はじめに
優れたアプリのアイデアはすぐに出てこないものです。
アイデアは降ってくる、とよく言われますが、ただアイデアの降ることを待っているのは趣味どまりであり、結果にはつながりません。
そこで、既存の優れたアイデアを観察し、アイデアとはどのように構成されるか を探り出し、逆算的にアイデアの出し方を探っていきます。
アイデアは掛け算から生まれる
アプリをただ言葉にしても構造化はできないため、そのコアとなる機能を掛け算で表します。孫正義が辞書2つを持ち運ぶ話は有名ですが、それに則ってみましょう。
LINE : メッセージ × 既読
ただのメッセージアプリは(email含め)多数ありましたが、そこに「既読」という概念を足したのがLINEです。
初めこそ3.11における安否確認の意味合いを込めてつけられた機能でしたが、返信までのテンポを測る ことが可能になり、会話にリズムをもたらした重要な機能となりました。
パズドラ : スワイプ × パズル
スマホゲームが現れ始めた頃、それまでは直線的で離散的だったパズルの操作(テトリスやぷよぷよなどを想像してください)に、スワイプによる縦横無尽な操作を掛け合わせたのがパズドラというゲームです。間違いなく スマホの特性を最大限活かした操作性 でした。
パズルとして頭脳を使う点は残しつつ、初期の頃は操作時間が4秒だけと、スワイプにより可能になった俊敏な操作をユーザーに体験させることで、爽快感と緊張感のあるゲームとなりました。
BeReal : カメラ × ゲーム
制限時間以内に写真を撮る というゲーム性が、ただの写真系SNSをここまで大きくしました。もちろん同様のゲーム性を持つアプリは今までもありましたが、BeRealはTVでのCMを打たなかったため、身内でのルール としてこのゲーム性が昇華し、結果としてより強い印象をユーザーに与えたと考えています。
アプリの課題解決としては「自分のありのままを投稿する」ことを謳っていますが、実際のところユーザーはこの 身内ノリ としてBeRealを取り入れたことにより、大きな満足感を伴う体験を届けているわけです。
ユーザーの体験は掛け算からすぐ見えない
さて、上の3つの例を見てもわかるように、掛け算に現れる要素とユーザーの得る体験は全く違います。
当たり前のことですが、使っている技術とそこから得られる体験は等しくないのです。
こう言うと掛け算への分解に意味がなくなりそうに思いますが、実はその逆で、だからこそ掛け算からユーザーの体験までを引き出せる のです。
掛け算に面白さを求めないことです。 その真価を導くのが、アイデア出しで最も大事になるところです。
しかし、使用している姿を想像できない掛け算 をしてもこのようなことはできませんから、ユーザーを想像しやすい形で掛け算を考えるべきです。
アイデアを引き出す掛け算とは
上3つの例を見てみると、どれも スマホ固有の機能×概念 という形をとっています。
この スマホ固有の機能 を考えるのが非常に大事です。これが含まれることにより、掛け算からもユーザーの使っている姿を簡単に想像することができるようになります。
また、結局掛け算からユーザーの姿を後々想像していくので、掛け算は目新しいものほど良いです。
掛け算の時点で新しさを感じないものから良い機能を捻り出すよりも、目新しいものから出していったほうが選択肢が広がります。
機能の例
- カメラ
- 画像認識
- メモ
- AR
- VR
- 時計
- アラーム
- カレンダー
- ストップウォッチ
- 地図
- 天気
- 位置情報
- 加速度センサー
- 明るさセンサー
- ライト
- 通話
- 電卓
- AI
- キーボード
- 通知
いちど頭の中でレビュワーになる
ランダムに機能と概念を選び掛け算をするだけでも良いです。そこから実際にアプリのアイデアが思いついたら、頭の中で触ってみます。
そうすると次第に、こういう機能があって欲しい、こういう画面だったらオシャレだ、などが思いついてきます。それを一つ逃さず言葉にしましょう。
批評家になったつもりで一通りアプリを触り、新規性やUI/UXについて言葉にし、こんな画面/機能が一番重要なものになるだろうと想像します。自分がその時一番大事だと思った機能がメインの機能です。
そのメインの機能同士で戦わせ、優れたものを選びましょう。アイデアは数です。
日常でできるトレーニング
大事なのはインプットとアウトプットです。日常でも手軽に行えるものをいくつか挙げます。
数を出す
何度も言いますが、アイデアは数です。
多数のアイデアの中で勝ち残ったものは間違いなく素晴らしいし、2番手も同様に素晴らしいアイデアとなるため、自分の意見を強く通しやすいのです。
だからこそ、1日1つアイデアを出す、だったり、2週間に一度時間を取ってアイデアを10個出す、などでも効果があります。まずは数を出す練習をしましょう。
(この時、それぞれのアイデアに質を求めてはいけません。自分の中で新しさを持ったものならなんでも一つのアイデアと認める必要があります。)
多くのアプリを言葉にする
多くのアプリに触れましょう。 ランキング上位からダウンロードしていって軽く使ってみて、このアプリがどのような掛け算に分解されるかを考えると素晴らしい勉強になります。
アイデアを出す際に、良い掛け算の分解やアイデアの優劣を知らなければ優れたアイデアを見逃しますし、必要のない時間を要します。
ぱっと見でも良いか悪いか判断できるようになるためには、多くの作品、多くのアイデアに触れるべきです。
まとめ
アイデアは数です。数を出すためには構造が必要で、そのためにこの掛け算がとても有用です。ぜひ掛け算によってアイデアを作っていきましょう!