はじめに
業務システムに関わると、通信、ジョブ管理、非同期処理、インフラの用語や仕組みを自然と耳にするようになります。
でも、こんな疑問を抱いたことはありませんか?
- 「ノードとPodって何が違うの?」
- 「AkamaiとBIG-IPとWebサーバ、どう繋がってるの?」
- 「Kafkaって非同期処理?同期とはどう違うの?」
- 「JP1って何?昔のバッチと何が違うの?」
この記事では、それらを図解・例・用語解説を交えながら、初学者向けに整理します。
1. Kubernetesとは?
Kubernetes(K8s)は、コンテナ化されたアプリケーションを自動でデプロイ・スケーリング・管理するためのプラットフォームです。
コンテナは、アプリケーションとそれに必要な環境(ライブラリなど)を一つにまとめた「軽量な実行単位」です。
Dockerで作ったアプリを「いつ・どこに・どの数」動かすかを自動で制御してくれます。
用語と関係性
用語 | 意味 |
---|---|
クラスタ | 複数のノード(=マシン)を束ねて、一つのまとまりとして扱う仕組みのことです。 Kubernetesはそのクラスタ上で、コンテナを効率よく動かしてくれます。 |
ノード(Node) | クラスタを構成する1台の物理 or 仮想マシン |
Pod | アプリケーションの最小実行単位(1つ以上のコンテナを含む) |
Kubernetesの自動化機能
機能 | 説明 |
---|---|
デプロイ | コンテナをどのマシン(ノード)に、いつ起動させるかを自動で判断して配置する |
スケーリング | アクセスが増えたらコンテナの数を自動で増やす。減れば減らす。 |
管理 | 障害が起きたコンテナを自動で再起動したり、状態を監視して正常を保つ |
図で見る構成
クラスタ(Kubernetes全体)
├─ ノードA(仮想マシン)
│ └─ Pod①(Spring Boot)
│ └─ Pod②(Nginx)
└─ ノードB
└─ Pod③(Kafka Consumer)
この仕組みによって、開発者はアプリの中身に集中できて、運用はKubernetesがいい感じに自動でやってくれる…っていう働き方が可能になります。
2. Akamai / Webサーバ / BIG-IP / Kafka / 非同期 の関係とは?
通信経路と構成図(例)
[ブラウザ or スマホ]
↓
[Akamai (CDN + DDoS防御)]
↓
[BIG-IP (F5ロードバランサ)]
↓
[Webサーバ (Nginx/Apache)]
↓
[Pod(REST API)]
↓
[Kafka → バッチ or DB更新]
各構成要素の役割
要素 | 解説 |
---|---|
Akamai | CDN(Content Delivery Network):静的リソースをキャッシュして配信速度UP。DDoS対策・WAFも提供。 |
BIG-IP | L4/L7のトラフィック制御。SSL終端、負荷分散、ルーティング制御など |
Webサーバ | HTTPリクエストをAPIアプリへ転送。静的ファイルも配信 |
Pod(API) | Java/Spring BootなどのAPIアプリ本体 |
Kafka | 非同期メッセージ基盤。後続バッチや集計処理へ連携 |
L4/L7のトラフィック制御
レイヤー | 制御内容 | 特徴・用途例 |
---|---|---|
L4 | IPアドレス・ポートで振り分け | 高速・シンプル。TCP/UDPベースの負荷分散に適する。 |
L7 | URL・ヘッダー・Cookieで振り分け | 柔軟・高度。特定パスや条件に応じたルーティングが可能。 |
SSL終端 | HTTPS通信を復号して処理 | 暗号化通信の負荷を軽減し、内部処理を効率化。 |
負荷分散 | 複数サーバーにリクエストを分配 | サーバーの過負荷を防ぎ、可用性を向上。 |
ルーティング制御 | 条件に応じて処理先を変更 | A/Bテストやメンテナンス時の切り替えに活用。 |
DDoS攻撃への主な対策まとめ
対策手法 | 説明 |
---|---|
CDN導入 | 静的リソースを分散キャッシュし、オリジンサーバーの負荷を軽減。攻撃の吸収にも効果的。 |
WAF(Web Application Firewall) | Webリクエストを解析し、SQLインジェクションやXSSなどの攻撃パターンをブロック。 |
レート制限 | 一定時間内のアクセス回数を制限して、Botや大量リクエストを抑制。 |
IPフィルタリング | 攻撃元IPアドレスを遮断。ブラックリストや地理ベースの制御も可能。 |
DDoS対策サービス | Cloudflare・Akamaiなどの専門サービスによるリアルタイム検知&自動緩和。 |
Anycast通信 | 世界中の複数拠点に同じIPを配置し、攻撃トラフィックを分散吸収。 |
接続数制限/タイムアウト | アプリやWebサーバ側でのリクエスト上限設定・応答遅延回避によりサービス保護。 |
3. 同期・非同期処理の違いとは?
