RSGT(https://2021.scrumgatheringtokyo.org)
で自身が参加したセッションのメモ&ふりかえりです。
ふりかえりの手法は、びばさんが配信しているPodcastである、ふりかえりAM ep.4(カンファレンス用のふりかえりをする例)で紹介されていたFun Done Learnを参考にしています。
概要
- 野中郁次郎さん
- Day3(1/8) 15:15~15:35
- この一年をどう乗り切るかというエールを送る
気になった内容メモ
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人間臭い日本発の経営戦略論を考えたい。
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グローバルの経営の流れ
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2019年7月 「新啓蒙」会議(Adam Smith(国富論)の邸宅で開催)
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資本主義の道徳論
人間の倫理が大切。利益と利他を両立させる「共感」こそが重要
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株式価値最大化の否定
倫理があくまでもベースになった上での株式価値最大化だったが、倫理を汲まない間違った流れで株式価値最大化に向かってしまったので、バランス感覚を取り戻したい
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顧客第一主義
ダイナミックケイパビリティとアジャイルマネジメントが生き残りの鍵になる
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従業員の復権
ヒューマン・リソースの否定。人間は資源ではない。資源を主体的に生み出すのが創造体としての人間
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日本の経営の原点はワイズ・キャピリズムに貢献してきた。(ワイズ・カンパニーの出版は、日本がワイズ・キャピタリズムに貢献しているんだというプライドの基、出版した本)
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知識を創造するという法螺を吹いたのは日本人が最初。その後、シビアな状況で生まれるような直観を大切にしよう。という考え方に変遷した。
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現代の日本経営の危機
- 過剰分析
- 論理的分析が極めて支配的になってしまっている。
- マイケル・ポーターの分析的競争戦略論(科学的にマーケットを分析し、戦略を導出する)は、不確実な環境(ダイナミック)には機能しなくなる。もっと人間臭い戦略論が必要なはず。
- 過剰計画
- 過剰規則
- 過剰分析
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「日常の数学化」の危機
- 主観的(経験の質を問う) < 客観的(数式による量を問う)になっているのでは?という
- こっちがベースになるのでは?暗黙知という概念が根源にある。
- 五感を駆使して見える姿が現実であり、経験の質(意味)が関わってくるんだという考え方
- 主観的な経験が最初にあるはずなのに、直近の経営は「ROIXX%」という数値が支配してしまっている。(意味づけを行わなずして数値化することに何の意味もない)
- 科学の基礎はあくまでの主観的な経験にある。
- 人間の認知能力は蟻である。情報処理能力には限界がある。環境が複雑だから複雑に処理をしているように見える。
- 意味の源泉は感覚にある
- 名前のつけられない質が、直観から生まれる
- 主観的(経験の質を問う) < 客観的(数式による量を問う)になっているのでは?という
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身体性の復権
- 身体は相互行動に伴う意味生成の場である
- 身体化されたこころ
- 顔を見れば先読みできる
- ミラーニューロンの発見
- GRITの重要性
- 人間の知能を測るインディケーターとしたIQは不適切
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マイクロソフトのAIフィロソフィ
- AIが普及する未来だからこそ、エンパシーが最重要。(エンパシティック・リーダー)
- 会議はKPI等で分析する形式論理型の脱却が必要。一人一人が自身の想いや人生経験を語る
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知識を個人ではなく組織で作る重要性
- ナレッジ・クオリティ・クリエイティング・カンパニー
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知識を創造するプロセスこそイノベーション
- イノベーションは知識を創ることだ
- 知識とは、人と人の関係性の中で作られるものである。自己の信念(主観)を「真・善・美」に向けてダイナミックに作るべき
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マイケル・ポラーニが提唱した暗黙知という概念
- 「知る」とは個人的ではない。全人的知識であり、それこそが暗黙的
- コミットメントする際に、主観と客観, ARTとScienceのバランスを取ることこそが大切
