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ITリソース最適化で実現するグリーンIT:IBM Turbonomicによるサステナビリティ情報把握の具体的手法

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はじめに

近年、地球環境や社会の持続可能性を目指す「サステナビリティ」という考え方が、企業活動においてますます重要視されています。この大きな潮流の中で、企業が果たすべき社会的責任(CSR)や持続可能な開発目標(SDGs)への貢献は、企業価値を測る上でも不可欠な要素となりつつあります。

IT部門もこの例外ではなく、むしろ積極的に貢献できる領域があります。その一つが、ITリソースの利用効率を高め、環境負荷を低減する「グリーンIT」の推進です。

本記事では、ITリソース最適化ソリューションであるIBM Turbonomic(以下、Turbonomic)を活用し、主にオンプレミス環境における消費電力やCO2排出量といったサステナビリティ情報を具体的に把握し、グリーンITの実現につなげる方法を、実際の画面イメージを交えながら解説いたします。

1. サステナビリティとグリーンITの基本

まず、関連する基本的な用語と考え方を確認しましょう。

  • サステナビリティ (Sustainability): 日本語で「持続可能性」と訳され、自然環境、社会、経済などが将来にわたって現在の価値を損なうことなく継続できる状態を目指す考え方です。
  • SDGs (Sustainable Development Goals): 「持続可能な開発目標」と訳され、2015年に国連で採択された、貧困、不平等、気候変動など、世界が直面する課題を解決するための17の国際目標です。
  • CSR (Corporate Social Responsibility): 企業が倫理的な観点から事業活動を通じて自主的(あるいは義務として)に社会に貢献する責任を指します。

これらの実現に向けたIT分野での具体的な取り組みが「グリーンIT」です。グリーンITには主に以下の2つの側面があります。

  • ITのグリーン化: コンピュータシステム自体の省電力化や発熱量の低減、データセンターのエネルギー効率向上など、IT機器やシステムそのものの環境負荷を低減する取り組みです。脱炭素化への対策を含め、コスト削減と環境対策の両立を目指します。
  • ITによるグリーン化: ITを活用して業務効率を向上させたり、エネルギー制御を高度化したりすることで、社会全体の環境負荷を低減する取り組みです。

ある調査会社のレポートでは、データセンターとパブリッククラウド利用の最適化が、ITによるサステナビリティ実現の大きな機会となると報告されています。

しかし、この取り組みにおいては、「アプリケーション性能の維持・向上」「IT投資コストの最適化」そして「環境への影響低減」という、時に相反する可能性のある3つの要素をバランス良く維持していくことが極めて重要です。

2. IBM Turbonomicによるサステナビリティ情報把握と最適化アプローチ

Turbonomicは、AIを活用してアプリケーションのパフォーマンスを保証しながら、ITリソースを継続的に最適化するソリューションです。この「最適化」が、結果として消費電力の削減やCO2排出量の抑制に繋がり、グリーンITの実現に貢献します。

Turbonomicは以下の特長により、サステナビリティ情報の把握と環境負荷低減を支援します。

  • リアルタイムなデータ収集と可視化: IT環境全体の構成情報、リソース使用状況、消費電力、そしてそれに基づくCO2排出量(※設定により算出)をリアルタイムに収集・分析し、ダッシュボードやレポートで可視化します。
  • アプリケーション中心の最適化: アプリケーションが必要とするリソースをAIが判断し、過不足なく割り当てるための具体的なアクションを推奨・自動実行します。これにより、無駄なリソース消費を削減します。
  • 3つのバランスの考慮: 単にコストや消費電力を削減するだけでなく、アプリケーションのパフォーマンスSLAを維持・向上させることを最優先に考慮した上で、最適なリソース配分を行います。

3. 【画面解説】IBM Turbonomicでオンプレミス環境のサステナビリティ情報を把握する

ここでは、Turbonomicの実際の画面を用いて、オンプレミス環境におけるサステナビリティ関連情報をどのように把握できるかをご紹介します。

3.1. ダッシュボードでの全体像の把握と最適化の起点

まず、Turbonomicのダッシュボードでオンプレミス環境全体の稼働状況と、保留中の最適化アクションを確認します。ここから、環境負荷が高い可能性のある箇所や、最適化による改善効果が期待できる領域を特定する起点となります。