処理方式 | 説明 | 例 |
---|---|---|
同期 | 処理が終わるまで待つ | REST APIでレスポンスを待って処理を完了させる |
非同期 | 処理を呼び出してすぐ次に進む | Kafkaにメッセージを投げて処理は別のプロセスが後でやる |
Kafkaを使うことで、呼び出し元と処理側の疎結合が実現され、スケーラブルかつ信頼性の高い処理が可能になります。
特性 | 説明 |
---|---|
疎結合 | 呼び出し元と処理側が直接つながらず、Kafkaが中継役となることで独立性を保つ。 |
スケーラブル | TopicやPartitionを増やすことで、処理量の増加に柔軟に対応可能。 |
信頼性 | メッセージの順序保証や再送機能により、処理の安定性と再現性を確保。 |
非同期処理 | 即時レスポンス不要な処理を後回しにでき、フロントの応答速度を向上。 |
Consumer Group | 複数のConsumerで並列処理が可能。負荷分散と冗長性を実現。 |
4. Kafkaのメッセージ流れ(完全図解)
Kafka全体構成
[Producer] → [Topic (Partition)] → [Consumer Group]
用語まとめ
用語 | 概要 |
---|---|
Producer | メッセージ送信者(例:REST APIなど) |
Topic | メッセージの種類・カテゴリを表す単位 |
Partition | Topicの分割単位。並列性・スループット向上に寄与 |
Consumer Group | 複数のConsumerがグループでメッセージを処理 |
処理イメージ
Topic: user-events
├── Partition-0 → Consumer-A
├── Partition-1 → Consumer-B
├── Partition-2 → Consumer-C
- 同じConsumer Group内では、各ConsumerがPartitionを分担
- 同じKey(例:ユーザID)で送れば、同じPartitionに送られる → 順序保証も可能
🛠 5. ジョブ管理:A-AUTOとJP1の違いとは?
A-AUTOとは?
- 古くからのジョブ管理ツール(汎用機やレガシーシステムで多い)
- ジョブ起動は基本的に スクリプトベース(バッチ、シェルなど)
- GUIなし。ログは出力されるが可視性は弱い
- 依存関係や再実行制御は限定的
JP1とは?
- 日立製のモダンなジョブスケジューラ(Windows/Linux/クラウド対応)
- GUIでジョブ設計・依存設定・エラー通知などを視覚的に操作可能
- 再実行・リトライ・分岐処理などが強力
- API連携や他システムとの連携も柔軟
差分まとめ
観点 | A-AUTO | JP1 |
---|---|---|
UI | なし | GUIあり |
ジョブ設計 | スクリプト手動定義 | 画面から依存/分岐/通知も設計可能 |
柔軟性 | 制約あり | 柔軟でモダンな運用が可能 |
6. なぜ「クラスタ外」からバッチを起動するのか?
よくある構成:
[運用サーバ(JP1など)]
↓
[バッチ起動Shell]
↓
[PodのバッチAPIを叩く]
理由まとめ
観点 | 理由 |
---|---|
セキュリティ | クラスタ内部へ直接アクセスさせない設計にする |
運用分離 | ジョブ管理とアプリ本体を分離。運用効率と保守性UP |
再実行や監視 | 外部から統一的に監視・再実行できる方が障害対応しやすい |
まとめ
学び | 一言で言うと |
---|---|
Podとノード | Podはアプリ単位、ノードはそれを動かすマシン |
通信構成 | Akamai → BIG-IP → Web → Pod → Kafka の流れ |
Kafka | 高速な非同期メッセージ基盤。TopicとPartitionが肝 |
ジョブ管理 | JP1はGUIや依存制御が強力。A-AUTOは旧式だが堅牢 |
クラスタ外バッチ | 運用・監視の効率を意識した構成上の工夫 |
次に読むなら?
- KafkaのProducer/Consumer実装をJavaでやってみた(図解付き)
- JP1でのジョブ定義・依存設計のパターン集
- Kubernetes×バッチ運用の設計ベストプラクティス
最後に
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