概要
Composite（コンポジット）パターンは、
個々のオブジェクト（葉）と複合オブジェクト（枝）を同一のインターフェースで扱えるように構造化する設計パターンである。
ディレクトリ構造やUIツリー、組織階層などのツリー状データを、統一的・再帰的に操作するための強力なアプローチを提供する。
1. なぜCompositeが必要か？
❌ ツリー構造を持つデータに対し、個別にif分岐して処理すると保守性が低下
if isinstance(node, Folder):
for child in node.children:
...
elif isinstance(node, File):
...
→ 個々の型に応じて処理を分ける必要があり、拡張が困難
✅ File も Folder も同じ Component インターフェースで扱えるようにする
for component in root.get_children():
component.show()
→ 構造を問わず、共通インターフェースでツリー全体を統一的に処理可能
2. 基本構造
✅ Component（共通インターフェース）
class FileSystemComponent:
def show(self, indent=0):
raise NotImplementedError
✅ Leaf（葉ノード：ファイル）
class File(FileSystemComponent):
def __init__(self, name):
self.name = name
def show(self, indent=0):
print(" " * indent + f"File: {self.name}")
✅ Composite（複合ノード：フォルダ）
class Folder(FileSystemComponent):
def __init__(self, name):
self.name = name
self.children = []
def add(self, component: FileSystemComponent):
self.children.append(component)
def show(self, indent=0):
print(" " * indent + f"Folder: {self.name}")
for child in self.children:
child.show(indent + 1)
✅ 使用例
root = Folder("root")
docs = Folder("docs")
images = Folder("images")
root.add(docs)
root.add(images)
docs.add(File("README.md"))
docs.add(File("CONTRIBUTE.md"))
images.add(File("logo.png"))
root.show()
出力:
Folder: root
Folder: docs
File: README.md
File: CONTRIBUTE.md
Folder: images
File: logo.png
3. Python的応用：辞書・JSON構造もComposite的に処理可能
def show_dict(obj, indent=0):
if isinstance(obj, dict):
for k, v in obj.items():
print(" " * indent + str(k))
show_dict(v, indent + 1)
elif isinstance(obj, list):
for item in obj:
show_dict(item, indent + 1)
else:
print(" " * indent + str(obj))
→ 辞書・リスト・プリミティブの階層構造もCompositeで一元処理できる
4. 実務ユースケース
✅ ファイルシステムや構成ツリーの表示・操作
→ 階層的構造を持つデータの一括表示・探索処理
✅ GUIのレイアウトツリー（ウィジェット・コンテナ）
→ 親コンポーネントも子と同じように描画・処理できる
✅ 組織図、マネージャ・従業員の階層構造
→ 上司も部下も「人間」として同じインターフェースで扱う
✅ ドキュメント構造（セクション・見出し・段落）
→ 構造文書の整形・レンダリングに再帰的構造が有効
5. よくある誤用と対策
❌ Composite側が巨大化してすべての操作を抱えてしまう
→ ✅ LeafとCompositeに明確な責務分離を設ける
❌ 子の管理（add/remove）がLeaf側にも必要だと勘違いする
→ ✅ add()やremove()はComposite専用メソッドとして設計
❌ 構造が深くなりすぎてパフォーマンスが低下
→ ✅ キャッシュや幅優先処理を活用して再帰の負荷を軽減
結語
Compositeパターンとは、“ひとつのモノと多くのモノを同一の方法で扱うための階層的知性”である。
- 単体と複合体を統一的に操作でき、ツリー構造に対する処理がシンプルかつ拡張可能に
- 再帰的構造の表現を簡潔にし、責任の階層を視覚化できる設計
- Pythonではクラスや再帰構造により、柔らかく強い構造を実現可能
Pythonicとは、“構造を持つものは、構造をそのまま操作できること”。
Compositeパターンはその再帰の知性を、あらゆる階層構造の操作性へと昇華する技法である。