はじめに
職場で、すぐに『ブレストしようぜ!』と騒ぐ人がいました。その人との時間はいつも無駄だなぁ、と感じていました。そもそもブレインストーミングのルールに従っていないし、当人がアイディアを出すことはないし・・・。そう、彼はピーターの高原に居るフリーラーダーだったのです。
ポイント
古典的理論「3人よれば文殊の知恵」
- グループは個人に比べて平均的に優れた知的達成を示すという事実。論理課題を正しく解ける程度は、平均的な個人よりもグループの方が高い。
例えば、1/2の確率で解ける問題を・・・、
1人で独立に解くと、正解確率は1/2。
2人で独立に解くと、正解確率は3/4 =(1-(1-1/2)✕(1-1/2))
3人で独立に解くと、正解確率は7/8 =(1-(1-1/2)✕(1-1/2)✕(1-1/2)) - 各人が独立して解く場合を「タコ壺」と呼ぶことにする。
- 協調して相乗効果(創発)が出れば、さらに良くなる可能性がある。・・・期待
「3人よれば文殊の知恵」は、その中の最良のメンバの知恵を超えない
- 実験結果では、グループの正解率は、タコ壺の正解確率さえ超えられなかった。
- つまり、単純な論理課題の遂行において、グループレベルの創発に至ることは極めてまれ。
- グループの遂行が平均的メンバーの遂行を上回るとしても、その中の最良のメンバの個人遂行には、多くの場合には届かない。
- 一人で正解を出せる確率が1/2を下回る場合、誤った多数派が形成された場合、質の悪い判断になるリスクが高い。
合議の無駄:タダ乗り者、社会的な発話抑制
- 合議の無駄は、タダ乗り者(free ridier)の発生や、相互調整によるロスで生じる。
-
バンドワゴン効果:世論が流動的な中で、たまたま特定な立場が優勢になったとき、この立場が賛同者をさらに吸収し勢力を強めていく現象。
「不利になるから/面倒だから、反対を表明せず、沈黙しよう・・・」 - 合議において、しばしば声の大きさや存在感の程度が、事を決めてしまう。
投票のパラドックス
- グループだから民主的だと言いやすい。しかし、実は。
- コンドルセのパラドックス:3つ以上の選択肢に対する多数決投票は、投票の経路(多段階の投票による選択)によって結果が変わる。変えることができる。
ブレイン・ストーミング
- オズボーンによれば、ブレインストーミングにより一人当たり2倍のアイディアを生み出せる。
- テイラーの研究によれば、ブレインストーミング集団の遂行は、一人ひとりの結果を集約したものに比べ、質的・量的に下回る。
書誌情報
- 書籍名:合議の知を求めて グループの意思決定
- 著者:亀田 達也
- 出版社:共立出版
- ISBN:978-4-320-02853-1