✅ はじめに
Virtuozzo Hybrid Infrastructure(以下、VHI)は、OpenStackベースのHCI(ハイパーコンバージドインフラ)ソリューションとして注目されています。VMwareからの代替ソリューションとして採用が進む中、ストレージの正確なサイジングは、性能・安定性・TCOに大きく影響する極めて重要な要素です。
VHIについて、もうすこし知りたい方はぜひ下記の記事も読んでいただければ幸いです。
https://qiita.com/BY-san/items/7c79a7d557eda821065b
https://qiita.com/BY-san/items/e0449aa310eae8bd5d6f
本記事では、実運用に即した形で、次の6つの観点を含む完全なサイジング方法を丁寧に解説します。
✏️ SDS(ソフトウェア定義ストレージ)の基本的な要件
✏️ 冗長性モードとディスク容量
✏️ 本ガイドで考慮する要素
- TBとTiBの換算
- レプリカ数(冗長性)
- HA時の再配置
- ノードごとの必要ディスク容量の算出
- キャッシュディスクの設計指針(SSD/NVMe)
メタデータディスクとシステムディスクは通常1つのディスクにアサインされます。合わせて250GB以上であれば問題ないです。以下はストレージディスクのサイジングに関する説明です。
▶ TB vs TiB:容量単位の正しい理解
VHIでは、TiBでストレージ容量を認識しています。
単位 | 意味 | バイト換算 |
---|---|---|
1TB | テラバイト(10進表記) | 1,000,000,000,000 B |
1TiB | テビバイト(2進表記) | 1,099,511,627,776 B |
▶ 換算式
1TB × 0.9095 = 統合TiB
▶ レプリカ数(冗長性)
VHIの分散ストレージは、ノード障害時もデータを統合して利用できるよう、レプリカ数を指定することでHAを実現します。
レプリカ数 | 実効データ比 |
---|---|
2レプリカ | 約2分の1 |
3レプリカ | 約3分の1 |
2レプリカの場合、データ容量の倍ぐらいの容量が必要です。
▶ メタデータ預留、空き容量の確保
VHIはスナップショット、ストレージ管理情報などを記録するため、合計ストレージ容量の5%をメタデータ用に保留するのがベストプラクティスです。
また、3台クラスターの場合、ノード移転や再バランスに備えて、合計容量の35%の空き預備領域を確保しましょう。
そのため、各サーバーディスク容量の最大60%まで使うのが理想です。当然サーバー台数と耐障害レベルによって変わります。5台構成の場合、リバランスを考えてざっくり各サーバーディスク容量の最大75%以上利用可能です。
▶ 算出式
【ステップの流れ】
- 必要実データ(TB) → TiBに換算
- TiB × レプリカ数 = 合計データTiB
- 合計TiB ÷ ノード数 = 各ノードTiB
- 合計データTiB ÷ 0.6 = 必要な容量
- 各ノードTiB + OS預留 (0.05TiB)
- 各ノードのTB = 総TiB × 1.0995
▶ 実例計算 (10TBを保存したい場合)
【共通】
- 10TB × 0.9095 = 9.095TiB
【2レプリカ】
- 9.095 × 2 = 18.19TiB
- 18.19 ÷ 3 = 6.06TiB/Node
- 6.06TiB ÷ 0.6 = 10.1TiB
- 10.1Tib + 0.05 = 10.15TiB
- 10.15TiB × 1.0995 = 【11.1TB】/Node
▶ キャッシュディスク設計ガイド(SSD/NVMe)
※ VHIの基本方針として、データストレージはSSD/NVMeを使用することが推奨されています。キャッシュディスクは基本的に不要です。
【SSD/キャッシュ利用シナリオ】
様性 | 発生IO型 | 推奨デバイス |
---|---|---|
高速書き | 超高速なDB | SSD + NVMeキャッシュ |
大容量だけど価格重視 | バックアップ用途 | HDD + SSDキャッシュ |
【容量相対サイズ相場】
SSD容量 = データ容量の10-20%
【例】
- 100TBの実データ → 同じノードに10-20TBのNVMe SSDを配置
✅ 総合表
項目 | 2レプリカ |
---|---|
実データ | 10TB |
各Node (TB) | 【11.1TB】 |
当然、それ以外に、OSとメタデータ用のディスクを用意する必要があります。こちらディスクの容量はストレージとして利用されないため、サイジングする際に考慮する必要がありません。
✅ おわりに
VHIのストレージサイジングは、単に容量だけではなく、HA性、再構成性などを考慮することが必要です。
本記事が、VHI構成設計や実装の参考になれば幸いです。