はじめに
ソフトウェアの見積りは極めて期待が大きな学問です。プロジェクトの失敗の大きな原因は見積りの失敗だ!と騒がれることも多いでしょう。昔、なんとか見積りたいと思ったときにはCOCOMOⅡ法の書籍も購入しました。また昔、近所の先輩はファンクション・ポイント法の大家と呼ばれていたようでした。しかし、私はそれらに失望感しか感じられませんでした。結局、KKD法の世界を彷徨い続けました。それ以前に日本のソフトウェア開発では、仕様が決まらないのに請負開発で受注するという悪習も横行してました。
本書に触れてからは、私のスタンスは、「実用的なコストと期間内で実践でき、期待される精度を満たす、科学的なソフトウェア見積り手法は存在しない」と思っています。日々進化する技術と市場に合わせて、常に新しい技術を組み込んでいくような業務が多い場合を前提としています。類似した開発を再び実施するような場合に限定すれば、経験を使うことで一定精度のソフトウェア見積りは可能かもしれません。
ポイント
全体構成
本書はアートとしての見積りと、サイエンスとしての見積りを区別し、アートしての見積りの方に焦点を当てるとしています。
- 第1部 見積りの考え方
見積りとは、見積り能力のチェック、正確な見積もりの価値、見積り誤差はなぜ起きる?、見積りに影響するもの - 第2部 見積り技法の基礎
見積り技法入門、数えて・計算して・判断する、補正と過去のデータ、専門家の判断、分解して・また組み立てる、類推見積り、代替指標による見積り、専門家グループによる判断、ソフトウェア見積りツール、複数のアプローチの使用、うまくいく見積りフロー、標準化された見積り手順 - 第3部 見積りの課題
規模の見積りの課題、工数の見積りの課題、スケジュールの見積りの課題、計画パラメータの見積り、見積りのプレゼンテーション、政治・交渉・問題解決
不確実性のコーン
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初期コンセプトの時点では大きいときは4倍、少ないときは1/4倍、つまり専門家が出す見積り幅として16倍程度の幅が普通にある。
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さらに1週間追加しても、たいして精度は上がらない。ユーザインタフェースの設計が完了した頃に、やっと見積りの精度が上がってくる。
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これは、1980年頃の提唱なので、提唱はかなり古い。
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書籍「アジャイルな見積りと計画づくり」Mike Cohn著、毎日コミュニケーションズ、にも不確実性コーンの記述があります。
書誌情報
- 書籍名:ソフトウェア見積り 人月の暗黙知を解き明かす
- 著者:Steve McConnell
- 出版社:日経BPソフトプレス
- ISBN:987-4-89100-522-1