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ファインチューニングの計算資源コストとRAGの台頭:HBMからNANDへのシフトを見据えて

Last updated at Posted at 2025-02-18

ファインチューニングの計算資源コストとRAGの台頭 HBMからNANDへのシフトを見据えて

近年、LLM(大規模言語モデル)の活用が急速に進む中、各種アプローチが検討されています。特に、ファインチューニングRAG(Retrieval Augmented Generation)という2つの技術は、開発現場でしばしば議論の対象となっています。この記事では、ファインチューニングに必要な計算資源のコストについて詳細に解説するとともに、RAGが優位であると結論づけた場合、今後HBM(High Bandwidth Memory)からNANDフラッシュメモリへの需要シフトが促進される可能性について考察します。

1. はじめに

LLMの普及に伴い、特定領域に特化した知識をモデルに反映させる手法が求められるようになりました。従来は、ファインチューニングによってモデル内部に知識を組み込み、即時応答を可能にするアプローチが主流でした。しかし、ファインチューニングは莫大な計算資源膨大な時間・コストを必要とするため、個人開発や中小規模のプロジェクトではハードルが高い現実があります。

一方、RAG(Retrieval Augmented Generationは、外部の知識ベースから必要な情報を動的に抽出してLLMに与える手法であり、コスト面でのメリットが注目されています。本記事では、これらの技術背景を深堀りし、今後のハードウェア需要の変化にも視点を広げて解説します。

2. ファインチューニングの計算資源コストの詳細

2.1 ファインチューニングの基本プロセス

ファインチューニングは、既存の大規模モデルに対して特定のタスクや知識を学習させる手法です。基本的な流れは以下の通りです。

  1. データの準備
    • 特定領域の知識(例:Word10枚分の資料)を整形し、学習データセットとして用意する。
  2. モデルの学習
    • 大規模モデルに対して、準備したデータを使って追加学習を実施する。
  3. 評価と調整
    • ファインチューニング後のモデルのパフォーマンスを評価し、必要に応じて再調整を行う。

2.2 計算資源の必要性とその負荷

ファインチューニングの各フェーズで要求される計算資源には以下のような特徴があります。

  • GPU/TPUの使用
    ファインチューニングには、膨大なパラメータの更新が必要となるため、高性能なGPUやTPUが不可欠です。特に、最新のGPUは**HBM(High Bandwidth Memory)**を搭載しており、モデルのパラメータや中間データの高速な読み書きが可能です。しかし、HBMは高価であり、個人や小規模プロジェクトでは導入が難しい場合が多いです。

  • メモリ帯域幅の制約
    大規模モデルの学習では、メモリ帯域幅がボトルネックとなることがあります。HBMは高帯域幅を提供しますが、その分価格も高く、コストパフォーマンスが問われる要素となります。

  • エネルギー消費と冷却コスト
    長時間の学習プロセスは大量の電力消費を伴い、さらに冷却装置や運用コストも発生します。これらの運用コストは、特にクラウドサービス利用時に顕著になります。

  • 時間と開発リソース
    データの準備、モデルの学習、評価、そしてハイパーパラメータの調整など、ファインチューニングは手間と時間がかかるプロセスであり、人的リソースも必要とします。

これらの要因から、ファインチューニングは「計算資源のコストがかかる」という評価を受けています。

3. RAG(Retrieval Augmented Generation)の優位性

3.1 RAGの基本概念

RAGは、外部の知識ベースから情報をリアルタイムに取得し、その情報を基に生成モデルが回答を作成する手法です。具体的には:

  1. 知識ベースの構築
    • 対象となる知識を文書やチャンクに分割し、各部分のエンベッディングを生成します。
  2. ベクトル検索
    • ユーザーの質問に対して類似度検索を行い、関連性の高い情報を抽出します。
  3. プロンプト作成と回答生成
    • 抽出した情報をプロンプトに組み込み、LLMに回答生成を依頼する。

3.2 RAGのメリットとコスト面での優位性

  • 計算資源の節約
    ファインチューニングに比べ、RAGは学習済みモデルをそのまま利用し、外部で必要な情報を検索して追加するため、膨大な計算資源や高価なGPUが不要です。

  • 柔軟な知識更新
    知識ベースの更新が容易であり、新しい情報を追加する際に再学習の必要がありません。これにより、運用コストと時間の削減が期待できます。

  • HBM依存の軽減
    高速な計算資源が要求されるファインチューニングとは異なり、RAGは高速な検索アルゴリズム(例:FAISS)を利用し、主にストレージに依存します。このストレージは一般的にNANDフラッシュメモリで賄われることが多く、コスト面で有利です。

【おすすめ技術:KIOXIAのAISAQ】
RAGの実装は、ストレージとしての性能やコスト効率が重要な要素です。そこで注目したいのが、KIOXIAのAISAQです。AISAQは、AI最適化型ストレージソリューションで、以下に特徴をまとめます。:

  • DRAM不要の設計:従来のFAISSなどは、高速性のために全てのインデックスデータをDRAM上に保持するのに対し、AiSAQはPQ(Product Quantization)で圧縮したベクトルをSSD上に保持することで、DRAM使用量をほぼ一定(例:billion-scaleでも約10MB程度)に抑えることができてます。
  • 高速なインデックス切替:SSD上に格納することで、複数の巨大データセット間のインデックス切替をミリ秒オーダーで実現。RAG(Retrieval Augmented Generation)など、動的な知識更新が必要なシステムに適しています。
  • コスト効率:つまり、DRAMの高コストを回避して、大規模なベクトルデータベースを低コストで運用可能になります。
    以上の理由から、AISAQはRAGシステムの核となるストレージソリューションとして強く推奨されます。特に、コストや運用効率を重視する個人開発や中小規模プロジェクトにとって、非常に魅力的な選択肢になっていくと考えらます。

【実践例:私が開発したチャットアプリの紹介】
私自身が開発したチャットアプリでは、RAGの仕組みを活用してユーザーの質問に対し、外部知識ベースから関連情報を高速に抽出し、より精度の高い回答を提供してます。FAISSなどのオープンソースライブラリを組み合わせて、リアルタイムに情報を検索・取得する仕組みを作ったので近々ソースコードと解説記事を作ろうと思います。

4. HBMからNANDへの需要シフト――技術革新がもたらすハードウェア市場の変化

4.1 HBMとNANDの役割と違い

  • HBM(High Bandwidth Memory)

    • 高帯域幅と高速アクセスを実現するため、ファインチューニングなどの計算集約的なタスクに最適です。
    • ただし、高価であり、システム全体のコストを押し上げる要因となります。
  • NANDフラッシュメモリ

    • 主にストレージ用途で利用されるメモリであり、コスト効率が高い
    • RAGのように、外部知識の検索と保管に利用する場合、高速なアクセスはそれほど必要なく、大量のデータを安価に蓄積できるというメリットがあります。

4.2 RAGの普及がもたらす市場への影響

ファインチューニングが計算資源とコスト面で大きな負担となる中、RAGの採用が進むことで以下のような市場変動が予想されます。

  • GPU要求の緩和
    ファインチューニングで求められる高性能GPUやその搭載HBMの需要が相対的に低下し、開発現場ではよりコストパフォーマンスに優れた環境が選好される可能性があります。

  • NANDフラッシュメモリの需要増加
    RAGでは知識ベースとして大量の情報をNAND上に保管し、高速検索アルゴリズムで必要なデータを抽出します。このため、NANDフラッシュメモリの需要が増加し、コスト効率の高いストレージソリューションが市場で注目されるでしょう。

  • システム全体のコスト低減
    ファインチューニングの代替としてRAGが普及することで、エネルギー消費や運用コストも含めた全体的なコスト低減が期待され、より多くの個人開発者や中小企業がLLM技術に参入しやすくなります。

4.3 技術とハードウェアの融合による未来

RAGの優位性が広く認識されると、ハードウェアメーカーはコストパフォーマンスを重視したNAND技術の開発や最適化に注力する可能性があります。これにより、AI開発の敷居がさらに下がり、技術革新と市場の活性化が同時に進む好循環が生まれると考えられます。

5. 結論

ファインチューニングは、特定の知識をモデルに組み込む強力な手法ですが、その反面、高価な計算資源やHBMのような高性能メモリに大きく依存するため、運用コストや技術的ハードルが高いという問題があります。一方、RAGは既存の学習済みモデルを活用し、外部の知識ベースを動的に検索・利用することで、これらのコストを大幅に低減できます。

その結果、RAGの採用が進むことで、従来のファインチューニングで必要とされるHBM依存の高性能環境から、よりコスト効率の高いNANDフラッシュメモリを中心としたシステム構成へのシフトが促進されると予想されます。この流れは、今後のAI技術の普及と市場の拡大に寄与するだけでなく、開発者にとってもより柔軟で低コストなアプローチを提供するものとなるでしょう。

6. まとめ

  • ファインチューニングは高性能GPUとHBMに依存し、計算資源や運用コストが大きな課題となる。
  • RAGは外部知識ベースを動的に活用するため、コスト効率が高く、柔軟な運用が可能。
  • RAGの普及は、高価なHBMから、より安価で大量のデータ保管が可能なNANDフラッシュメモリへの需要シフトを促す可能性がある。
  • これにより、AI技術の普及と市場の活性化、さらには個人開発者や中小企業の参入が促進される未来が期待される。

本記事が、ファインチューニングとRAGの違い、そしてそれに伴うハードウェア市場の変革について理解を深める一助となれば幸いです。今後も最新の技術動向に注目し、さらなる情報発信を続けていきます!


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