"秩序なき並列は混沌でしかない。"
現代のソフトウェアは、並行性を前提として設計される。
だが多くの言語における並行処理は、**制御構造の“後付け”**であり、整合性や同期において設計者の責任が重くのしかかる。
Adaは異なる。並行性そのものが言語仕様の中心に位置づけられている。
並列ではなく、調和を設計する
Adaは task
と rendezvous
という2つの中核構文によって、並行するプロセス間の調和を明示的に表現する。
task type Logger is
entry Log_Message(M : String);
end Logger;
このような entry
宣言により、他のタスクからこのタスクへ**安全に制御を移譲する「約束の接点」**が生まれる。
Rendezvous:同期とは契約である
Rendezvousとは、タスク間の通信を手続き呼び出しのように設計する構造である。
非同期の中に同期の約束を設けることで、状態の不整合を構文レベルで防ぐ。
task body Logger is
begin
loop
accept Log_Message(M : String) do
Put_Line("LOG: " & M);
end Log_Message;
end loop;
end Logger;
呼び出し側は以下のように書く:
L : Logger;
...
L.Log_Message("System started");
この設計により、同期点を持つ非同期処理が明確に記述され、スレッド間の暗黙的バグを消し去る。
並行設計が初めて「構文」になる瞬間
多くの言語では、並行処理はライブラリで行われるが、Adaでは言語構文そのものに取り込まれている。
-
task
はスレッド -
entry
は同期インターフェース -
accept
は待ち合わせと処理
これらが統一された構文で記述されることで、抽象度と制御の一貫性が保証される。
安全性とは、予測可能性である
リアルタイムシステムや制御系において、非決定性は致命的なバグの温床となる。
Adaはタスクの挙動を構文と仕様で縛ることで、非決定性を最小化する。
結語:動きの中にある秩序を
並行処理は混乱ではない。
適切な構文と契約の中に設計された並行性は、全体として一つの秩序を形作る。
Adaのタスクモデルは、「複数が動くこと」ではなく、**「複数が協調すること」**を目的としている。
"非同期の時代における設計とは、分裂ではなく調和を築くことだ。"