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統計学のおける母関数総まとめ

Last updated at Posted at 2020-12-22

はじめに

本記事は確率分布において, 平均値, 分散の導出などに用いられる母関数についてのまとめを行った記事です.

モーメント母関数

整数値をとる確率変数 $X$ の確率関数を $p(x)$ とし, $s$ を任意の実数とするとき, $X$ の確率母関数(モーメント母関数)を以下の式で定義する.

G \left(s \right) = E[s^X] = \sum_{x = 0}^{\infty} s^x p(x)

このモーメント母関数をパラメータ $s$ で1階微分すると,

G' \left(s \right) = E[Xs^{X-1}] = \sum_{x = 1}^{\infty} x s^{x-1} p(x)

となるので, $G' \left(s \right)$ に $s=1$を代入すると,

E[X] = G' \left(1 \right)

となり, モーメント母関数から期待値が求められる. 同様にして, モーメント母関数をパラメータ $s$ で2階微分すると,

G'' \left(s \right) = E[X(X-1)s^{X-2}] = \sum_{x = 2}^{\infty} x(x-1) s^{x-2} p(x)

となるため, $G'' \left(s \right)$ に $s=1$を代入すると,

E[X(X-1)] = G'' \left(1 \right)

が求められる. 以上から, モーメント母関数から期待値, 分散を求める方法をまとめると, 以下のようになる.

E[X] = G' \left(1 \right) \\
V[X] = G'' \left(1 \right) + G' \left(1 \right) + G' \left(1 \right)^2

積率母関数

先に述べたモーメント母関数において, $s = e^{\theta}$ を代入すると,

m \left(\theta \right) = E[e^{\theta x}] = G \left(e^{\theta} \right)

が得られる. この式を積率母関数と定義する.

積率母関数をパラメータ $\theta$ で1階微分すると,

m' \left(\theta \right) = E[x e^{\theta x}] 

積率母関数をパラメータ $\theta$ で2階微分すると,

m'' \left(\theta \right) = E[x^2 e^{\theta x}] 

であるので, $\theta = 0$ を代入した結果と合わせて考えると, 期待値, 分散は以下のようになる.

E[X] = m' \left(0 \right) \\
V[X] = m'' \left(0 \right) - m' \left(0 \right)^2

特性関数

モーメント母関数, 積率母関数ともに, 広義積分あるいは無限級数の収束性を仮定しているため, それらの仮定を満たさないような場合にこれらの母関数を用いることができない. そこで, 虚数 $i$ を変数に組み込むことで, 広義積分あるいは無限級数の収束性を仮定せずに期待値, 分散を求めることができる母関数である特性関数を定義する.

モーメント母関数において, $s = e^{i t}$ を代入すると, 以下のような式が得られる. これを特性関数という.

\phi \left(t \right) = m \left(i t \right) = E[e^{i t x}]

ここでもモーメント母関数と積率母関数と同様にパラメータに対して微分を行い, 期待値, 分散を導出したいが, 特性関数はパラメータが複素数となっているため, 実数関数において用いていた微分法を用いることができない. そこで, 複素微分を行う.

定義式より,

\phi \left(t \right) = E[e^{i t x}] = E[\cos tx + i \sin tx] = E[\cos tx] + i E[\sin tx]

であるから, パラメータ $t$ で1階微分すると,

\phi' \left(t \right) = E[i x e^{i t x}]

となるので, $t = 0$ を代入すると,

E[X] = \frac{\phi' \left( 0 \right)}{i}

が得られる. 分散は

V[X] = - \phi'' \left( 0 \right) - ( \phi' \left( 0 \right) )^2

として与えられる.

母関数の性質

母関数の性質としては, 確率分布と一対一に対応していることである. これにより, 母関数上で確率分布と一致した場合, 確率変数はその確率分布に従うことがわかる. また, 独立な変数の和が母関数の積に対応している.

おわりに

本記事は統計学において出てくる母関数についてのまとめを行いました. 数理的な部分で気になった方は以下の参考図書の「現代数理統計学の基礎」をみてみると面白いのではないかと思います.

参考資料

日本統計学会公式認定 統計検定準1級対応 統計学実践ワークブック
[現代数理統計学の基礎] (https://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320111660)
複素関数論の基礎

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