はじめに
GitHubは、コード管理、コラボレーション、プロジェクト管理をサポートする世界最大の開発プラットフォームです。リポジトリ、Issue、Pull Request（PR）、コミット履歴を管理し、強力なAPIとWebhookでデータの取得や自動化が可能です。一方、**Model Context Protocol（MCP）**は、AI（例：Claude）を外部データやツールと標準化された方法で接続するプロトコルです。このシリーズでは、GitHubとMCPを統合し、リポジトリデータを活用するエージェントAIを構築する方法を学びます。たとえば、AIがIssueを分析したり、コード変更のインサイトを提供したりできます。
第1章では、GitHubとMCPの基本を理解し、GitHubリポジトリからIssueやコミットデータを取得するシンプルなMCPサーバーを構築します。Claude Desktopと接続して、開発管理の第一歩を踏み出しましょう。
GitHubとMCPの概要
GitHubとは？
GitHubは、以下のような特徴を持つ開発プラットフォームです：
- リポジトリ管理：コード、ドキュメント、データセットを保存。
- 強力なAPI：REST APIでIssue、PR、コミット、ユーザーデータにアクセス。
- Webhookサポート：リアルタイムイベント（Issue作成、PRマージなど）を検知。
- 多用途：個人プロジェクトから大規模なオープンソース開発まで対応。
MCPの役割
MCPは、AIにGitHubのデータを提供する橋渡し役です。MCPサーバーを通じて、AIは以下を行えます：
- データ取得：Issue、PR、コミット情報を取得。
- アクション実行：Issue作成、コメント追加、PRレビュー。
- 分析：コード変更やチームのコラボレーションパターンを評価。
なぜGitHubとMCPを組み合わせる？
この組み合わせは、以下のようなシナリオで強力です：
- 自動Issue管理：AIがバグ報告を分類し、適切なラベルを付ける。
- コード分析：AIがコミット履歴から改善点を提案。
- 通知最適化：AIが重要なイベント（例：PRマージ）をSlackやメールで通知。
開発環境の準備
MCPサーバーとGitHubを統合するには、以下の環境を準備します：
- Python 3.8以降：サーバー開発用。
- mcpライブラリ：JSON-RPC通信を処理（仮定のライブラリ、公式ドキュメントを参照）。
- requestsライブラリ：GitHub APIとの通信用。
- Claude Desktop：MCP対応のAIクライアント。
- テキストエディタ：VS Code推奨。
インストールコマンド：
pip install mcp jsonrpcserver requests python-dotenv
GitHubのセットアップ
-
GitHub Personal Access Tokenの作成：
- GitHub Settingsにアクセスし、トークンを生成。
- スコープを選択：
repo（リポジトリアクセス）、admin:org（オプション、組織管理用）。 - トークンを保存（例：
ghp_xxxxxxxxxxxxxxxx）。
-
リポジトリ準備：
- テスト用リポジトリ（例：
mcp-test-repo）を作成。 - Issueをいくつか追加（例：「バグ修正」「新機能提案」）。
- コミットをいくつか作成（例：「初回コミット」「ドキュメント更新」）。
- リポジトリ名とオーナー名（例：
yourusername/mcp-test-repo）を記録。
- テスト用リポジトリ（例：
-
環境変数の設定：
.envファイルに以下を追加：GITHUB_TOKEN=your_token GITHUB_REPO=yourusername/mcp-test-repo
コード例：GitHub用MCPサーバー
from mcp import MCPServer
import os
from dotenv import load_dotenv
import requests
class GitHubServer(MCPServer):
def __init__(self, host, port, token, repo):
super().__init__(host, port)
self.token = token
self.repo = repo
self.base_url = "https://api.github.com"
self.headers = {
"Authorization": f"Bearer {token}",
"Accept": "application/vnd.github.v3+json"
}
self.register_resource("get_issues", self.get_issues)
self.register_resource("get_commits", self.get_commits)
def get_issues(self, params):
try:
url = f"{self.base_url}/repos/{self.repo}/issues"
query = {"state": params.get("state", "open"), "per_page": params.get("limit", 10)}
response = requests.get(url, headers=self.headers, params=query)
response.raise_for_status()
issues = response.json()
issue_list = [
{
"title": issue["title"],
"number": issue["number"],
"state": issue["state"],
"creator": issue["user"]["login"],
"created_at": issue["created_at"]
}
for issue in issues
]
return {"status": "success", "issues": issue_list}
except Exception as e:
return {"status": "error", "message": str(e)}
def get_commits(self, params):
try:
url = f"{self.base_url}/repos/{self.repo}/commits"
query = {"per_page": params.get("limit", 10)}
response = requests.get(url, headers=self.headers, params=query)
response.raise_for_status()
commits = response.json()
commit_list = [
{
"sha": commit["sha"],