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野球で考える知の作法
- 長嶋茂雄は暗黙知の塊 「きた球を打つんだ」「音がぴっぴとする」
- 野村克也は論理的に命題を語る
- ヤクルトでは知性があり、面白いように浸透
- 阪神では知性がなく、全く浸透しない
- 野村監督の例から分かるように、環境のコンテキストによって取るべきバランスが異なる
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共感と対話~本田宗一郎の本質直観~
- バイクについて、手で振動を感じ、耳で音を聞いて、エンジンのにおいをかぐ。五感を通してバイクを直観的に理解する。
- 目と目を合わせ、徹底的に感じたことを話し合う。相手の視点に立ち、直感的理解を言語化して共感を探る。何とか相手の立場になって、忖度せずに対話する
- 上記流れ(個人の知識創造ではなく集合知)はホンダの行動規範になっている。
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人間だれしもが感じるような普遍的な直観が、社会や組織, チームを生き生きとさせる。
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SECIモデル
- 暗黙知から形式知へ(知識創造企業に記載されている内容なので詳細は省略)
- 認知症を直す薬を開発しようとしているエーザイの事例
- 高齢者を体験して共感し、開発会議で表出化し、市民フォーラムで凍結化して内面化する。
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OODAループ
- 観察-適応-意思決定- 行動- ループによって、意思決定を実現
- 戦争という人命がかかった状況で必要になるアジャイルな考え方。
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実践知リーダーシップ
- フロネシス(過去と未来の「より良い」を観察して、最善の判断と行動をダイナミックに洞察する)
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SECIモデルを持続的に回していく(知識の規模と質がスパイラルに上がっていく)ことで、組織の知的機動力が増幅され、実践知の形にしていく。(共通善へ向かっていく)このスパイラルを回すことこそが、今後求められるリーダーシップである。
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ワイズカンパニーの基盤(共通善・存在目的)
- 分析じゃない。生き方こそが戦略の根本である
- イソップ寓話のレンガ職人のメタファー(親方に言われているからやっているんだ⇒金がもらえるんだ⇒後世に残る大聖堂を作っているんだ)
- 伊藤忠商事 : 三方良し
- 清水建設の社是 : 日本的経営には歴史的に共通善を志向する目的が埋め込まれている。今こそ知識を創造しよう。
- Fujitsu Way : 挑戦・信頼・共感(共感の本質は、相手の視点に立って悩むことであり、忖度することではない)
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ブーバーの出会い
- 人間は関係性の中で人になる
- 1人称⇒2人称(対面で共感する客観)⇒3人称(組織で共有する客観)
- 利己と利他を結びつける2人称の重要性
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二重の相互主観性
- 能動的相互主観性
- 我-それの関係性
- 受動的相互主観性
- 乳幼児の時期
- 能動的相互主観性
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同じコンテキストの基、無心になるまで二重の相互主観性について知的コンバット(デイビッド・ボームの対話)を実施することが大切。危機分析をしているだけではダメだ。
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共感(エンパシー)と同感(シンパシー)
- 最初にエンパシー(無意識に実施される。他者の視点になりきる)、次にシンパシー(客観的に観察する)
- 共感は他者の関心に目を向けることである。自分の関心に振り回されて相手の気持ちに同調することではない()
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知的コンバットの実例
- ホンダのワイガヤ(無心となるための知的コンバット)
- 合宿(個人と個人をぶつけあう⇒相互理解する⇒相互主観を形成)
- ジェット機を通してぶつかり合う
- アイリスオーヤマ(https://www.irisohyama.co.jp/news/2014/0218.pdf)
- 経営トップ/生産技術/品質管理など、管理者が集まり即断即決する。
- 稟議を行わない
- 失敗したら会社の責任。成功したらリーダーのお陰
- ものづくりの機動力が重要(マスクが足りない時期の前に既にマスクを製造していた)
- ホンダのワイガヤ(無心となるための知的コンバット)
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クリエイティブ・ペア
- 知識創造のプロセスにはペアで活動することが必要不可欠(異質なもの同士のカップリング)
- 野中先生と竹内先生(フィーリングの野中先生と論理的な竹内先生)
