読んだ時に共感や驚き、憧れや哲学的な示唆が刺激になった本。
そしてまた読んでみたいなと思える本がある。
サイバー・電脳系で3冊と限定してみたらの前提で簡潔に挙げてみる。
1 The S.O.U.P. (ザ・スープ) :川端 裕人(著) 角川文庫
The S.O.U.P.
ネット社会の落とし穴を、壮大なスケールで描いたサイバーミステリ!
かつて伝説のRPGゲーム「S.O.U.P.」を開発、巨額の富を得た巧。彼はある日、ハッキングに悩む経済産業省の役人・礼子の訪問を受ける。礼子の依頼でハッカーを追う巧が見たのは、変わり果てたゲーム世界だ
主人公は凄腕のプログラマー。セキュリティー、ネットワーク技術にも秀でており、
その一挙手一投足がテンポ良く表現されている。そしてその人物のキャラクターも味がある。
他登場人物のキャラクターも背景描写含めとても優れており、
ネットの世界に沈殿した経験がある人は共感を得ると思う。
仮想世界を構築した3人の1人としての主人公、そしてそのチームのその後、その仮想と現実世界。
この本を読んだ当時はアプリ以外にサーバー・ネットワークの仕事をしたり、
人口知能や仮想世界の広さに興味があったので、表現される言葉の深い示唆に、ある種の共感を感じた。
ハッカー、仮想世界、チーム開発、ゲーム開発、
Unix・ネットワーク、セキュリティ、人口知能に興味がある人はお勧め。
登場人物の背景やメモリ空間の表現については特に記憶に残っている。ここではあえて詳しくは書かず。
2 know :野崎 まど(著) ハヤカワ文庫JA
know
超情報化対策として、人造の脳葉“電子葉”の移植が義務化された2081年の日本・京都。情報庁で働く官僚の御野・連レルは、情報素子のコードのなかに恩師であり現在は行方不明の研究者、道終・常イチが残した暗号を発見する。その“啓示”に誘われた先で待っていたのは、ひとりの少女だった。道終の真意もわからぬまま、御野は「すべてを知る」ため彼女と行動をともにする。それは、世界が変わる4日間の始まりだった―
これはとても面白かった。
読みやすく言葉のセンスも良く、一度読み終えてその構成と設定された個々の言葉の意味が染みてくる。
超情報化対策として、電子葉の移植が義務化された2081年の日本が舞台。
情報の意味、知る事、どこまで知るのか等と問いかけてくる。
恩師と出会い進んでいく道。
転じてそこから世界が変わる4日間。
すべてを知るために。
超情報化社会、人工脳葉、計算処理・計算量、情報材、ソースコード、魅力あるキャラクター、
知ること、について興味がある時に読んでみたい。
また情報材とそのネットワーク等については、
今のIOTや自律分散的な情報処理とも関連があるようで興味深い。
あと主人公が情報材の基底ソースを耽読的に探索・解析する場面では、
ある種のゾーン(極度の集中状態)であり、コードが好きな人には類似共感を得たりすると思う。
3 Project SEVEN :七瀬 晶(著) アルファポリス文庫
Project SEVEN
そう遠くない未来。ネット上にはWWVS(ワールド・ワイド・バーチャル・スペース)というリアルな仮想空間が提供され、「認証局」により一人一人にIDが付与されている―高校生の望月奈々は自分のルーム(仮想部屋)に何者かが侵入した痕跡を発見した。奈々はその世界では「SEVEN」の名で知られる凄腕のハッカーだ。怒りに震える彼女は自らのプライドをかけ、侵入者の追跡を開始する。セカンドライフの未来を予言するサイバーパンクアドベンチャー。
随分前に読んだが、面白かったと記憶に残る。
VR的な仮想空間が一般化している社会にて、リズム感よくサイバーパンクの旅にでるような感じで、
「ハッカーと蟻」といった本よりはライトで読みやすい。
主人公と共に登場するプログラマーも凄腕なのだが、
とても人間味に溢れたキャラクター。
またそのプログラマーが確か所属している会社での社内でのやりとり等もありえそうで、
著者がSEとしての経歴を活かした表現もあると感じる。
サイバーパンク、セキュリティ、ネットワーク、プログラミング、
ハッカー、VS、等に興味がある人にお勧めかも。
白夜書房のハッカージャパンという雑誌(現在休刊中)が好きだった人は多分面白いと思う。