APBS GUIについて
PyMOLのバージョンが2になってからバイナリ版PyMOLの配布が始まりました。このバイナリにはいくつかの有名なプラグインがプリインストールされており、特に何も設定をしなくてもそれらの機能を使うことができるようになっています。しかし、バイナリ版はライセンス制になっているため、自由に使い続けることはできないかもしれません。ただし学生ならばEducational Licenseを利用することもできます。
一方で自身でビルドしたopen-source版PyMOLはライセンス制限がない代わりに、APBS GUIのプラグインが同梱されていないため、一見APBS GUIの機能を使うことはできないように見えます。しかし、以下の方法であればその問題をクリアすることができます。
とはいえ、そこそこ手間がかかるので、ふつうは各OSで配布されているバイナリ版のAPBS GUIを使ったほうがいいです。ただ、このやり方をマスターしておけば、macOSだけでなくどのOSでもPyMOL+APBSができるようになると思います。
環境
- macOS 14.5 (Sonoma)
- ターミナルからHomebrewをインストールしてある
- macOS/CentOS 7/Ubuntu 22.04へのオープンソース版PyMOLのインストール方法などを参考にしてオープンソース版のPyMOLをインストールしてある
APBS, PDB2PQRのインストール
やり方は3通りあって、Homebrewを使う方法と、バイナリインストールとソースコードからのインストールがあります。macOSの方はHomebrewの方法を使うほうがおすすめです。また、近年のApple Silicon (M1チップ)搭載以降のmacbookなどでも唯一apbsを使うことができます。ソースコードからのインストールの方法は上級者向けです。
一応、M1 MacでもSchrodigerのウェブサイトからPyMOL 3.0のバイナリをインストールしてくると、中にAPBSバイナリが同梱されているので、それを使うこともできます。
APBS, PDB2PQRをインストールする(おすすめ)
macOSまたはLinuxを使っている方は、私が作成したHomebrewのFormulaを使うことで簡単にインストールすることができます(2024年7月29日以降)。
brew install brewsci/bio/apbs
これにより、/usr/local/bin/apbs
(M1 mac以降は/opt/homebrew/bin/apbs
)をインストールすることができます。
PDB2PQRはPyPIからpipコマンドでインストールすることができます。
python3 -m pip install pdb2pqr
python3
の部分は使っているPythonのバージョンに合わせてpython3.11
, python3.12
などに変更してください。2024年7月時点でのPython 3の最新バージョンは3.12ですが、3.12からはpipコマンドを使ったインストール(python3.12 -m pip foopackage
でのインストール)の推奨ルールが大きく変化しました(2023年10月頃から?)。具体的には、それぞれの作業ディレクトリに仮想環境を構築して、その中でモジュールをインストールすることが推奨されるようになりました。これにより、異なるプロジェクトで異なるバージョンのモジュールを使うことが容易になり、また、モジュールの依存関係が壊れることを防ぐことができます。
Python 3.11までの場合は、作業ディレクトリごとの仮想環境構築を行わずに従来通りpython3.11 -m pip install foopackage
が使えます。なので、
brew install python@3.11
python3.11 -m pip install pdb2pqr
の方が今はまだ楽かも?
APBS GUIプラグインのインストール
オープンソース版PyMOLはバイナリ版と違い、GUIプラグインがあらかじめインストールされていません。
しかしバイナリ版のプラグインのディレクトリをそのままオープンソース版の方のディレクトリにコピーしてくれば使用することができます。
このGUIプラグイン部分は私のGithubにコピーして置いてありますので、それをオープンソース版PyMOLのプラグインディレクトリに追加してやります。ターミナルを開いて
# pymolpluginディレクトリをダウンロード
cd ~ ; git clone https://github.com/YoshitakaMo/pymolplugin.git
# ファイルをオープンソース版PyMOLのプラグインディレクトリに追加(macOSのHomebrewで入れた場合)。
# $(brew --prefix)/はIntel Macの場合は/usr/local/に、M1 Macの場合は/opt/homebrew/に自動変換されます。
cp -rp ~/pymolplugin/* $(brew --prefix)/opt/pymol/libexec/lib/python3.12/site-packages/pmg_tk/startup
# ここでPyMOLを立ち上げてみて、プラグインがインストールされていればOK
# インストールできたら~/pymolpluginディレクトリは削除してOK
rm -rf ~/pymolplugin
と入力します。このコピーを行った後にopen-source版PyMOLを立ち上げると、上部メニューのPluginのところにAPBS Electrostaticsの文字が現れているはずです。
この文字をクリックし、Advanced Configurationのタブをクリックします。このProgram Locationsを自身の環境にあわせて設定する必要があります。
HomebrewでAPBSとPDB2PQRをインストールした場合は、上図のようにapbsの欄を/usr/local/bin/apbs
にし、pdb2pqrの欄を/usr/local/bin/pdb2pqr
に設定します(M1 mac以降は/opt/homebrew/bin
になります。)。もしソースコードからインストールした場合にはこの限りではありませんので、適切なapbs, pdb2pqrバイナリ本体へのpathを指定しましょう。
他の部分は特に変更する必要はありません。これで右下のrunを押せばめでたくAPBSが動くはずです。