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Pythonで、持ちうる要素数の上限値と下限値が決められた配列リストを表現する自作データ型を定義する

Last updated at Posted at 2020-11-26

##この記事で行うこと

要素の数が、[ある数値以上、ある数値以下]であるlist配列であること、という__型制約__を持つ__自作クラス(自作データ型)__を__Pythonで宣言__してみます。

このデータ型のインスタンスを生成するときに、__コンストラクタに、上記の条件を破る引数を与えると、TypeErrorが発生して、Pythonは処理を終了__します。

なお、__このlist配列は、任意のデータ型のインスタンスを要素に持つことができるという条件__も、おまけに付け加えてみます。

さらに、__複数の異なるデータ型のインスタンスを要素に持つことも許容__します。

__上記の条件をすべて満たすデータ型__を、Pythonで定義して、使ってみます。

( 関連記事 )


##( 必要な外部資源 )

ここでは、以下のGitHubリポジトリにあるPython用のモジュール__をgit clone__して、利用します。

(GitHubリポジトリ)vixrant/python-type-theory

Terminal
% git clone https://github.com/vixrant/python-type-theory
Cloning into 'python-type-theory'...
remote: Enumerating objects: 79, done.
remote: Counting objects: 100% (79/79), done.
remote: Compressing objects: 100% (61/61), done.
remote: Total 79 (delta 36), reused 50 (delta 18), pack-reused 0
Unpacking objects: 100% (79/79), done.
% 

####( 実行環境 )
・ IPython対話型インタプリタ(Python 3.9.0)

git cloneしたPythonスクリプトは、__内部でinspect.getsource()メソッドを呼び出すのですが、Pythonの対話型インタプリタでこのメソッドを使うと、inspect.py, raise OSError('could not get source code')エラーが起きる__ためです。

__iPythonの対話型インタプリタは、このエラーを発生させずに、inspect.getsource()メソッドを使うことができる__ようです。

なお、iPythonを使わずに、Python2系やPython3系を使う場合でも、Pythonのスクリプトファイルを実行する場合は、OSエラーを発生させずに、今回 git cloneしたモジュールを使うことができます。

##では、はじめます。

####( 利用するモジュールのインポート )

Python3.9
from typing import List, Sequence, TypeVar
from refinement import refine, reftype
T = TypeVar('T')

まず、ある条件を記述し、条件を満たしたかどうかを、boolean(bool)値で返すメソッドを定義します。

今回は、MinN( )メソッドと、MaxN( )メソッドという2つのメソッドを定義しました。

このメソッドには、@reftypeデコーダが付されています。
@reftypeデコーダを付けることで、データ型(自作クラス)が定義されます。

Python3.9
@reftype
def MinN(i: int) -> bool:
   return i > 0 

@reftype
def MaxN(i: int) -> bool:
   return i > 0

出来上がるデータ型(自作クラス)は、__上記のメソッドに記述した条件式を満たす値だけを、持つことができる型__になります。

MinN型__とMaxN型__という2つのデータ型(自作クラス)は、以下の条件を満たすインスタンスのみを生成することができます。

条件1. int型の値を持つこと。
条件2. 0より大きい値を持つこと。

上記の2つの条件を充足することを義務付けられたデータ型(クラス)は、__依存型(Dependent Type)__と呼ばれています。

__依存型(Dependent Type)__クラスのインスタンスは、__ある定められた条件を満たすデータ値だけ__を、インスタンスとして持つことを許されます。

Dependent Types と Refinement Types の違い
型をさらに拡張するーーRefinement Typesについて

「型をさらに拡張する」Webページからの引用
先程も述べたように、例えばPositive-Integerであるならば、負の整数に関しては排除されるべきだろう。そのように考えるとするならば、次のような表現だってできるはずだ(以下の例は論文によるものである)

(: max : [x : Int ] [y : Int] ~>
  (Refine [z : Int ]
     (and (>= z x) (>= z y))))
(define (max x y) (if (> x y) x y))

このように、型に属するであろう任意の要素を取ってきて、それに当てはまるかどうかをチェックすることによって、より厳密な型によるチェックが行える。この場合であるならば、「Int型に属するx、及びyは、必ずzというより上位の数を所持している」ということになる(考えてみればわかるように、もし、xやyに、上位のzの数が存在しないと仮定すると、関数定義において、(> x y)という比較は成りたたない)

依存型__は、「項(数値など)に依存して決まる型」と、定義されています。
ここでいう
「項(数値など)」__とは、そのデータ型がとりうる値を厳格に規定する__条件値__のことです。以下に例を挙げてみます。

【 インスタンスが持つことのできる値の制約条件(型制約)の例 】

  1. int型のデータの場合:値の数の範囲(例:「マイナス100〜プラス150」)
  2. str型や*List[T]*型の場合:配列の長さ(要素の数、文字数)の下限値と上限値

__依存型__という言葉は、Pythonの専門用語ではなく、関数型言語などのプログラミング言語の領域で使われている、プログラミング言語論の専門用語です。

__Idris__や__Racket(v6.11以降)__と呼ばれる__プログラミング言語__が、これらの型を宣言し、静的な型検査を行うことができる言語です。

次に、新しいメソッドを定義します。

今度は、定義するメソッドに、@refineデコーダを付けたメソッドの中で、さらに、@reftypeデコレータが付いた別のメソッドを定義します。

Python3.9
@refine
def ListLengthChecker(min_length: MinN, max_length: MaxN):
   @reftype
   def LenLimit(l: list) -> bool:
       return (len(l) >= min_length) and (len(l) <= max_length)
   return LenLimit
   

まず、内側にある*@reftype*デコレータが付いたメソッドは、__データ区間[min_length以上、max_length以下の値]という条件を満たすデータ値のみをとることが許されたデータ型__を、定義するものです。

