2022年05月02日、ITmediaの記事で、NHKプラスの動作環境が変更されると同時に、これまでサポート対象外だが利用できていたFirefoxでの動画の再生ができなくなると報じられた。この変化が適用されるのは5月23日以降だというが、これでいいのだろうか。最近ではPayPay銀行もFirefoxを推奨環境から外すなどの動きがあったたが、ここではメジャーなサイトでFirefoxがサポートされなくなることの問題点を挙げていこうと思う。
ブラウザの寡占化
現在、世界のデスクトップブラウザのシェアはGoogle Chromeが約66%を占め、次いでMicrosoft EdgeとSafariが各10%、Mozilla Firefoxが約8%となっている(出典:statcounter Desktop Browser Market Share Worldwide Apr 2021 - Apr 2022)。モバイルも含めた全体シェアではSafariとEdgeの順位が逆転し、Firefoxのシェアがさらに少なくなっているが、やはりChromeが圧倒的なシェアを占めている。
この状況でFirefoxのサポートを切った場合、SafariはMacOSやiOSでしか使えないので、WindowsユーザーはChromeかEdgeを使わなくてはならなくなる。この2つはChromiumベースでありレンダリングエンジンも共通なので、Chromium系の独占が一層進むことになってしまう。
これの何が問題なのかは「腐っても豆腐のいろいろチャンネル」さんが動画で解説されているので見てみることをおすすめする。
シームレスなユーザー経験の阻害
ChromeやFirefoxなど主要なブラウザはパスワードやブックマークの同期機能を持っており、同じブラウザを複数端末で使っていれば同じサービスにすぐログインできたり、よく使うサイトをすぐ開けたりして便利である。今までFirefoxをメインで使ってきたユーザーが、Firefoxで利用できないサイトにアクセスするためだけにブラウザを使い分けたり新しいブラウザに乗り換えたりするのは面倒であり、利便性を損なってしまう。
UbuntuなどのLinuxユーザーの軽視
UbuntuなどのLinuxディストリビューションの多くはFirefoxをデフォルトブラウザとしてプリインストールしており、これを使うユーザーが多い。Chromeと中身がほぼ同じChromiumブラウザをインストールすることもできるが、上記の通りFirefoxで使えないサイトがある場合、利便性を損なってしまう。
NHKの公益性という観点からの疑問
NHKは「公共放送」であり、少数派への配慮や多様性の担保を考慮した運営が必要であると考えられる。そのためFirefoxをメインとして使用するユーザーに不便を強いるサポート切りには疑問を感じる。
国が懸念するOSの寡占状態の助長
最近、国はOSの寡占状態について懸念の声を上げているが、ブラウザはOSとの結びつきが強く、各OSにはOS開発元が開発したブラウザがプリインストールされていることが多い。例えばAndroidにはChrome、WindowsにはEdge、iPhoneやiPadやMacにはSafariと言った具合だ。そして多くのユーザーはOS標準のブラウザを使うのでOSの寡占はブラウザの寡占ともつながっている。Firefoxのサポートを外すことはブラウザの寡占状態の助長につながるため、国の考える寡占解消に逆行することになってしまうと考える。
まとめ
以上の観点から、私はNHKがサポート環境からFirefoxを外したのは懸命な判断ではないと考えている。では我々には何ができるだろう。NHKは「NHKや番組についてのご意見・お問い合わせ」から意見を募集している。ここにFirefoxをサポートしてほしいという要望を多くの人が送れば、あるいは状況が変わるかもしれない。ぜひやってほしいと思う。