これはデフエンジニアの会が企画しているアドベントカレンダーです。
デフエンジニアの会とは?
私も今年から入ったばっかりで何もできていないのですが、
デフエンジニアの会というのはTwitterの「まみねこさん」という方が作ったグループです。
そのグループは主に耳が聴こえない方、聴こえにくい方を中心としたエンジニアで成り立っており、ジャンルは様々です。
ですが、共通していることがあり、それは「聴覚に障害がある」ということです。
(※聞こえる方も何人かいるらしいです)
デフエンジニアの会アカウントはこちら→https://twitter.com/deafengineers
そして私も聴覚に障害があります。
とはいっても、生まれつきではなく、「中途失聴」というやつです。
中途失聴とは?
中途失聴、今、Silentというドラマが話題になっていますが、あの主役である「想」という男性も中途失聴と言います。
つまり、中途失聴=最初は聴こえていても、病気や事故などで途中から耳が聴こえなくなったことを言います。
そして私の場合、原因は交通事故でした。
昔、学生のころ、バイクに乗っていてツーリングしていた時に車にはねられ頭を打ち、その衝撃で気づいたら耳が聴こえなくなっていた・・ということです。
他にも大音量の音楽をヘッドフォンで聴いていてそれが原因で・・という方や、おたふくかぜが原因で・・という方などいろいろな方がいます。
Silentでは遺伝性ではないか?というお話になっているようですが、中途失聴の方は皆が皆遺伝性ではないので、そこは覚えておいてもらいたいなと思っています。
聴こえる世界から聴こえない世界へ
そして一夜にして聴こえる世界から聴こえない世界へ強制的に移り住むことになったわけですが、それで色々と思ったことがあります。
それまではずっと聴こえる世界にいて、その世界がずっと当たり前だと信じて疑っていませんでした。
もちろん、聴こえない方々の存在や手話も全く目に入っていませんでした。
「障害者がいる」というのは分かっていましたが、それでも
「自分とは全く別世界の人間、それこそ、宇宙のどこかの星にいるような感覚」
・・そんな感じでいました。
それが聴こえなくなって初めて、そういう方々の存在を目の当たりにすることになったのです。
そして、思ったよりも多くいるということ、なぜ今まで気づかなかったのだろうと驚きました。
世の中の無関心に一番驚いた
そして一番驚いたのは、世の中の無関心です。
私もいわゆる聴者として生まれて生きていた頃は聴こえない方々の存在なんて全く頭になかったので、この無関心はそりゃそうだろうな、と思いつつ、でも今まで気づかなかったことに申し訳ないという気持ちがありました。
聴こえなくなって一番困ったこと
そして一番困ったのは、人とのコミュニケーションと情報保障です。
(※情報保障・・聴覚に障害があると耳で情報を得ることができないため、字幕や手話通訳が必要になる。これを情報保障と言います)
テレビを観ても字幕がないから分からないものもある、
何か災害があったら今まではラジオをすぐにつけていたのですが、それができなくなり、どこから情報を得たらいいのか分からなくなった等・・・。
また、人との会話ができなくなりました。
言ってることが分からないし、でも、こちらは話せるのでこちらが話すと向こうは私が聴こえないということを忘れて話してしまうなど・・。
また、聴こえてないのに、「聴こえないふりをしている!」と怒られたりなどもありました。こちらはそんなつもりないのに。
そして、世の中、こんなに差別的な人が多かったのかということと、同時に、自分自身も知らず知らずのうちに障害者に対してこういう態度をとっていたのではないかと思い恐ろしくなりました。
エンジニアを目指した理由
これは聴こえていた頃から漠然ともっていた夢ですが、「世の中の何かに役立つ仕事がしたい」と思っていました。
私の父も某企業で設計エンジニアをしており、また家でも仕事をしていてお客さんが時々家に来て父に色々と仕事をお願いしたり、といった姿を見て育ったので、「こういうふうに人と人との間をつなぐ仕事がしたいな」と昔から思っていたのもあります。
聴こえなくてもエンジニアになれるのか
しかし、聴こえなくてもエンジニアになれるのか?不安でした。
コミュニケーションがとれるのか?という不安が真っ先にありました。
しかし、数年前、学校の先生から「むしろIT業界のほうが進んでいて、チャットなどのコミュニケーションが当たり前になっているからやりやすいかもしれない」と教えてもらい、それもそうかとエンジニアになる決心をしました。
デフエンジニアの会との出会い
しかし、エンジニアとして働くうえで何よりも困ったことがあります。
それは
「障がいがある、それだけで見下してきたり能力を低く見てきたりする人たちの存在」
です。
これは私もかつて聴者として生きてきて、ひょっとしたらどこかで知らず知らずのうちに見下していたかもしれないと思ってなかなかきつく感じます。
そんな時に、Twitterでデフエンジニアの会を知り、代表のまみねこさんという方にすぐ連絡をしました。
すると暖かく迎え入れてくれ、そして50人ほどの聴こえない・聴こえにくいエンジニアと出会うことができました。
彼らは実に様々です。聴こえなくなった過程もきっと色々です。
私のように途中からの人もいれば、生まれつきの人もいます。
そして私は 「安心」 を得ることができました。
YYProbeの中村さん・株式会社方角の方山さんとの出会い
そして、そのデフエンジニアの会が企画した「YYProbe音声認識」を開発した中村さんや「エキマトペ」デザインを担当した方山さんからお話をお伺いする機会がありました。
その様々なお話を聞いて、聴者でありながら世の中を良い方向に変えようと頑張っている方々もいるのだ、と感動しました。
その一方で、私もせっかくエンジニアになったからには、こんなふうに聴こえない方々や聴こえにくい方々のためになる何かを作りたい!と強く思いました。
今は主にサーバーサイドやAWSの仕事をしているので、今後具体的に何をしていくかはまだ分かりませんが、やはり聴こえないならではの「音声認識」には興味があります。
また、デフエンジニアの会グループでもどなたかが話していましたが、「手話認識」もあったらいいな、と思っています。
手話認識は今Googleや立命館大学など様々な所が色々とやっているようですが、
そういうことにも関われたらいいな、と思っています。
そして今後は私がエンジニアとして働いていく過程の中で色々な人と出会い、その中で、「聴こえる聴こえないに関係なくだれでも能力があるのだ」 ということを皆さんに気づいてもらいたい、そう思っています。
まとめ
なんだか大きな夢を語ってしまいましたが、もちろんビッグマウスで終わらないよう、聴覚障害を持つエンジニアならではのことはどんどんしていきたいです!
そして、世の中の無関心がなくなって、だれもが生きやすい世界になることを願っています。
私自身もかつて聴こえていた者として強く思います。
以上