モチベーション
社内での勉強会で発表した内容を改編し、Qiita記事にしました。
主に『LeanとDevOpsの科学』の3章についての要約になります。
抽象度の高い記述もあるため、自分の個人的な解釈や「具体的にはこうかな?」という部分を記載しているので参考までにご覧ください。
では、いきましょー!
まとめ
- **DevOpsのプラクティス(リーンマネジメント・継続的デリバリ)**を実践すれば組織文化に好影響をもたらす。
- Westrumモデルでは**「情報のやり取りの流れ」の質**が重要であり、不健全的/官僚的/創造的組織のにはそれぞれ違いがある。
- 組織文化が改善されれば、ソフトウェアデリバリや職務満足度に好影響を与えられる。
- 組織の成果で重要なことは個人の突出した能力ではなく、チーム力である。
はじめに
組織文化はDevOpsを語る上では非常に重要なことは自明とのことでした。ただし、文化は無形的な部分が多く曖昧なので、文化の定義やモデル自体も数多く存在しています。
著者たちは**「DevOpsのプラクティスを実践すれば組織文化に好影響をもたらす」**ことを明らかにしました。
3.1 組織文化とモデル化と測定
まずはじめに、組織文化のレベルと言う概念について紹介します。
組織文化は「基本前提」「価値観」「アーティファクト(人工物)」という3つのレベルで存在しているそうです。
-
基本前提:
- 組織のメンバーが長期に渡り、様々な関係や出来事、活動の意味を会得(理解して自分のものにする)する。
- 言語化が難しい。
- 可視性:低
-
価値感:
- レンズのように、組織のメンバーは「価値観」を通して周囲の関係や出来事、活動を見る。
- 価値観は社会的規範を確立する。
- 組織文化が語られる場合の多くがこのレベルの文化。
- 可視性:中
-
アーティファクト:
- 具体的には経営理念や社是、社訓、技術、手続きや手順、英雄、儀式等
- 可視性:高
具体的に考えてみる
「基本前提」の考え方が非常に難しかった印象です。一方で、価値観とアーティファクトはわかりやすいですね!
以下は自分のこれまでの経験と照らし合わせながら各レベルの具体例を考えてみました。
具体例:
-
基本前提
- サービスの初期メンバーは「〇〇という新しい概念を生み出し、〇〇市場を作り上げてきた第一人者だー。」となんとなく感じてる。
-
価値観
- 「挑戦することが大切」
- 「〇〇なのって、ウチっぽいよね。」
-
アーティファクト
- 表彰制度
- ミッション・ビジョン・バリュー
Westrumの組織文化モデル
お次は、Westrumが提唱する3つの組織モデルについて紹介します。
-
不健全な(権力的な)組織
- 著しい恐怖や脅威が特徴。
- 情報の隠蔽や歪曲されることが多い。
-
官僚的な(ルール志向の)組織
- 縄張り意識が強い組織。
- 自分たちのルールが絶対。
-
創造的な(パフォーマンス志向の)組織
- 使命や任務に焦点を当てる組織。
- 目標の達成方法と良いパフォーマンスを最優先。
Westrumは、上記の組織文化モデルが情報の流れの良し悪しに与える影響を明らかにしました。
有益で質の高い情報の流れとは?
- 受け手が解消したいと思ってる疑問に対し、答えをもたらしてくれる。
- 適切なタイミングで伝達される。
- 受け手が有効に使えるようなやり方で提示される。
具体的に考えてみる。
ここではあえて、アンチパターンについて考えてみました。
具体例:
- 疑問に対して解決されない回答・もしくは回答なし
- 今日必要な情報なのに、今日得られない。
- 「調べて」「考えて」といっためっちゃ抽象的な回答とか?
3.2 組織文化の測定
じゃあ上記の創造的な文化を持つ組織が、なぜ情報の流れを良くするのか、そのメカニズムを本書に沿って説明していきます。
メカニズム
- メンバーの協働態勢が整っており、組織全体でも階層間でも、確固たる信頼関係が構築されている。
- 使命や任務に焦点があたっているため、個人の問題や官僚的組織にありがちな部署間の問題等をいったん脇へ置き、解決する課題を最優先にする。
- 創造性が「フラットな競技場」、つまり均等な機会を各階層・階級に対する意識が薄まる。
まとめると**「損得勘定とか、好き嫌いとか、役職とか、部署とか関係なく、解決するコトに向かおうぜ!俺たち私たち、信頼しあえてるよな!」っていうことが大事なんだと理解しました。
とはいえ、官僚的組織に代表されるようなルールが必ずしも悪いわけではないです。**
なぜなら、進化や改善による知見の産物のため洗練されている可能性があるからです。
ただ、そのルールを守ることが目的になってるとよくないよね?という解釈をしました。
3.3 Westrumモデルで予測できること
Westrumは、良い情報の流れをもつ組織(創造的な文化を持つ組織)は業務を効率的に行うことができることを証明しました。
その上で著者らは2つの仮説を立てました。
- 組織文化により、ソフトウェアデリバリのパフォーマンスと組織のパフォーマンスを予測することができる。
- 優れた組織文化は職務満足度を向上させる。
調査によると、いずれの仮説も正でした。
(詳細は書かれてなかったが、先行研究を基盤に経験等を肉付けした仮説。手法については本書の12章で語られるとのこと。)
3.4 技術系の組織に対するWestrumモデルの意義
- 変化の激しい社会において、求められる組織の力は「革新力」と「弾力性」。
- 組織文化がソフトウェアデリバリにどのような影響を与えるか?という話では、Googleも過去に研究を進めていた。
- 2年間をかけて、Googleのトップパフォーマーたちに200以上のインタビュー等を経て徹底的に調べた。
- そうすると有能なチームは**「チームの個々のメンバーの素養よりも、各メンバーが他の関係者といかにやり取りし、作業をどう構成し、チームに対する自身の貢献をどう捉えるか、のほうが重要」**という結果が出た。
- つまりは、「チーム力」が大事。
失策や事故に対する組織の対処法の違い
ミスや失敗を、どのように対処するかという点においても組織の違いが出現します。
不健全な組織は、誰かをやりだまに挙げて、**「ヒューマンエラー」であると片付けます。
しかしながら通常、こうした失策や事故は複雑な要因が絡み合って発生するものです。
むしろ、健全な組織はヒューマンエラーを「出発点」**として、より良くするためのツールや仕組みを見直すべきでないか?というのが著者の意見でした。
3.5 組織文化をどう変えていくか
通常の考え方:思考法やマインドセットを変える→言動や行動が変わる→組織文化が良くなる
著者の仮説:言動や行動を変える→組織文化が良くなる
じゃあどのように言動や行動を変えるのでしょうか?
それは、以下の2つの手法によって実現できると主張しています。
- リーンマネジメント
-
継続的デリバリ
の2つを併用することで組織文化に対して好影響を与えられることを証明しました。
技術的なプラクティスは4章・管理面でのプラクティスは7・8章で説明されます。