概要
非同期を扱う上で、JavaScriptには2つの根本的なアプローチがある。
それが 「イベント駆動(Event-driven)」 と 「ポーリング(Polling)」 である。
両者は単なる実装手法の違いではない。
それは**“どこで変化を検知するか”**というリアクティブアーキテクチャの構造的な差異を意味する。
目的・頻度・性能要件・データ性質に応じて、設計を誤れば「過剰な監視 or 取りこぼし」のどちらかに偏る。
本稿では、両者の違いとメリット・デメリット、使い分けの判断軸を構造的に解説する。
1. イベント駆動(Event-driven)とは
document.addEventListener('click', handler);
ws.onmessage = handleMessage;
observer.observe(target);
- ✅ 対象側で変化が発生したときに“通知”される構造
- ✅ 変化が発生しなければ無駄な処理が走らない
2. ポーリング(Polling)とは
setInterval(async () => {
const data = await fetch('/api/status');
update(data);
}, 5000);
- ✅ 一定周期で状態をチェックし、自分で差分を検出する構造
- ❌ 「変化がないのにリクエストが発生」 → リソース消費が増大
3. 使用目的による選定戦略
用途 | 推奨方式 |
---|---|
ユーザー操作(クリック、入力) | イベント駆動 |
ファイル読み込み完了 | イベント駆動 |
他サービスからの状態取得 | ポーリング |
WebSocketやPush通知がある場合 | イベント駆動 |
APIがpull型のみ提供 | ポーリング |
4. ハイブリッド設計のパターン
let lastState = null;
setInterval(async () => {
const state = await fetchState();
if (state !== lastState) {
onStateChange(state);
lastState = state;
}
}, 10000);
- ✅ ポーリングでも 変化時だけ反応すればリソース削減可能
- ✅ 初回だけポーリング → WebSocketに切り替えのような戦略も有効
5. パフォーマンス設計視点
【イベント駆動】
- メリット: 無駄な処理なし / 瞬時に反応
- デメリット: 通知が飛ばないと何もできない(Pushが必須)
【ポーリング】
- メリット: 外部サービスが受動的でも制御可能
- デメリット: 頻度が高すぎると重い / 遅延 or 過検出
設計判断フロー
① データの発生源は「Push型(能動的)」か「Pull型(受動的)」か?
② 状態の変化頻度は高いか?(高頻度ならPushの方が効率的)
③ タイムラグ許容度は?(ポーリングは最短でも遅延が発生)
④ 外部APIの仕様上、イベント通知が可能か?
⑤ ユーザー体験として「即時反応」が必須か?
よくあるミスと対策
❌ 状態変化がまれなのに高頻度でポーリングしている
→ ✅ 適切な周期設計 + 差分検知 + 一時停止制御で最適化
❌ Push通知を信用しすぎて取りこぼし発生
→ ✅ 定期ポーリングで冗長チェックするフォールバック構成
❌ イベントリスナを登録しっぱなしでリーク
→ ✅ removeEventListener / disconnect / unsubscribe の設計を組み込む
結語
イベント駆動 vs ポーリングとは、単なる「手法の違い」ではない。
それは**“変化をどこで捉えるか、誰が検知を担うか、リアクティブ設計をどう構築するか”**という戦略の選定である。
- Pushが可能ならイベント駆動が優秀
- 受動的APIや状態監視にはポーリングが不可欠
- 双方の特性を理解した上で、必要に応じたハイブリッド設計を構築する
JavaScriptにおけるイベント vs ポーリングとは、
“変化の発見と即応性の制御を通じて、UI・UXの一貫性を支える非同期制御の構造戦略”である。