1
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

SPARKと証明責任:証明義務とエビデンスの思想

Posted at

"設計の信頼性は、主張ではなく証明によってのみ獲得される。"

ソフトウェアにおける「正しさ」は、しばしば開発者の感覚や慣例に依存している。
しかし、航空宇宙・防衛・医療のような領域では、「なんとなく動く」ことは許されない

SPARKはこの世界において、“正しい”を証明できる設計を言語構造として提供する。
ここでは、SPARKが実現する「証明責任」とは何か、その背後にある思想を解き明かす。


証明責任:動くコードではなく、正しさを保証するコード

SPARKでは、関数や手続きに対して「この仕様を満たす」ことを宣言的に明記する。

function Compute_Average (X, Y : Integer) return Integer
  with
    Pre  => X >= 0 and Y >= 0,
    Post => Compute_Average'Result >= X and Compute_Average'Result <= Y;

このような記述は、単なるコメントや意図ではない。
**証明責任(proof obligation)**として、GNATproveによって数学的に検証される。


人間の責任から、機械の証明義務へ

従来、設計者は「これは正しいはずです」と主張する側だった。
SPARKの世界では、その主張が**「証明されなければ受け入れられない」構造**になっている。

  • 設計者は仕様を明記する
  • コンパイラが構文を確認する
  • GNATproveがその通りかを論理的に証明する

ここにおいて、主張と根拠が一体化する


エビデンスベースの開発:証明はドキュメントを超える

SPARKでは、コードがそのまま**検証可能な証拠(エビデンス)**となる。
別紙の文書やテスト結果ではなく、構文そのものが設計意図を語る

この「自己証明可能なコード」は、認証・審査・監査の現場で強力な信頼を生む。


GNATproveによる義務の生成と検証

設計された仕様に対して、GNATproveは以下のような**証明義務(Proof Obligations)**を自動生成する:

  • 事前条件が満たされるか
  • 事後条件が常に真であるか
  • 範囲外アクセスやオーバーフローが発生しないか

これにより、設計の論理的不備がコンパイル段階で発見される


結語:「主張」ではなく「証明」の上に設計を築く

設計の信頼性とは、個人の技能でも、テストの網羅率でもない。
それは、「正しいと主張する構造」と「それを証明する機構」が一体となったときに初めて成立する。

SPARKは、ソフトウェアを数学的証明の対象とする唯一の舞台である。

"正しさを証明できないコードは、偶然動いているにすぎない。"

1
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
1
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?