Pythonで実装するDecoratorパターン：振る舞いの動的付加と再利用可能な拡張

概要

Decorator（デコレータ）パターンは、
元のオブジェクトの構造を変えずに、動的に新しい振る舞いを付加する設計パターンである。

Pythonではこのパターンが文法としてサポートされており、関数・クラス・メソッドの柔軟な拡張に使われる。

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1. なぜDecoratorが必要か？

❌ 振る舞いを追加するたびにサブクラスを量産

class LoggingComponent(Component): ...
class CachingComponent(Component): ...
class AuthLoggingComponent(Component): ...

→ 組み合わせ爆発が起こりやすく、拡張が非効率

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✅ 振る舞いをラップして段階的に拡張可能に

decorated = AuthDecorator(LoggingDecorator(component))
decorated.operation()

→ 必要な機能だけを積層し、再利用性と柔軟性を両立

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2. クラスベースの基本構造

✅ Component インターフェース

class Component:
    def operation(self):
        raise NotImplementedError

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✅ ConcreteComponent（元の処理）

class Text(Component):
    def operation(self):
        return "Hello"

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✅ Decorator 基底クラス

class Decorator(Component):
    def __init__(self, component: Component):
        self._component = component

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✅ 複数のDecorator実装

class BoldDecorator(Decorator):
    def operation(self):
        return f"<b>{self._component.operation()}</b>"

class ItalicDecorator(Decorator):
    def operation(self):
        return f"<i>{self._component.operation()}</i>"

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✅ 使用例

text = Text()
decorated = ItalicDecorator(BoldDecorator(text))
print(decorated.operation())

出力:

<i><b>Hello</b></i>

→ 見た目の機能をデコレーションとして積層できる

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3. Python的応用：関数デコレータによる振る舞い付加

def log(func):
    def wrapper(*args, **kwargs):
        print(f"[LOG] calling {func.__name__}")
        return func(*args, **kwargs)
    return wrapper

@log
def greet(name):
    print(f"Hello, {name}!")

greet("world")

出力:

[LOG] calling greet  
Hello, world!

→ 関数に動的な振る舞いを加えるPythonの典型

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4. 実務ユースケース

✅ ログ出力・タイミング計測・キャッシュなどの関数拡張

→ デコレータで共通処理を再利用可能に

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✅ 認証・権限チェックをAPI関数に付加

→ @require_login, @admin_only などで条件付き動作を明示的に設計

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✅ UIコンポーネントやHTMLテンプレートの動的スタイル適用

→ 構造は変えずに視覚・振る舞いを柔軟に追加

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✅ テスト対象にモック/スタブ/トレースを挿入

→ @patch などで一時的な機能差し替えが可能

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5. よくある誤用と対策

❌ デコレータがネストされすぎて挙動が不透明

→ ✅ ログやコメントで装飾順を可視化

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❌ ラップ後の関数名やdocstringが消失

→ ✅ functools.wraps(func) を忘れずに使う

from functools import wraps

def log(func):
    @wraps(func)
    def wrapper(*args, **kwargs):
        ...
    return wrapper

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❌ デコレータがグローバル状態に依存してしまう

→ ✅ クロージャ内に状態を閉じ込め、純粋関数性を意識する

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結語

Decoratorパターンとは、“構造は保ちつつ、振る舞いだけを優雅に重ねていく技法”である。

• 新しい機能を動的に追加可能で、オープン/クローズド原則に忠実
• サブクラス化ではなく構造化された積層設計で拡張可能
• Pythonでは構文としてサポートされ、OOP・関数型どちらにも適用可能

Pythonicとは、“変化を柔らかく包み込み、積み上げること”。
Decoratorパターンはその拡張性を、静かな重ね合わせの中に秘めた技法である。