0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

人工知能は音楽をどう学ぶ?〜リズム生成の仕組み〜

Last updated at Posted at 2025-09-23

🎹 人工知能は音楽をどう学ぶ?〜リズム生成の仕組み〜

こんにちは!今回は、人工知能(AI)がどのように音楽、特に「リズム」を理解し、創り出すのかについて、Qiitaで一緒に探求していきましょう。音楽とプログラミングに興味がある方なら、きっと楽しめるはずです。

🤖 AIはリズムをどう認識する?

AIが音楽を扱うとき、まず「音」をデータとして認識する必要があります。
人間の耳が音を波として捉えるように、AIは音をデジタルデータ、つまり数値の羅列に変換します。具体的には、音の強さや高さ、長さといった要素を数値化して表現します。

リズムに関して言えば、AIは音符の長さ(四分音符、八分音符など)、拍子の構造(4/4拍子、3/4拍子など)、そして音と音の間の休符を、数値のパターンとして認識します。

例えば、単純なキックとスネアのドラムパターンを考えてみましょう。

  • キック(バスドラム): 1拍目、3拍目
  • スネア: 2拍目、4拍目

このパターンは、AIにとっては単なる「音の発生タイミング」という数値データになります。

[1, 0, 1, 0]  # キックのパターン
[0, 1, 0, 1]  # スネアのパターン

「1」は音があることを、「0」は音がないことを示しています。このように、AIは音楽を数列や行列として捉え、学習するのです。


🧠 AIがリズムを生成する仕組み

AIがリズムを学習したら、いよいよ新しいリズムを生成する段階です。これは、主に機械学習モデルを使って行われます。

ここでは、最もシンプルで理解しやすい**マルコフ連鎖(Markov chain)**というモデルを例に見てみましょう。マルコフ連鎖は、「現在の状態が次の状態に影響を与える」という確率的なモデルです。

マルコフ連鎖でリズムを生成する

  1. 学習: まず、AIに既存のリズムパターンをたくさん入力します。AIは「この音が鳴った後、次の音はこれ」という遷移確率を学習します。
    • 例:「キックが鳴った後、次にスネアが鳴る確率は高い」
    • 例:「ハイハットが連続する確率は非常に高い」
  2. 生成: 次に、AIは学習した確率に基づいて、ランダムに次の音を選んでいきます。
    • 最初の音をランダムに決める。
    • その音から、学習した確率に従って次の音を選び続ける。

このプロセスを繰り返すことで、既存のデータに似ているけれど、全く新しいリズムパターンが生成されます。

より複雑なリズム生成には、**リカレントニューラルネットワーク(RNN)**や、**生成モデル(GAN)**といった高度な技術が使われます。これらは、より複雑な時間的なパターンや、音楽の長期的な構造を学習できます。


💻 Pythonで学ぶ!シンプルなリズム生成スクリプト

それでは、実際にPythonを使って、シンプルなリズムを生成してみましょう。今回は、MIDIファイルを生成できるmidoライブラリと、簡単なマルコフ連鎖のロジックを使って、ランダムなドラムパターンを作ります。

準備

まず、必要なライブラリをインストールします。

pip install mido
pip install python-rtmidi

スクリプト

以下のコードをgenerate_drum.pyとして保存してください。

import mido
import random

# MIDIファイルを作成
outfile = mido.MidiFile()
track = mido.MidiTrack()
outfile.tracks.append(track)

# ドラム音源のノートナンバー
# キック:36, スネア:38, ハイハット:42
drum_notes = [36, 38, 42]

# シンプルなマルコフ連鎖の遷移確率
# 「前の音」から「次の音」への確率
transitions = {
    36: {38: 0.7, 42: 0.3},  # キックの後の確率:スネア70%, ハイハット30%
    38: {36: 0.5, 42: 0.5},  # スネアの後の確率:キック50%, ハイハット50%
    42: {42: 0.8, 38: 0.2}   # ハイハットの後の確率:ハイハット80%, スネア20%
}

# 最初の音をランダムに選択
current_note = random.choice(drum_notes)

# リズムを生成するループ(16小節分)
for _ in range(16 * 4):  # 16小節 x 4拍
    # 音を鳴らす(Note Onメッセージ)
    track.append(mido.Message('note_on', note=current_note, velocity=100, time=0))
    # 音を止める(Note Offメッセージ)
    track.append(mido.Message('note_off', note=current_note, velocity=0, time=120)) # time: 拍の長さ(ここでは八分音符相当)

    # 次の音を確率的に決定
    next_candidates = transitions.get(current_note, {})
    if next_candidates:
        next_note = random.choices(list(next_candidates.keys()), weights=list(next_candidates.values()))[0]
        current_note = next_note

# MIDIファイルを保存
outfile.save('generated_drum_pattern.mid')

print("ドラムパターンを生成しました:generated_drum_pattern.mid")

スクリプトの解説

  • mido.MidiFile(): MIDIファイルを扱うためのオブジェクトを作成します。
  • drum_notes: ドラムの各パーツに対応するMIDIのノートナンバーです。
  • transitions: マルコフ連鎖の核となる部分です。{現在の音: {次の音: 確率, ...}}という形で、次の音への遷移確率を定義しています。
  • random.choices(): 定義した確率に基づいて、次の音をランダムに選択します。
  • track.append(mido.Message(...)): MIDIの「音を鳴らす(note_on)」、「音を止める(note_off)」というメッセージをトラックに追加していきます。timeは次のメッセージまでの時間(テンポに相当)です。

このスクリプトを実行すると、generated_drum_pattern.midというファイルが生成されます。これをDAWソフト(GarageBand, Ableton Liveなど)や、MIDIプレイヤーで再生してみてください。設定した確率に基づいた、ランダムなドラムパターンが聴けるはずです。

最後に

今回はAIがリズムをどう認識し、どう生成するかについて、そしてPythonを使ったシンプルな実装例を紹介しました。AIと音楽の組み合わせは、まだまだ無限の可能性を秘めています。

この記事をきっかけに、皆さんもAIと音楽の面白さに触れてもらえたら嬉しいです。次のステップとして、もっと複雑なモデル(RNNなど)を試してみたり、メロディ生成に挑戦してみるのも面白いかもしれませんね!

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?