"message": commit["commit"]["message"],
"author": commit["commit"]["author"]["name"],
"date": commit["commit"]["author"]["date"]
}
for commit in commits
]
return {"status": "success", "commits": commit_list}
except Exception as e:
return {"status": "error", "message": str(e)}
if __name__ == "__main__":
load_dotenv()
server = GitHubServer(
host="localhost",
port=8127,
token=os.getenv("GITHUB_TOKEN"),
repo=os.getenv("GITHUB_REPO")
)
print("GitHub MCPサーバーを起動中: http://localhost:8127")
server.start()
コードの説明
- requests：GitHub APIにGETリクエストを送信し、Issueやコミットを取得。
- get_issues：リポジトリのIssueを取得（タイトル、番号、状態、作成者、作成日）。
- get_commits：リポジトリのコミットを取得（SHA、メッセージ、著者、日付）。
- register_resource：Issueとコミット取得をリソースとして登録。
- start()：サーバーを起動。
前提条件
- GitHub Personal Access Tokenが生成済み。
- テスト用リポジトリにIssueとコミットが存在。
-
.envファイルに正しいGITHUB_TOKENとGITHUB_REPOが設定済み。 - トークンに
repoスコープが付与されている。
サーバーのテスト
サーバーが正しく動作するか確認します：
-
サーバー起動：
python github_server.pyコンソールに「GitHub MCPサーバーを起動中: http://localhost:8127」と表示。
-
Issue取得のテスト：
Pythonでリクエストを送信：import requests import json url = "http://localhost:8127" payload = { "jsonrpc": "2.0", "method": "get_issues", "params": {"state": "open", "limit": 5}, "id": 1 } response = requests.post(url, json=payload) print(json.dumps(response.json(), indent=2, ensure_ascii=False))期待されるレスポンス：
{ "jsonrpc": "2.0", "result": { "status": "success", "issues": [ { "title": "バグ修正", "number": 1, "state": "open", "creator": "yourusername", "created_at": "2025-04-22T10:00:00Z" }, { "title": "新機能提案", "number": 2, "state": "open", "creator": "yourusername", "created_at": "2025-04-22T11:00:00Z" } ] }, "id": 1 } -
コミット取得のテスト：
payload = { "jsonrpc": "2.0", "method": "get_commits", "params": {"limit": 3}, "id": 2 } response = requests.post(url, json=payload) print(json.dumps(response.json(), indent=2, ensure_ascii=False))期待されるレスポンス：
{ "jsonrpc": "2.0", "result": { "status": "success", "commits": [ { "sha": "abc123", "message": "初回コミット", "author": "Your Name", "date": "2025-04-22T09:00:00Z" }, { "sha": "def456", "message": "ドキュメント更新", "author": "Your Name", "date": "2025-04-22T10:00:00Z" } ] }, "id": 2 }
Claude Desktopとの接続
サーバーをClaude Desktopに接続します：
-
設定ファイルの編集：
Claude Desktopの設定ファイル（例：claude_desktop_config.json）に以下を追加：{ "mcp_servers": [ { "name": "GitHubServer", "url": "http://localhost:8127", "auth": "none" } ] } -
Claudeでテスト：
Claude Desktopを起動し、プロンプトを入力：リポジトリのオープンIssueを教えてください。レスポンス例：
リポジトリ yourusername/mcp-test-repo のオープンIssue： - #1: バグ修正（作成者：yourusername、2025-04-22） - #2: 新機能提案（作成者：yourusername、2025-04-22）別のプロンプト：
最新のコミットを教えてください。レスポンス例：
リポジトリ yourusername/mcp-test-repo の最新コミット： - SHA: def456、メッセージ：ドキュメント更新、著者：Your Name、2025-04-22
次のステップ
このMCPサーバーは、GitHubとAIの連携の基礎です。次の第2章では、GitHubにIssueを作成したり、Pull Requestにコメントしたりする機能を実装し、開発タスクを自動化するエージェントを構築します。たとえば、AIが特定のキーワードに基づいてIssueにラベルを付けることができます。
まとめ
この第1章では、GitHubとMCPの基本を学び、シンプルなMCPサーバーを構築してIssueとコミットデータを取得しました。GitHubの強力なAPIとMCPの柔軟性を組み合わせることで、AIを開発プロセスの強力なアシスタントに変えられます。次章以降では、Issue管理、コード分析、リアルタイム管理へと進化させます。
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