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自律分散系組織による全員経営(https://www.amazon.co.jp/dp/4532319846)
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アジャイルと野中先生の話の関連性
- The new new product development game
- Scrumの誕生
- バトンパスでは上手くいかない。全体としてボールを押すスクラムで新製品を開発せよ。
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SECIモデル
- 「暗黙知」⇔「形式知」の相互変換
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ワイズカンパニー
- 倫理と賢慮がアジャイルソフトウェア開発時代のリーダーシップになる
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失敗の本質/アメリカ海兵隊/知的機動力の本質
- 消耗戦ではなく機動戦へ
- フラクタルな組織構造とOODAによる行動様式の定義
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知的機動力組織の重要性
- 陸・海・空の三位一体(MAGTF-アメリカ海兵隊-)
- 「あなたたちはなぜイノベーションを起こし続けられるの?」に対する回答⇒予算はないが、「われわれはなぜ存在するのか?」を考え続けている。パーパスやWhyを考え続けている(考えることにお金はいらない)
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戦略の本質「賢慮資本主義」の時代へ
- 始めにあるのは「想い」「Why」
- いきなり理論から始まらないでしょ
- 人間の生き方の物語
- それぞれの意見に共感せよ
- 新しい現実を共創する
- 始めにあるのは「想い」「Why」
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ナラティブ(物語)における筋立て
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冒険的筋立て(こういう苦難があるけどこういう風に乗り越えていこう)
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プロット(わくわくする筋書き)とスクリプト(典型的な行動指針)
- 京セラ : 技術的体系ツリーがプロット。ものごとの本質を見極めろ」や「渦の中心になれ」という話がスクリプト
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スクラム(アジャイル)とは生き方だ。(by ジェフ・サザーランド)
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フラニクルなスクリプトの存在が今後の鍵を握る
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デジタルとアナログのバランス(ダイナミクス)が重要
- デジタルの弱点は、「いま・ここ」の共同化ができないこと
- 雑談で文脈共有
- Face to Faceのコミュニケーション(バランスを取る)
- 幅のある現在 : 現象学的時間
- 主観的時間には幅がある(ドレミの歌を聞いた場合、レの音からドという過去とシという未来が見える)。過去は身体記憶として「いま」に臨在している
- 客観的な時間には幅がない。タイムボックス。
- デジタルの弱点は、「いま・ここ」の共同化ができないこと
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「書く」ことの重要性
- 「書く」ことで事実の記録以上の意味を持つことができる。「コトバ」の意味を知り、自身の感覚に閉じられた暗黙知を言語化し、世界を新たに創発する
- 自分に向き合い深く内省することで、「新たな意味の相互作用」という新時代の知の創造プロセスに挑戦
- 深く考えるとペンが動く
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暗黙知と形式知は二項対立関係にあるものではない。二項動態にある。
- 暗黙知と形式知は両立し、全体の調和を追求する。
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知的体育会系(身体化された心)になるべき。身体と知脳のバランスを取るべき。
- 冷静な頭脳 - 温かい心
- 抽象的理論 - 具体的行動
楽しかったこと
- 野中先生の話が生で聴けるとは...!
- Discordのすごい盛り上がり(一言一句に凄い人数が反応。。)
- 野中先生のぶっちゃけ話w(私の本は読んでも分からないから売れない。だって私も何も分からないんだもん)
- きょんさんの話とつながりすぎて感動
- 野中先生のあふれ出る素晴らしい人間性
- 野中先生から「頑張ってください」とのエールをもらった
やったこと
- アウトプットを意識しながら話を聞いた
- Discordを追いながらメモを書いた
- 平鍋さんの前日の講演を予習してから聞いた
学び
- ソフトウェア開発における基礎的教養の重要性
- 多種多様な学問と文献とのリンク
- バランス感覚の重要性(人の直観と理論)
- バランス感覚は、人の心を直観し、他者と共感することから始まる
- 分かる部分だけでも文章にすることの重要性
- 「Why」から始めることの重要性
- 野中先生の研究とアジャイル開発の関連性