ここで、__ListLengthChecker( )メソッドの型アノテーションを見ると、min_lengthmin_length__は、それぞれ、MinN型とMaxN型のインスタンスを持つこと、という定義がなされています。

MinN型とMaxN型は、最初に定義された、__「0よりも大きな数値(int)を持つことだけが許容」されたデータ型__でした。

ListLengthChecker( )メソッドには、@Refineデコーダ__が付いています。
ListLengthChecker メソッドに、
@Refineデコーダを付けることで__、新たに__ListLengthChecker型という新たなデータ型(クラス)が定義__されます。

Refinement Typeは、和訳では、__「篩(ふるい)型」と呼ばれています。この型は、「型がとりうる値が、述語で修飾されている型」__という説明のされ方をします。

*Wikipedia(英語)*の定義を引用してみます。

In type theory, a refinement type[1][2][3] is a type endowed with a predicate which is assumed to hold for any element of the refined type. 
Refinement types can express preconditions when used as function arguments or postconditions when used as return types: 

Refinement type

##( 使い方 )

以下の2つのステップを踏みます。

【 ステップ1 】
ListLengthChecker型のコンストラクタに、2つの引数(min_length および max_length)を与えて、ListLengthChecker型のインスタンスを生成する。

【 ステップ2 】
「ステップ1」で生成したListLengthCheckerr型のインスタンスに、任意のデータ型(T)を要素にもつ配列(Sequence)を引数に渡す。

コードで書くと、次のようになります。

Python3.9
temp_func =  ListLengthChecker(min_length, max_length)
result = temp_func(data_list)

上記のコードを実行すると、以下の条件をすべて満たすかどうかが、上記のコードを実行する際に、自動的に型制約チェックが走ります。

条件1. 引数として受け取ったMinN, MaxNは、int型の値を持つか。
条件2. 引数として受け取ったMinN, MaxNは、0より大きい値を持つか。
条件3. 引数として受け取った*Sequence[T]*型のインスタンス data_listの要素の数は、データ区間[min_length以上、max_length以下の値]の数値範囲の中にある値であるか。

__これら3つの型制約(条件)のうち、どれか1つでも満たされない制約があると、上記のコードは、「型制約エラー TypeError」__を吐いて、処理が止まります。

mypyは、Pythonのスクリプトファイルを外側から「型制約チェック」を行いますが、ここでは、Pythonスクリプトまたは、Pythonの対話型インタプリタで上記のコードが実行される瞬間に、コード内部で、上記の「型制約」が充足されているかどうかのチェックが走ります。

それでは、以下のコードを1つのメソッドに包んでみます。

Python3.9
temp_func =  ListLengthChecker(min_length, max_length)
result = temp_func(data_list)

メソッド名として、list_length_checkerという名前を付けてみました。

Python3.9
def LengthRestrictedList(data_list : Sequence[T], min_length : int, max_length : int) ->  Sequence[T]:
    temp_func =  ListLengthChecker(min_length, max_length)
    try:
        result = temp_func(data_list)
    except TypeError:
        error_message = "配列リストの長さが条件を満たしません。"
        print(error_message)
        result = []
    return result

なお、引数として受け取るPythonのlist(配列)data_listの型アノテーションは、typingモジュールの*Sequence[T]*でも、*List[T]*でも、どちらでも構いません。

今回は、data_listの中身の要素は、任意のデータ型を持てるよう許容してみたいと思います。そのため、typingモジュールのジェネリクス(総称型)の「型変数」であるT を指定しています。

data_listの中身の要素を、intstrcallableなどの特定のデータ型のインスタンスに限定したい場合は、*List[int]Sequence[int]*などと、定義します。

Python3.9
def LengthRestrictedList2(data_list : List[T], min_length : int, max_length : int) ->  List[T]:
    temp_func =  ListLengthChecker(min_length, max_length)
    try:
        result = temp_func(data_list)
    except TypeError:
        error_message = "配列リストの長さが条件を満たしません。"
        print(error_message)
        result = []

    return result

##( 挙動を確認 )

以下で見るように、すべてが、意図した通りの挙動を示しました。(成功!)

Python3.9
result = LengthRestrictedList(["a", "b", "c", "e", "f"], 2, 7)

print(result)
# 実行結果
['a', 'b', 'c', 'e', 'f']

result = LengthRestrictedList(["a", 1, "c", "e", "f"], 2, 7)
print(result)
# 実行結果
['a', 1, 'c', 'e', 'f']

result = LengthRestrictedList(["a"], 2, 7)
# 実行結果
配列リストの長さが条件を満たしません

result = LengthRestrictedList(["a", 1, "c", "e", "f"], 7, 10)
# 実行結果
配列リストの長さが条件を満たしません

result = LengthRestrictedList2(["a", "b", "c", "e", "f"], 2, 7)
print(result)
# 実行結果
['a', 'b', 'c', 'e', 'f']

result = LengthRestrictedList2(["a", 1, "c", "e", "f"], 2, 7)
print(result)
# 実行結果
['a', 1, 'c', 'e', 'f']

del result
# 実行結果
result = LengthRestrictedList2(["a", "b", "c", "e", "f"], 2, 7)

print(result)
# 実行結果
['a', 'b', 'c', 'e', 'f']

result = LengthRestrictedList2(["a", 1, "c", "e", "f"], 2, 7)
# 実行結果
print(result)
['a', 1, 'c', 'e', 'f']

result = LengthRestrictedList2(["a"], 2, 7)
# 実行結果
配列リストの長さが条件を満たしません

result = LengthRestrictedList2(["a", 1, "c", "e", "f"], 7, 10)
# 実行結果
配列リストの長さが条件を満たしません
 
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