文系学部卒でスマホアプリを開発していたわたしがJTC (Japanese Traditional Company) ――伝統的日本企業。硬直的・時代錯誤な体質を揶揄する呼称――に転職して5年経ちました。メリット・デメリットを書きます。
- 前職:社員数100人未満でWeb・スマホアプリの受託開発がメイン事業。
- 現職:戦前創業の電機メーカー。売上の2/3が海外。子会社が数十個ある。
雰囲気
- 年齢層が高い!
- 歴史あるメーカーはどこも同じですが平均年齢が40代半ばです。わたしが20代後半で転職した際には100人超の部で一番の若手でした。前職では中堅扱いでリーダー業務も任されていたのでびっくり。年齢が高いため落ち着いている方が多いです。
- 男性が9割超!
- わたしがいる設計部門は95%が男性です。大学の工学部をそのまま持ってきた性別比です。
- 学歴!
- 設計部門は全員電気・機械・情報・数学の修士または博士で、まれに物理や化学の方がいるかなという感じです。学部卒・文系卒はわたし以外にいません。学歴に偏りを感じますね・・・・?
- JTC電機メーカーの設計部門は基本的に地方拠点です
- どの会社も地方の工場併設の開発拠点に設計部門が置かれています。そのため設計の人間はオートマティックに地方在住になります。例外はソニーくらいです。
メリット
- 給料が高い
- 設計部門は35歳で年収700万円 + 残業代が標準です。加えて毎月5万円以上の確定拠出年金(日本版401K)が出ています。
- わたしの前職と比較すると高収入で、20代後半当時は転職するだけで年収が100万円上がりました。メルカリなどの大手ITベンチャーや自動車メーカー・医薬品メーカーと比べると低いですが、上を見るとキリがないですしわたしの経歴の低さのわりに納得できる金額なので一旦満足しています。正直これが最大のメリットです。金はすべてを解決する!
- プログラミングスキルを活かして社内で独自のポジションを獲得できる
- JTC電機メーカーでは社員が設計し、協力会社がプログラミング・テストを担当する役割分担が基本です。そのため社員とりわけ中堅以上はプログラミングに対する勘がほぼありません。
- 難易度が高く協力会社の手に余る設計実装・不具合調査で重宝されます。
- またある種の組み込み開発においてあるあるだと思いますが、組み込み用途のマイナーなOS、ミドルウェアを採用しており、それらOS・ミドルウェア自体の改造や不具合調査で開発元と協力することも結構な頻度であります。
- 開発プロセスが整備されている
- 我が社ではISO 9001準拠の開発プロセスを採用しておりマイルストーンごとの成果物が定められています。そのためいつ・何を作ればよいかが明確です。
- プロセスの硬直化・老朽化を指摘する方が多いようですが、ウン千人を超える設計部門が企画・品質・工場と連携して開発を進めるにはある程度固まったプロセスに従う必要があります。そうしないと都度いろいろなことで迷ってしまい時間がかかるので・・・・。
- システム設計の勉強になる
- わたしはBtoB商品を担当しており10種類以上の機器を接続してひとつのシステムを構成する、という感じの製品を開発しています。各機器の通信方式、機器の追加・除去への対応、将来新商品を接続するための拡張性、などシステム設計固有の考慮事項が勉強になります。また電機機器は突然停電したり物理的に故障することがあるため、システム全体としてのフェイルセーフを入念に検討します。あるサブシステムが止まったら別のサブシステムに通知して止めるとか、安全性に関わる国際規格に準拠した設計をします。非同期なシーケンス設計、状態遷移設計を抜け目なく実施できるようになってきたということです。
デメリット
- 根性を求められる
- JTCも最近は浄化されているようですが開発の進捗が悪いと根性(残業)を求められます。過労死認定ラインが業務内容によりますが残業月間80時間か100時間と設定されているのに対し、わたしの残業時間は最大で月間200時間です(平日07:00~24:00、土曜09:00~24:00。土曜は始業時間に温情がある)。残業代が80万円近く支給されましたが、その後1年ほどメンタルが沈みました。
- 出産後は鉄の意志で残業を拒否していますが(家事育児で忙しすぎるので物理的に無理)、それでも人事評価は下がっていないため、わたしはあのとき何のために残業したのか、また当時の上司のマネジメント能力を疑問に思ったりも・・・? あと労働組合は何もしてくれなかった・・・・。
- いちエンジニアとして食べていくのも最近は大変
- 年功序列的に給料が上がればわたしは嬉しいのですが最近はJTCも年功序列の気風が薄れて昇格しないと給料が上がりません。エンジニアが昇格するには専門領域を定めて研鑽する必要があります。係長級(年収700万円)は我が社ではだいたい以下の3点をすべて満たすことが求められます。
- 技術:ある商品の設計リーダーとして基本設計や重要部分の詳細設計を行う。年間2件の特許出願ノルマをクリアする。
- コミュニケーション:設計を代表する立場で企画・生産といった他部署への説明責任を果たす。またイニシアティブを持って開発を進める。必要に応じ他社ともコミュニケーションを取る。
- 育成:下のメンバーに対する技術的な指導を行う
- 満たせない場合は降格なので人事評価に神経を使うのが嫌です。もっと落ち着いて働きたいのですが。課長まで上がれば降格が無くなるので・・・ずるいですね!
- 同僚にOSの改造や自社製コンパイラの開発をしている者がおり、低レイヤの開発はハッカーみたいでかっこいいと思っていたのですが、わたしと同じ係長級でした。なおその後わたしも両方やりました。やればできるね。
- エンジニアの職種のままで課長級に昇るには、有名学会での論文発表経験、単著の執筆経験、大学での客員教授の経験、インパクトの大きな商品設計の経験(売上OOO億円以上)、専門分野の博士号などが複数求められ、わたしにとってはかなりのハードルのため、マネジメントへの方向転換を考えています。
- 年功序列的に給料が上がればわたしは嬉しいのですが最近はJTCも年功序列の気風が薄れて昇格しないと給料が上がりません。エンジニアが昇格するには専門領域を定めて研鑽する必要があります。係長級(年収700万円)は我が社ではだいたい以下の3点をすべて満たすことが求められます。
最後に
色々とデメリットがありますが安心して生活できる給料をもらえているので転職して正解でした。
隙あらば根性を求めてくるのは嫌なのでわたし個人はなるべく拒否するという草の根活動で風土改善に努めます。