図1:unnamed-5.jpg

図1は、Turbonomicのオンプレミス環境におけるトップ画面の一例です。「保留中のアクション」では、スケーリング、配置、開始/停止、削除といった具体的な最適化アクションの数が表示され、プロアクティブな改善機会を示唆します。右側には「ヘッドルームで上位のホスト・クラスタ」が表示され、リソース逼迫のリスクがある箇所を特定できます。

3.2. 仮想マシンレベルでの詳細なエネルギー消費と炭素フットプリント分析

次に、個々の仮想マシンレベルで、より詳細なサステナビリティ情報を掘り下げて見ていきましょう。

図2:
unnamed-6.jpg

図2は、特定のホスト・クラスタ(例:vc01dc01/vc01dc01-Production)を選択した際に表示される画面です。左側には、仮想マシン、ホスト、ストレージ、データセンター、ネットワークといった関連リソースのトポロジーマップが表示され、リソース間の依存関係を視覚的に理解できます。右側には、当該クラスタに所属する仮想マシンの一覧が表示されます。

図3:unnamed-7.jpg

図3は、特定の仮想マシン(例:vc01-centos-RQ02)を選択した際に表示される、過去30日間の「Energy(エネルギー消費量、Wh)」および「炭素フットプリント(CO2排出量、g)」の時系列グラフです。最小・平均・最大使用量が色分けで表示され、リソース消費の傾向やピークを把握できます。

図4:unnamed-8.jpg

図4は、Turbonomicが推奨する最適化アクション(この例では仮想マシンの別ホストへの移動)を実行した場合の、影響を受けるホスト(移動元:現在ホスト、移動先:DESTINATIONホスト)における各種リソース、エネルギー消費量(ENERGY)、炭素フットプリントの変化を示しています。アクション実行前後の具体的な数値変化(削減効果や増加影響)を事前に確認できます。

3.3. レポート機能による環境全体の傾向把握とドリルダウン分析

Turbonomicのレポート機能を利用することで、IT環境全体のエネルギー消費やCO2排出量の傾向を把握し、問題のある箇所を特定するためのドリルダウン分析が可能です。

図5:unnamed-8.jpg

図5は、全仮想マシン(VMs)の「Total Energy Consumption (Wh)」と「Total Carbon Footprint CO2e (t)」の時系列グラフを示しています。また、右側にはCO2排出量が多いアプリケーションのランキングが表示され、環境負荷の高いアプリケーションを特定するのに役立ちます。

図6:unnamed-10.jpg

図6は、図5のレポートから特定のアプリケーション(この例では「AIOps - GROUP」)にドリルダウンし、そのアプリケーションに関連するリソースのエネルギー消費量とCO2排出量のトレンドを詳細に分析している画面です。このように、要因を絞り込んで深掘りすることが可能です。

4. Turbonomic活用によるグリーンITの実現と事例

これまで見てきたように、IBM TurbonomicはITリソースの使用状況をリアルタイムに可視化し、AIに基づいて具体的な最適化アクションを導き出します。これらの最適化アクション(例:仮想マシンの統合、不要リソースの停止、適切なサイジングなど)を実行することで、結果としてデータセンター全体の消費電力が削減され、CO2排出量の抑制に繋がり、グリーンITの目標達成に貢献します。

重要なのは、Turbonomicがパフォーマンスを犠牲にすることなく、むしろアプリケーションの要求性能を保証しながらこれらの最適化を行う点です。これにより、「ITのグリーン化」と「アプリケーション性能の維持・向上」、そして「コスト削減」という3つの目標をバランス良く追求することが可能になります。

実際に、このTurbonomicの機能を活用してCO2排出量とIT運用コストの大幅な削減を実現した事例も報告されています(例:米国を基盤とする世界的大手銀行)。また、IBM自身も自社環境でTurbonomicを積極的に活用し、CO2排出量削減に取り組んでいます。

まとめ

ITリソースの最適化は、コスト削減という直接的なメリットだけでなく、企業のサステナビリティ目標達成に貢献する重要な手段です。特に、エネルギー消費の大きいデータセンターやクラウド環境においては、その効果は無視できません。

IBM Turbonomicのようなインテリジェントな最適化ソリューションを活用することで、これまで感覚的あるいは手作業に頼りがちだったリソース管理をデータドリブンかつ自動化されたアプローチに変革し、消費電力やCO2排出量といった具体的なサステナビリティ指標を継続的に改善していくことが可能になります。

本記事でご紹介した画面や機能は一例ですが、IT部門がサステナビリティへの貢献を具体的に進める上でのヒントとなれば幸いです。まずは自社のIT環境におけるエネルギー消費の現状を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。

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