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AWS Summit Tokyo 2023 参加レポート

Last updated at Posted at 2023-05-10

AWS Summit Tokyo 2023 参加レポート

2023年4月の20日と21日に幕張メッセにて AWS Summit Tokyo が開催されました。2日間にわたり様々なセッションを聴講してきましたので、備忘録的に内容をまとめておこうと思います。

そもそも AWS Summit Tokyo とは

日本最大の AWS を学ぶイベントと銘打たれる当イベントでは、Japan AWS 社とパートナー企業により、たくさんの講演や展示、体験ブースが展開されました。
AWS 公式と AWS を利用する企業の最新情報が集まるイベントというわけです。

Day1

基調講演

Day1 の基調講演では、AWSからは AI および ML の話題が積極的にピックアップされていました。
既存サービスとして Alexa やマーケットでの機械学習活用、Amazon CodeWhisperer の紹介などがありました。
最新情報としてフルマネージドな生成系 AI サービス、Bedrock がリリースされたことを強調。学習の基盤モデルとして Amazon Titan
が汎用性に優れるとのこと。
加えて、機械学習に特化した EC2 インスタンスタイプ、 Trn1n インスタンスと Inf2 インスタンスが一般公開されました。
データ活用基盤として、Amazon DataZone(プレビュー)、AWS CleanRooms(プレビュー)が紹介されました。どちらもAI や データ駆動経営をターゲットにしています。

そして企業や自治体からもデータ利活用の実績やビジョンが多数紹介されました。特に、政府デジタル庁がクラウドスマートの方針を発表したこともあり、各自治体はクラウド時代への適応を迫られています。登壇した神戸市と浜松市は積極的かつ具体的なAWS運用のビジョンを提示していたため、しょうがなく導入する自治体とは一味違った未来を感じさせました。今後の変革に期待が持てます。

基調講演では総じて、これからの取り組みよりもこれからのビジョンに比重が集まっているように見受けられました。
最新技術の中でも注目はやはり、AI とビッグデータに集まっているようです。

富士通のセッション

富士通は One Fujitsu プログラムを紹介しました。
これはデータ駆動経営を実現するためのプロジェクトで、リアルタイムマネジメントとあらゆる経営資源のデータ化、グローバルでのビジネスオペレーションの標準化の 3 つの観点で構成されています。

すべての指針において重要となるのが、膨大な社内データの管理になります。そのための基盤として OneData というデータ利活用システムが構成されています。このシステムに AWS が使われているようです。
また、データ活用に向けた人材育成として、データ分析コンペなども行なっているとのこと。

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印象として、かなり具体的にデータ駆動戦略を練ったうえで実践段階に向かっていると感じました。
また、企業の事業規模や動員数が非常に大きいため、データ収集には困らないと予想されます。大企業であるというだけで、データ駆動経営において大きな強みになりそうです。管理の手間も膨大ですがそこで AWS が活躍するのが非常に噛み合っています。

リコーのセッション

リコーは複写機などで有名な企業ですが、現在ではデジタルサービス全般に事業を拡大しています。これらに AI 技術を付加していくビジョンがリコーの発表内容でした。

リコー内では画像や映像の検出系 AI や 3D モデリング、音声系 AI と自然言語処理 AI によるメタバースでの無人接客、その他業務改善やマーケティングに、機械学習を用いる動きがあります。さらに、GPT3 以降の自然言語処理が標準化する近い将来を危惧して、自社での AI モデル学習を進めているようです。

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リコーは富士通と異なり、経営よりもビジネスに近い層での AI 活用を見据えている印象でした。
また、その際自社のサービスが個性を獲得している点が強みに思われます。既存の顧客層に向けて新たな付加価値を提供しやすいためです。
そして、メタバースの開拓は基調講演でも KDDI が触れていました。個々の企業で研究が進んでいった際、どのように社会に影響を及ぼすかが楽しみな分野だと感じます。

NEC のセッション

NEC は、官公庁や自治体が取り組むべきスマートモダナイゼーションとその実例を発表しました。
デジタル庁より、クラウドスマートがスローガンとして投げられました。これに伴い自治体では、クラウドを用いた DX 実現の圧力がかかっています。

NEC の取り組みは、そうした環境でのモダンアプリケーション開発をサポートするものです。
そもそも IT 技術を有していることが前提でない官公庁や自治体では、インフラやソフトウェアやデザインなどで管理が分断されており、クラウドのマネージドサービスを導入するまでの道のりが困難であることを指摘しました。
そのため NEC では、高い汎用性を持つマネージドサービステンプレートを用意し、自治体に提供するサービスをコンセプトに打ち出しました。

