はじめに
BIPROGY(旧:日本ユニシス)というIT会社にシステムエンジニアとして入社し、現在はデザイン組織でUI/UX、サービスデザインなどを担当しています。普段の業務では人間中心設計専門家として、UI/UX関連の案件支援をしたり、知財開発や啓蒙活動をしたりしています。
会社をご存じの方からは、「え?システムエンジニアなのに、デザインやっているの?」とか「バトミントンの会社?」「電飾メーカー?」などと思われるかもしれませんが、2011年からデザイン領域の専門組織を立ち上げ、地道にデザイン領域に取り組んでいます。元々はSI領域に強みがある会社ですが、昨今では従来のSIだけでなく、サービスビジネスも多数手がけています。
今まではあまり社外に対して発信をしてこなかったのですが、これからは部署のメンバーで持ち回りしながら、UI/UX、サービスデザイン、デザイン思考などの技術情報を発信していきたいと思います
エンジニアの中心でHCDを叫ぶ
2011年にデザイン組織が立ち上がった当初、UXやサービスデザインといった用語はまだ広く認知されていませんでしたが、”ユーザビリティ(使い勝手)”の重要性が徐々に浸透してきた時期でした。正直に申し上げると、当時のシステムは使い勝手が十分ではありませんでした。特に、当社は当時、SI(システムインテグレーション)に強みを持ち、BtoB向けの業務システム開発が主流でした。そのため、限られたユーザーが使用する業務システムでは、使いやすさや見た目の優先度が低くなりがちでした。この結果、要件を満たしていても、使いにくいシステムが多く生まれてしまいました。
使い勝手が悪いシステムは、ユーザに使いたくないと思われてしまい、淘汰されてしまいます。結局頑張って作っても、使ってもらえなければ意味がない。そこをなんとかしていかないと!という思いから、エンジニアしかいない弊社の中で人間中心設計(Human Centered Design)を叫び、デザインの専門組織の立ち上げに至りました。
人間中心設計(HCD)とは
人間中心設計(Human Centered Design)は、ISO9241-210:2010(JIS Z 8530:2021)にも定義されている、ユーザ(人間)を中心にモノづくりをする設計手法になります。
ユーザのことを深く理解した上でモデル化(ペルソナ・シナリオなど)し、要求事項を抽出。そこから解決策(画面プロトタイプ)の作成を行い、ユーザ視点で評価を行います。評価の結果問題がなければ、解決策はユーザ要求を満たしていることになり、次工程(開発など)に進みます。逆に評価の結果、問題があれば前工程に戻り、反復改善を繰り返します。このようなプロセスを、人間中心設計プロセス(HCD)といいます。
弊社では、このHCDを開発工程に落とし込んだものを、UXデザインプロセスとして定義し、様々なお客様のプロジェクトやプロダクト開発に生かしています。
システムエンジニアがやるからこそのデザイン
2011年の専門部署発足当時とは異なり、2024年現在、UXを手掛けるデザイン会社は多数あります。
HCD-Net の認定する人間中心設計専門家、スペシャリストも約2200人が認定されています。私たちはシステムエンジニアであり、美術系の学校を出たデザイナーではありません。秀でた芸術的センスがあるわけでもありません。そのような中で、あえてエンジニアが、UI/UXの領域をやり続けるのには、理由があります。
<IT企業におけるデザイン組織の役割とメリット>
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エンジニア経験・知識があることから、デザインと開発のスムーズな橋渡し
昨今、UIデザインと開発の垣根が薄くなってきており、デザインを行う上でも特にフロントエンド技術の理解が必要です。 例えば、CSSライブラリやローコード・ノーコードを使って実装する場合、エンジニアの知識があることで、技術的な制約を把握した上でデザインを考えることができます。凝ったデザインや美しいデザインを作成しても、「実現できなければ」「コストに見合わなければ」意味がありません。”絵に描いた餅”にしないためには、現実的な解決策を導くエンジニアの視点が役立ちます。また、バックグラウンドが同じなので開発チームとのコミュニケーションもスムーズで、食い違いが起きにくいというメリットもあります。
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SIで培った業務への深い造詣、要件定義の能力
UXの実現において、ユーザーの理解は必要不可欠です。BtoB向けのシステムにおいては、見た目の美しさよりも、業務を深く理解し、業務がスムーズに遂行できることが求められます。そのためには、該当業務を深く理解する必要があります。お客様から要件を拾い上げ、深掘りし、まとめ上げることが重要です。これは長年SIerとして多種多様なお客様のシステム開発に携わった経験が役立っています。
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シームレスな実行力
見た目だけを良くしても良いプロダクト(サービス)は成し得ません。サービスデザイン、UXデザイン、UIデザイン、開発設計をシームレスに実施することで、ワンストップでの開発が可能になります。特に昨今、弊社もSI領域ではなく、サービスビジネス領域に力を入れているため、この領域をきちんと考えていくことが求められています。
おわりに
今回は、IT企業において何故デザイン組織が必要なのか、その役割とメリットを内的要因を中心に説明しました。他にもデザイン組織が必要になった背景としては、DXや事業創出に伴い、お客様から求められることに変化があったことも挙げられます。不確実性の高いニーズに対応する必要があり、それにはアジャイル開発とUXを掛け合わせた考え方も必要不可欠です。アジャイルUXについては、また別の機会に言及したいと思います。
これからも、私たちはエンジニアとしての強みを活かし、デザインと開発の橋渡し役として、ユーザーにとって使いやすく、魅力的なシステムを提供していきます。技術とデザインの融合を追求し、常にユーザーの視点を大切にしながら、より良いプロダクトを生み出すことを目指し、進化し続けるデザインの世界で、新たな挑戦を続けていきたいと考えています。