーカーや技術に依存せず、異なるプラットフォーム間で柔軟に対応できるエンジニアが求められます。 -
クラウド・ハイブリッド環境の普及
近年、AWS、Azure、Google Cloudなどのクラウドサービスを組み合わせたハイブリッド環境が主流になりつつあります。各クラウドベンダーの違いを理解し、最適なソリューションを設計・運用できるスキルが不可欠になっています。 -
ベンダーロックイン回避とコスト削減
特定のベンダーに依存すると、技術的な制約が生じる可能性があります。公正取引委員会が2022年2月8日に発表した「官公庁における情報システム調達に関する実態調査報告書」によると、98.9%の自治体が「既存ベンダーと再度契約することとなった」と回答しました。再度契約することとなった理由として、48.3%の自治体は「既存ベンダーしか既存システムの機能の詳細を把握することができなかったため」としています。
また、ベンダーの方針次第でコストが高騰するリスクがあります。例えばある特定のデータベースソフトウェアを採用していた企業が、そのソフトのライセンス価格の高騰により予想外に運営コストがかかってしまった例などがあります。マルチベンダーに対応できるエンジニアがいれば、最適な技術を選定し、コストを抑えつつ柔軟なシステム構築が可能になります。 -
システムトラブル時の対応力向上
異なるベンダーの技術が混在する環境では、トラブルシューティングがより複雑になります。マルチベンダーに対応できるエンジニアがいれば、トラブル発生時に迅速に原因を特定し、適切な対処ができます。 -
DX推進の加速
DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するためには、最新技術を活用したシステム統合が求められます。特定のベンダーに依存せず、最適な技術を組み合わせられるエンジニアがいることで、DXのスピードを加速できます。 -
セキュリティ強化とコンプライアンス対応
異なるベンダーのシステムが混在する環境では、セキュリティリスクも増大します。マルチベンダー対応のエンジニアがいれば、各ベンダーのセキュリティポリシーを理解し、安全なシステム運用が可能になります。
Ⅱ:マルチベンダー対応のエンジニアを育てる方法
では、マルチベンダー対応のエンジニアを育てるにはどうすればよいでしょうか。
一般的には、以下のステップを意識して教育・育成を進めることが重要です。
1.幅広い技術知識を身につけさせる
① マルチクラウド環境の理解
主要なクラウドプラットフォームの基礎知識を習得させる。
② ネットワーク・インフラの基礎
異なるベンダーのネットワーク機器に対応できるスキルを習得させる。
③ OS・仮想化技術の習得
様々なOSや仮想化技術に対応できる技術を学ばせる。
2.実践的な演習をさせる
実機やクラウド環境でのハンズオン実際にローカル環境やクラウド環境での環境構築をさせる。
3.トラブルシューティング能力を鍛える
① 複数ベンダーの技術ドキュメントを読ませる
メーカーごとの技術仕様やサポートドキュメントを理解する習慣をつけさせる。
② トラブルシューティングのシナリオ演習
実際のシステム障害を想定し、ログ解析や障害対応をシミュレーションする。
「このエラーが出たら、どのように原因を特定するか?」という問題を日常的に考えさせる。
4.コミュニケーションスキルを向上させる
マルチベンダー環境では、異なる技術者やサポートチームと協力する場面が多いため、
簡潔で分かりやすいドキュメントや手順書の作成スキルを身につけさせる。また、他部署やベンダーとの交渉・連携力を養う。
5.ベンダー依存しない最新技術を学ばせる
オープンソース技術を積極的に学ばせる。ベンダーニュートラルな知識。技術を習得させる。
6.資格取得のサポートをする
必要に応じた各種ベンダー資格の取得支援に加え、ベンダーニュートラルな資格の取得をサポートすることで、エンジニアのキャリアパスを明確にし、モチベーションを高める。
7.継続的な学習を支援する
社内勉強会を開催し、エンジニア同士で知識を共有する。外部トレーニングやカンファレンスへの参加を推奨する。
8.実プロジェクトに関わらせる
業務を通じて実際に異なるベンダーの製品を組み合わせた環境を構築する経験を持たせる。
Ⅲ:まとめ
・ITが進化する中で、マルチベンダー対応のエンジニアを育てる必要性が増している。
・マルチベンダー対応のエンジニアを育てるには「幅広い技術知識を身につけさせる」「実践的な経験を積ませる」「トラブルシューティング能力を鍛える」「コミュニケーションスキルを向上させる」「ベンダー依存しない最新技術を学ばせる」「資格取得のサポートをする」「継続的な学習を支援する」「実プロジェクトに関わらせる」というステップを意識して教育・育成を進めることが重要である。
■様々な事例を紹介しています。
今回取り上げた「マルチベンダー対応のエンジニア育成」は、CompTIA認定資格を活用することでより効果的に行うことが可能です。
以下のサイトでは、様々な社員育成の取り組みを具体的に紹介しています。
よろしければご覧ください。