概要
Pythonのコードレビューで頻出する指摘の一つが、
isと==の誤用によるバグの温床。
本稿では、この2つの演算子が何を比較しているのか、なぜ結果が異なるのか、いつどちらを使うべきかを構造的に解説する。
1. 結論：isと==の違いとは
| 演算子 | 比較対象 | 具体的意味 |
|---|---|---|
== |
値の等価性 | 中身（値）が等しいか |
is |
オブジェクトの同一性 | メモリ上の同じ実体かを比較する |
2. 例で見る差異
a = [1, 2, 3]
b = [1, 2, 3]
print(a == b) # → True（値が等しい）
print(a is b) # → False（別のリストインスタンス）
c = None
print(c == None) # → True
print(c is None) # → True（この場合、どちらも動くが…）
☠️ 危険な書き方
if x == None: # 間違いではないが推奨されない
✅ 推奨される書き方
if x is None: # Pythonicかつ厳密な比較
3. is が必要になるシーン
✅ シングルトンの比較
if x is None:
if y is True:
if flag is NotImplemented:
→ None/True/False/NotImplementedなどの特殊なオブジェクトは is で比較するべき。
4. == が適切なシーン
- リスト、辞書、カスタムクラスなどの中身を比較したいとき
- クラスで
__eq__()をオーバーライドしている場合
class Point:
def __init__(self, x, y):
self.x, self.y = x, y
def __eq__(self, other):
return self.x == other.x and self.y == other.y
p1 = Point(1, 2)
p2 = Point(1, 2)
print(p1 == p2) # → True
print(p1 is p2) # → False
5. 実務でのバグパターン例
def check_flag(value):
if value is 0:
print("Zero")
→ is を使って int を比較 → バグの原因
✅ 修正すべき書き方
if value == 0:
よくある誤解と対策
❌ is の方が速いから常に使うべき？
→ ✅ パフォーマンスより意味の正しさが重要。is は使う場面が限定される。
❌ Noneも==でいいのでは？
→ ✅ 動作は同じでも、is None の方が明確に意図が伝わる設計
結語
Pythonにおける is と == の違いは、
“同じか”ではなく、“同じものか”と“同じ中身か”という次元の違いである。
-
is= オブジェクトのIDレベルでの同一性 -
=== 定義された等価性（値や内容）
構造の明快さと意図の明示性こそが、設計としてのPythonicである。