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【レビュー企画用献本御礼】「因果推論の計量経済学」の書評

Last updated at Posted at 2024-12-08

はじめに

「因果推論の計量経済学」の献本キャンペーンに応募し、本書を一冊ご恵贈頂きました。内容を一読した上での書評を以下に記させていただきます。
私自身、Qiitaを用いて記事を執筆するのが初めてであり、不備がございました際には、何卒ご容赦賜りますようお願い申し上げます。

内容

本書は「経済学訛りの強い因果推論に特化したテキスト」であり、経済学に関する分野で因果推論を用いた論文を読みたい人や、研究等で因果推論を用いたい人には非常に有用です。
第一部は全5章で構成されており、因果推論の基礎となる理論や無作為実験を中心に扱っています。1〜4章では、理論を中心に、5章ではその応用例としていくつかの論文を分析例として紹介しています。
第二部は全6章で構成されており「非回帰連続デザイン」「差の差法」を中心に、経済学分野の因果推論において用いられる手法について解説しています。

個人的なおすすめポイント

1. 理論と応用のどちらも充実している
本書は二人の著者が「理論」と「実践」の両面の充実を目指して書かれたテキストです。そのため、理論面では、考え方や手法について数学的に厳密に記述されています。一方で、実践面では、実際の論文をもとに、どのように応用されているのか丁寧に解説しています。加えて、妥当性チェックや頑健性チェックに関しても触れている点が魅力的であると感じています。

2. Rによる実践的な実装例がある
本書のサポートページでは、Rによる実装方法を紹介しています。数式を見ているだけではいまいち理解できなかった内容も、コードを見ることで「何をしているのか」はっきりと理解することができます。

本書を読むにあたってそばに置いておくと理解が捗る書籍

因果推論

  1. Rで学ぶ実証分析
    このテキストの後半では因果推論に関するトピックを扱っています。内容が重複するところがあると思いますが、数学的な議論が少ないため、理解しやすいです。また、Rによる演習部分もあるため、本書との相性は良いと思います。
  2. はじめての統計的因果推論
    因果推論やその手法の考え方についてイメージが湧きにくい方は、こちらの本の該当箇所を読んだ後に本書を読むと理解しやすいです。

計量経済学

  1. 計量経済学 ミクロデータ分析へのいざない
    本書の「回帰非連続デザイン」の部分ではノンパラメトリック回帰に関する記述があります。ノンパラメトリック回帰に触れたことがない人は、このテキストの該当部分を読むことをお勧めします。

想定される読者とおすすめの読み方

本書は経済学訛りの強い因果推論について、理論と実践の両面で充実したテキストになっています。そのため、ある程度の知識を持っている学部生・大学院生にお勧めしたいです。特に、因果推論に関する授業をとっている人や、因果推論に関する論文を読み始めたい人にとっては必須の一冊となると思います。ある程度の知識の一例としては

  1. 行列を用いた計量経済学(中級レベル)
  2. 因果推論に関する知識(回帰非連続デザインや差の差法、傾向スコアなどの手法について簡単に知っている)
  3. 基礎的な解析学(微分積分の計算だけでは不十分)の知識

があげられます。これらの知識が不足している人は、その知識が必要になった際に、適宜教科書を参照すると良いと思います。特に、解析学の知識に関しては、経済学部に所属している(いた)人の場合、不足していることがあると思うので、そのように進めると良いと思います。ただし「〇〇を学んでから本書を読み進めよう」というのはお勧めできないです。それをやると、本書を読み始める前に卒業・修了してしまうと思います。「本書を読んだ初学者が短い期間で既存の研究者を乗り越え、それを上回る成果を発信し始めることを期待している」と本書のはしがきにある通り、まず読み終えることをお勧めします。

本書を読み終えて

本書を読み終えて、内容を全て理解できたというとそうではないです。まだまだ理解できない部分はあるのでそこはもう一度読み直したり、プログラミングコードをみて、理解に努めようと思います。また、近日中に身内でこちらの本の輪読を始めるので、そちらの方でより理解を深めていきたいと考えています。

また、本書の内容は、論文を読む上で有益なものであると確信しています。というのも、数学的な記述が随所に使用されており、論文とのギャップが少ないからです。また、近年使用されているトピックをカバーしている点もその理由の一つです。

私は現在、ノンパラメトリック・ベイズ的手法による因果推論に興味を持っており、指導教官から勧められた論文を読んでいたのですが、ベースとなる因果推論の理論についてあまり理解できていませんでした。しかし本書のおかげで、基礎の部分に関しては十分に理解できたと確信しています。特に、行列表記による記述は、論文の理解の一助になりました。

最後に

この度は「因果推論の計量経済学」をご献本いただき、誠にありがとうございました。
経済学分野における因果推論について、理論と応用の両面から学べる非常に充実した一冊であり、読了後も繰り返し手に取ることになることを確信しています。本書を通じて得た知識を、自身の研究に活かしていきたいと考えています。

また、初心者にも親しみやすい解説や、Rを用いた実践例の紹介など、非常に参考になる内容で、因果推論を学びたいと思っている多くの方々にもぜひ手に取ってほしい一冊です。この書評が、本書の魅力を少しでも多くの方に伝える助けとなれば幸いです。

改めて、貴重なご機会をいただきましたことに心より感謝申し上げます。

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