APBS GUIについて
PyMOLのバージョンが2になってからバイナリ版PyMOLの配布が始まりました。このバイナリにはいくつかの有名なプラグインがプリインストールされており、特に何も設定をしなくてもそれらの機能を使うことができるようになっています。しかし、バイナリ版はライセンス制になっているため、自由に使い続けることはできないかもしれません。ただし学生ならばEducational Licenseを利用することもできます。
一方で自身でビルドしたopen-source版PyMOLはライセンス制限がない代わりに、APBS GUIのプラグインが同梱されていないため、一見APBS GUIの機能を使うことはできないように見えます。しかし、以下の方法であればその問題をクリアすることができます。
とはいえ、そこそこ手間がかかるので、ふつうは各OSで配布されているバイナリ版のAPBS GUIを使ったほうがいいです。ただ、このやり方をマスターしておけば、macOSだけでなくどのOSでもPyMOL+APBSができるようになると思います。
環境
- macOS 10.15.7 (Catalina)
- ターミナルからHomebrewをインストールしてある
- macOS/CentOS 7/Ubuntu 18.04へのオープンソース版PyMOLのインストール方法などを参考にしてオープンソース版のPyMOLをインストールしてある
APBS, PDB2PQRのインストール
やり方は3通りあって、Homebrewを使う方法と、バイナリインストールとソースコードからのインストールがあります。macOSの方やLinuxbrewが使える方はHomebrewの方法、またはバイナリをダウンロードしてきてインストールするのが楽です。ソースコードからのインストールの方法は上級者向けです。
HomebrewでAPBS, PDB2PQRをインストールする(おすすめ)
macOS(Linux OSの場合はLinuxbrewが必要)を使っている方は、私が作成したHomebrewのFormulaを使うことで簡単にインストールすることができます。
brew tap brewsci/bio
brew install apbspdb2pqr
これにより、/usr/local/bin/apbs
, /usr/local/bin/pdb2pqr
を利用することができます。インストールできたら下記APBS GUIプラグインのコピーの項へジャンプしてください。
バイナリをインストールする場合
https://github.com/Electrostatics/apbs-pdb2pqr/releases にアクセスし、まずAPBS-1.5.dmg
をダウンロードして展開し、APBSのバイナリを /Applications
フォルダに入れておきます。これだけ。
次にpdb2pqr-osx-bin64-2.1.1.tar.gz
を同じページからダウンロードしてきて、ダブルクリックで解凍します。これだけ。
ソースコードからインストールする場合
brew install git # if not installed
brew install cmake # if not installed
git clone https://github.com/Electrostatics/apbs-pdb2pqr.git
cd apbs-pdb2pqr/
git submodule init
git submodule update
cd apbs
mkdir build
cd build
cmake .. -DCMAKE_BUILD_TYPE=Release -DBUILD_DOC=OFF -DBUILD_SHARED_LIBS=OFF -DCMAKE_INSTALL_PREFIX=/Users/Agsmith/apps/apbs-1.5
make -j4 install
APBS GUIプラグインのインストール
オープンソース版PyMOLはバイナリ版と違い、GUIプラグインがあらかじめインストールされていません。
しかしバイナリ版のプラグインのディレクトリをそのままオープンソース版の方のディレクトリにコピーしてくれば使用することができます。
このGUIプラグイン部分は私のGithubにコピーして置いてありますので、それをオープンソース版PyMOLのプラグインディレクトリに追加してやります。ターミナルを開いて
# pymolpluginディレクトリをダウンロード
cd ~ ; git clone https://github.com/YoshitakaMo/pymolplugin.git
# ファイルをオープンソース版PyMOLのプラグインディレクトリに追加(macOSのHomebrewで入れた場合)。
cp -rp ~/pymolplugin/* /usr/local/opt/pymol/libexec/lib/python3.9/site-packages/pmg_tk/startup
# ここでPyMOLを立ち上げてみて、プラグインがインストールされていればOK
# インストールできたら~/pymolpluginディレクトリは削除してOK
rm -rf ~/pymolplugin
と入力します。このコピーを行った後にopen-source版PyMOLを立ち上げると、上部メニューのPluginのところにAPBS Electrostaticsの文字が現れているはずです。
この文字をクリックし、Advanced Configurationのタブをクリックします。このProgram Locationsを自身の環境にあわせて設定する必要があります。
HomebrewでAPBSとPDB2PQRをインストールした場合は、上図のようにapbsの欄を/usr/local/bin/apbs
にし、pdb2pqrの欄を/usr/local/bin/pdb2pqr
に設定します。もしソースコードからインストールした場合にはこの限りではありませんので、適切なapbs, pdb2pqrバイナリ本体へのpathを指定しましょう。
他の部分は特に変更する必要はありません。これで右下のrunを押せばめでたくAPBSが動くはずです。