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たしかに各自治体がクラウドを実践的に運用するにあたっては、このような IaC テンプレートを用いてアプリ開発するのが手っ取り早そうです。セキュリティ面が設計段階である程度担保されているのは公機関として魅力的でしょう。
一方で、あらゆるアプリにこのような一式そろったテンプレートを用いるのは少し過剰のような気もします。IaC なら必要に応じてインフラを削ることも容易いので、そこまで含またサービスなら素晴らしいと思いました。税金が AWS の過剰リソースに注がれまくることだけが不安です。

ニンテンドーのセッション

ニンテンドーでは、ニンテンドーアカウントのリノベーションに当たってのこれまでの取り組みが紹介されました。
そもそもニンテンドーアカウントとは、任天堂のゲームやマーケットを利用するためのアカウントであり、スマートフォンやゲーム機などで使用します。現在 2.9 億もアカウントがあり、164 の国と地域で利用されています。私も使っています。

当サービスは 2015 年にサービスが開始されました。当初は EC2 上に Perl で実装したものを動かしていたそうです。しかしユーザーが順調に増えていった結果、トラフィックが増加したこと、予測不可能なスパイクが発生するようになったこと、運用工数が増加、IaaS 人材の不足、ノウハウの属人化、Perl の魅力が低下、などたくさんの問題が顕在化しました。これがリノベーション発足の経緯です。

実行に当たっての目標は、サービス継続性を高めること、新規開発を今後も継続すること、無停止でリノベーションを完遂することでした。
インフラ面での変化として、ほとんど EC2 上でコンポーネントを動かしていた従来に対して随所にマネージドサービスを導入しました。そして段階的に EC2 から Fargate への移行を成功させました。
また、ニンテンドーアカウントの運用環境が極めて多く存在するため、AWS CDK を用いて負担を軽減しました。

また、移行の特徴として、開発チームとリノベーションチームを分離したうえで、各サービスのチームへのノウハウ引継ぎがしっかり計画されていました。リノベーションを起こす段階で属人化を割ける目標が設定されていた点が生きています。

感想として、AWS 環境への移行例としてかなり参考になるものだったように思います。DX 推進に当たってどの企業でも抱えるであろう課題が明確にスポットされ、きれいに解決されていた印象です。自分が使っているサービスの裏話みたいな形で聞けたので、個人的にそれも嬉しいポイントでした。

Day2

基調講演

Day2 の基調講演では、データ利用に強くフォーカスした内容でトークが展開されました。
データ分析におけるキーワードとして、ZeroETL、そしてデータの民主化という言葉が出てきました。

Extract(抽出)Transform(変換)Load(格納)という 3 つのステップが、データ分析のハードルになります。これを極力なくすためのサービスとして、Amazon Aurora with Red Shift が紹介されました。
また、データの民主化というのは、専門家に限らず誰でもデータ分析を行なえる環境を目指すことです。
ビッグデータをそこかしこで扱う現代テクノロジーにおいて、煩雑な権限管理を担える点でもクラウドサービスは優秀ですね。

Day1 からデータ駆動経営の話題は多く見られ、AWS 公式としてデータ活用の指針を持っているのは頼もしいなと感じます。
どんどんマネージドサービスで運用コストが下がれば、規模や技術力によらず様々な企業でビッグデータを取り扱えることが期待できます。

キンドリルのセッション

キンドリルはメインフレームモダナイゼーションの課題を整理し、実現例を紹介しました。

多くの企業で DX が失敗する理由として、予算の超過、複雑性、移行先環境での品質低下などが挙げられます。
より抽象的な原因に、アプリ部門と基礎部門の分断、運用影響の分析不足、データ連携の調査不足があり、課題として人材育成、ツール比較、移行後のシステム運用計画があります。キンドリルの主張では、「アプリケーションに加えインフラや運用要件を網羅的に把握し、適切なアプローチとプラットフォームを選択。複数のツール、手法、およびプロセスを使用し漸進することが重要」としています。そのための指針が以下の 3 つです。

  • Modernize On
    プラットフォームの最新の機能を実装して活用することにより、メインフレーム上のアプリケーションを変革する
  • Integrate With
    メインフレーム上のアプリケーションをモダナイズし、他のプラットフォームのアプリケーションや既存のアプリケーションと統合する
  • Move Off
    さまざまなアプローチを使用してメインフレームのアプリケーションを完全に他のプラットフォームで稼働させる

このような変革を、ワークロードやアプリケーションごとに適切に当てはめていくことが必要です。
キンドリルでは、このようなモダナイゼーション実施をサポートすることを自社の価値としてアピールしました。

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テクノロジーの話題としては抽象的に感じましたが、ノウハウの重要性が腑に落ちる内容でした。
自社ではどうなんだという話ができるほど自身の経験が身についていないのが歯がゆいところです。

