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802.11ah(WiFi HaLow)がやってきた。これは想像以上に手ごわいゾ!

Last updated at Posted at 2023-03-16

■導入

2016年12月に802.11ah WiFi HaLow(ヘイローと読みます)の標準化が完了しましたが、昨年11月にとうとう国内でも使える機器が販売されました。早速、アクセスポイント(以後、AP)とステーション(以後、STA)2台を手に入れて動作確認を開始しました。

使用したAP:silex AP-100AH

使用したSTA:silex BR-100AH(実際には純粋なステーションではなく、Ethernetとのブリッジ機器)

実際使ってみるとなかなか手ごわいことがわかってきたので、今回から何回かに分けて、組込プロトコル屋の目線からレポートしたいと思います。

■そもそも

802.11ah(WiFi HaLow)の何が画期的か?というと、これまで長距離を飛ばすことが出来る無線はLoRa、WiSunなどたくさんあったのですが、すべて「独自規格」でした。それが、所謂TCP/IPパケットをそのまま電波に乗せる事が出来るようになったのが新しいです。従来規格では間にゲートウェイを置いて、独自通信-TCP/IPパケットを変換していましたが、802.11ahではプロトコルを変換しなくても、末端までIPパケットで届けて、IPパケットで返送できるという、IoT環境において画期的な規格となっているわけです。
なお、920MHz帯通信でIPv6通信を実現する規格として、以前から6LowPAN(シックスローパンと読みます)という規格が普及しています。しかし、これはパケット長が128byteと短いIEEE802.15.4上でなんとかIPv6を通すためヘッダ圧縮や分割・結合を実施しており、いわば6LowPANという独自規格上でIPv6パケット情報を送受信する仕組みです。

920MHzという低い周波数なので、遠く(約1km!)まで飛ぶし、回析(電波の回り込み)も期待できるし、省電力のハードウェアが期待できるし、、とIoT環境にはいい事づくめの無線LAN(あえてそう言おう!)です。

■気になる速度は?

でも気になる点がありますよね。そう、速度です。 最大3Mbps(国内)と言われていますが、これはWiFi6(?)とかで、何百Gbpsとか言われているのと同様にリンクスピードであり、転送速度ではありません。では、実際にどのような速度が出るのか? 安定して出るのか? だと思いますが、これについては今後検証していきたいと思います。

■落とし穴!それも大きな落とし穴!

920MHzを使った802.11ahの短所は速度だけでは?っと思われるかもしれませんが、そこには残念な大きな落とし穴があることに気づきます。
 「最大送信時間」
という運用ルールです。

802.11ah推進協議会による「IEEE 802.11ah紹介資料」

のP.7に「現行のアクティブシステムに適用される920MHz帯チャネルのルール(送信時間率(Duty比)等)に従い運用」とあります。そして、情報通信審議会が総務省に提出した「920MHz 帯小電力無線システムの広帯域化に係る技術的条件」一部答申

のP.8の表2-1を見てください。1パケットの送信時間が400msの環境の場合は1時間あたりの送信時間の総和が360秒となっています。

え、1時間のうち360秒って、1/10の時間しか通信できないの?という疑問がわいてきます。

■ということでまずは実験

以下のような環境で実験しました。

kankyokosei.png

まず片方のPCから他方のPCにUDPパケットを連続送信してみました。受信側PCでのパケット受信数のグラフは以下の通りです。
ST-AP_duty60_UDP.png

やっぱりパケットが受信できない(802.11ahで送信されない)断絶期間がありましたね。

では、この断絶がある状態でまともにTCPで通信できるのでしょうか?通常、TCPは送信したシーケンス番号に対するACKが時間内に受け取れなければ再送します。この再送時間は輻輳を回避するため回数が増えるにつれ長くなります。初期待ち時間と最大回数は実装によりますが、実験で使用した環境では以下のような設定です。

送信→0.5秒待ち→再送(1)→1秒待ち→再送(2)→2秒待ち→再送(3)→...→再送(5)→16秒待ち→再送(6)→20秒待ち→再送(7) ...

これと802.11ahの断絶時間がぶつかると、6秒間通信して54秒間は送信リトライをしている、と想像できます。実際、通信グラフはこのようになりました。
ST-AP_duty60_TCP.png

なんとかTCP接続は保持できているようですが、上記のような再送を繰り返しているのでしょう。

■今後

このような特性を示した802.11ahですが、さてさて、組込プロトコル屋としては、せっかくの省電力、長距離、そしてIPパケットがダイレクトに扱える無線なので、この特性に合わせてプロトコルをいじりながら効率を高められないか?っという事で、実験を開始したいと思います。続きは第2弾で! いいね、フォロー登録よろしくお願いします。

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