概要
Python 3.6以降に導入された f文字列（formatted string literals） は、
可読性とパフォーマンスの両立を実現する構文的進化である。
% 演算子や str.format() に代わる新世代の文字列フォーマットとして、
どのようなメリット・内部構造・ベストプラクティスがあるのかを整理する。
1. 基本構文
name = "Alice"
age = 30
print(f"{name} is {age} years old.")
# 出力: Alice is 30 years old.
-
f"..."の中に{}で式を埋め込む - 任意の式が書ける（関数呼び出しも可）
print(f"{name.upper()} - {age + 1}")
2. 他のフォーマット方法との比較
# 旧形式（%演算子）
"%s is %d years old." % (name, age)
# formatメソッド
"{} is {} years old.".format(name, age)
# f文字列
f"{name} is {age} years old."
✅ 可読性：f文字列が最も直感的
✅ 型の自動変換：int, float, boolもそのまま埋め込める
3. パフォーマンス比較（簡易ベンチマーク）
import timeit
name = "Alice"
age = 30
print(timeit.timeit(lambda: f"{name} is {age}", number=1000000)) # 最速
print(timeit.timeit(lambda: "{} is {}".format(name, age), number=1000000))
print(timeit.timeit(lambda: "%s is %s" % (name, age), number=1000000))
⏱ 結果例（環境による差あり）
| 方式 | 実行時間（短いほど高速） |
|---|---|
| f文字列 | ✅ 最速 |
| str.format() | 中程度 |
| %演算子 | 遅め |
4. フォーマット指定（浮動小数点など）
price = 1234.56789
print(f"Price: {price:.2f}") # → Price: 1234.57
-
.2f→ 小数点以下2桁表示 - その他も
{value:>10}（右寄せ）,{value:0>5}（ゼロパディング）などが使用可能
5. デバッグ用途：=
Python 3.8以降、f文字列に = を使うと**「変数名＝値」の出力**が可能：
user = "bob"
print(f"{user=}") # 出力: user='bob'
→ ロギングやデバッグの効率が劇的に上がる
6. 注意点とベストプラクティス
❌ 多数の変数をネストした状態で書くと可読性が下がる
print(f"Result: {get_user(id).get('name', 'N/A').title()}")
→ ✅ 事前に変数化した方が安全・可読性向上
❌ セキュリティに注意（evalに近い側面）
danger = "{__import__('os').system('rm -rf /')}"
→ f"" では実行されないが、eval(f"...") のような使い方は絶対に避ける
結語
f文字列は、Pythonにおける文字列整形の最適解として設計された構文である。
- 速度・可読性・拡張性の三拍子が揃い
- デバッグ用途やログ出力にも応用可能
- 既存の
%やformat()からの移行も容易
Pythonicとは、“意図が読み取れる構文”であり、
f文字列はその設計哲学を最も明快に体現する記法のひとつである。