ソニーのセッション

ソニーのテーマは、映像制作領域へのクラウド上での AI 活用でした。サービス名は CREATORS'CLOUD です。
事業者向けと個人向けで、こまかいサービス群に分かれます。

  • M2 Live(クラウド中継システム)
  • Callsign(スマホインカムサービス)
  • C3 Portal(クラウドカメラポータル)
  • Ci Media Cloud(クラウドメディアストレージ)
  • NavigatorX Cloud(ワークフローソリューション)
  • A2 Production(AI 映像解析サービス)

紹介されたサービス名はこれらのものでした。コンテンツの提供ルートや敬体の多様化、また俊敏性や正確性というニーズに答えます。

映像に関する AI 技術例としては、姿勢推定、トラッキング、物体検知、文字認識などが挙げられました。また、音声についても、音声認識、特定音検出、音源分離、ノイズ除去がピックされました。実際の活用事例として、スポーツのハイライト作成が紹介されています。

また、個人向け特化の動画編集クラウドサービスとして、Master Cut(beta)が紹介されました。上記の AI 技術が個人レベルで使えるものです。

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エンタメ国内最大手企業の貫禄を感じさせられました。映像関連だけでこれほどの技術が投入されるのはすごいことだと思います。手広く活躍しているところですので、ここで培った技術や収集したデータは他の分野でも存分に活かされるのでしょう。期待が高まりました。

AWS 公式 アーキテクチャ道場

アーキテクチャの課題が出題され、それに AWSJ の方が回答を発表するセッションでした。問題は 2 題ほど出され、どちらも私としてはかなり難しい出題だったと感じました。セッションはものすごい人気で、定員の 1.3 倍もの人が聴講していたように見受けられました。
カメラで画面を撮れる場所で聞けなかったため出題や回答の記録がなく、かいつまんで感想だけ述べたいと思います。

まず、2 題とも問題設定が複雑でしたが、最初に課題を切り分けることが重要でした。マネージドサービスを採用するだけで解決するポイントと、アーキテクチャを相当工夫しなければならないポイントが混在する問題設計だったので、まず簡単な課題を分離しなければ手が出せない、という印象です。

次に、困難な問題に対して先に使用サービスを限定しないアプローチが特徴的でした。
解決のために、まず必要な機能だけ限定して設計を考えます。サーバーはコンテナがいい、などです。
機能面だけで要件を満たす設計が出来上がったら、そのあとで機能からベストプラクティスに沿ったサービスを選定していました。
中途半端に AWS をかじっていると、課題を見たときにまず"どのサービスが有効そうか"を考える癖が身についているように感じます。しかし実際は要件と機能に向き合う段階を充分に確保しなければ、最適なサービスは選べないと学びました。
中級資格では要件が具体的に租借されているため、資格勉強で生まれた盲点だったなと痛感した次第です。

最後に、難しい要件を考える際には、シンプルにアプリ開発者やインフラエンジニアとしての知識、技術がものを言うなという感想があります。クラウド技術でフルスタックエンジニアになろう、というのもそう簡単な話ではないと思い知らされた次第です。勉強することはたくさんありますね。

その他小話

  • AWS Jr. Champion の表彰を受けてきました。人がたくさんいてすごいことになっていました。
  • AI 制御によりミニ四駆を平面上でカーブさせるレース、DEEPRACER の大会をチラ見しました。これもすごく盛り上がってました。技術を突き詰めてタイムを縮める競技シーンはかっこいいですね。大好きです。
  • セッション以外にも各企業が展示のブースを出していました。中にはくじ引きやらお菓子配りやらもあり、縁日のようになっていました。開催公式側でも飲み物とお菓子、早期入場者特典でお弁当まで配られており、お祭り感が楽しかったです。

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まとめ

2 日間に渡って AWS 公式や国内企業の発表を拝見してきました。
公式の姿勢は一貫して「これから〇〇が重要な時代で、△△が必要になるのでそれを用意しました」でした。何が必要になるか、に対する嗅覚が常に説得力を持っており、たしかにそれ欲しくなるなと感じさせる講演内容となっていました。
一方で企業のセッションは、今までにやった取り組みの紹介、今売り出したい取り組みやサービス、そして今後の発展のために今やっていることにジャンルが分かれていました。技術を学ぶ身としては、今までとこれからの話が特に聞きたかった話になります。
今までの事例では、いかにクラウドアーキテクチャに適応してきたかが焦点になります (AWS のイベントなので当たり前ですが)。そしてこれからを見据えた際には、公式も一般企業も共通してデータ利用と AI に注目しています。イベント全体を通じて、クラウドを導入するこれまでと AI 時代に突入するこれからを強く感じる形になりました。乗り遅れず勉強に励みたいと思います。

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