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Torch.manual_seed(3407) is all you need: On the influence of random seeds in deep learning architectures for computer vision の要約と意味

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下記の論文

Torch.manual_seed(3407) is all you need: On the influence of random seeds in deep learning architectures for computer vision

が、かなり面白そうだったので、o1君に読んでもらってまとめ、また、意味合いについて考察させました。要は、学習の際の初期値によってかなり大きな学習結果の差が出る、と言うお話です。1.8%の精度差はアーキテクチャの差と匹敵するレベルですね😇😅


以下では、論文「torch.manual seed(3407) is all you need: On the influence of random seeds in deep learning architectures for computer vision」(David Picard) の各章の要約、考察、そして生成AIへの影響について述べます。

──────── ■ 第1章(Introduction)の要約 ──────── 本論文では、コンピュータビジョンで広く使われるディープラーニング手法において、乱数シード(random seed)の選択がモデルの精度に与える影響を大規模に調査している。著者は以下の3つの問いを設定している。

  1. 乱数シードに応じて得られる精度分布はどのようになるのか。

  2. 一部の特殊なシード(“ブラック・スワン”に相当する極端に良い/悪い結果を出すシード)は存在するか。

  3. より大規模データセットや事前学習モデルを使った場合、こうした乱数シードによる性能のばらつきは軽減されるか。

この問題意識の背景として、ディープラーニング研究においては計算コストや競争の激しさなどから、単一の実験(単一のシード)での性能のみが報告されることが多く、結果の再現性や統計的な妥当性が軽視されがちである点が挙げられている。そこで本研究では、シードに起因する性能差を定量的に示し、これが研究コミュニティにとってどの程度問題かを検討している。

──────── ■ 第2章(Experimental setup)の要約 ──────── 本研究では、以下の2種類のスケールで実験を行っている。

  1. CIFAR-10

ResNet9相当のコンパクトなネットワーク(カスタムResNet)を用い、約1,000時間分のGPU(V100)計算予算のうち約90時間をCIFAR-10用に割り当てた。

CIFAR-10に対しては2種類の実験を用意:
(a) 「long training setup」:少数のシード(500個)に対して長めに学習
(b) 「short training setup」:非常に多数のシード(10,000個)に対して短めの学習

SGDやラベルスムージングなどを用い、学習スケジュールを工夫している。

  1. ImageNet

学習に膨大な計算時間が必要となるため、事前学習済みモデルを再学習(fine-tuning)するアプローチを採用。

以下の3種類の事前学習モデルで合計50回ずつシードを変えて実験:

通常の教師あり学習で事前学習されたResNet50

自己教師あり学習(SSL)で事前学習されたResNet50

自己教師あり学習で事前学習されたVision Transformer (ViT)

学習は線形層のみの微調整(1エポック)→全層微調整の順で行い、おおむね2〜4時間かけて1シードを学習。合計で約440時間のGPU時間を要した。

──────── ■ 第3章(Limitations)の要約 ──────── この研究にはいくつかの制約があると著者は述べている。

学習が最先端レベルまで到達していない:
CIFAR-10でも完全に最先端の性能には至っていない。またImageNetは事前学習モデルを用いているため、初期重みが固定されており、真にゼロから学習した場合ほどシードの影響が大きいかどうかは検証しきれていない。

計算資源の制限:
著者は1,000時間のV100 GPU計算時間を確保したが、より大規模な実験を行うためにはその数倍から数十倍以上の計算時間が必要になるかもしれない。

結果の外挿:
CIFAR-10程度の中規模データセットから得られた知見と、巨大なニューラルネットワーク(例えば数十億パラメータ)での挙動が同一とは限らない。

しかし著者は、少なくとも本論文で扱った範囲のモデル・データセットにおいて、乱数シードだけでも実務レベルで無視できない差が生じうることを示すには十分であると主張している。

──────── ■ 第4章(Findings)の要約 ──────── ここでは、著者が立てた3つの問いに対応する形で結果を示している。

  1. 乱数シードによる精度分布

CIFAR-10(long training setup)では、最終的に収束した段階で精度を見てもシード間のばらつきが0.5%程度(標準偏差は約0.2%)存在することが分かった。

これは決して極端に大きい分散ではないものの、一回の実験報告で示される性能差としては「有意」とされる場合が多く、単にシードの違いで報告スコアが上下する可能性がある。

  1. “ブラック・スワン”の存在(極端に良い/悪いシード)

CIFAR-10(short training setup)で1万通りのシードを走らせた結果、最良と最悪の精度の差が約1.8%に達した。

研究コミュニティで一般的に「有意な改善」と見なされるほどの差が、単なるシードの運によって生じている。

  1. 大規模データセット(ImageNet)や事前学習の影響

ImageNet(事前学習済みモデルを使った再学習)では標準偏差が約0.1%前後、最良と最悪の差は約0.5%程度だった。

CIFAR-10より差は縮まったが、それでも依然として論文のアブストラクトや研究発表で「改善」として取り上げられる程度の違いがシードのみで生じている。

総じて、シードによるばらつきは「存在するが、平均値や分布を見ると比較的集中している」という結果である。それでもなお、論文のように一点の結果しか示されない場合、この小さな差が過大評価されるリスクがあると著者は指摘している。

──────── ■ 第5章(Discussion=事実上の結論)の要約 ──────── 著者は上記の結果を踏まえ、以下の点を強調している。

再現性の問題
多くの研究では単一シードのみの報告にとどまるが、今回の実験から、乱数シードによる性能のばらつきが「論文1本分の差」として扱われる程度には大きい場合があると分かった。

無意識的なシード探索のリスク
研究者はハイパーパラメータやモデル構造を変えるたびに、意図せずシードを変えていることが多い。結果として「うまくいった」設定が得られても、それが本質的な改良ではなく単なるシードの幸運である可能性がある。

統計的な報告の必要性
今後は、少なくとも複数のシードを走らせ、分布(平均・標準偏差・最小値・最大値など)を報告することで、より信頼性の高い主張にすべきだと論じている。

さらなる大規模実験が必要
実験制約(計算資源)から完全に最先端まで追求できなかったが、この傾向は大規模タスクや複雑なモデルでも同様に起こりうると考えられる。大規模研究やコミュニティ全体での取り組みが望ましい。

以上を踏まえて著者は、ディープラーニング手法の進歩の速度が非常に速い一方で、その再現性と統計的信頼性が十分検証されていないことを懸念している。少なくともシードの違いだけでも、論文投稿時には「改善」として認められてしまう可能性があるため、評価の仕方そのものを見直す必要性を強調している。

──────── ■ 結論の検討と生成AIへの影響 ──────── 本論文の結論より、以下のような示唆が得られると考えられる。

  1. ランダム性の制御と再現性
    本研究で示されたように、ディープラーニングにおいては乱数シードがモデルの性能(とくに小数点レベルの違い)を左右しうる。生成AI(例:GPT系やDiffusionモデルなど)も内部的に初期化やサンプリングに乱数を用いるケースが多い。とりわけ巨大モデルでは学習過程のばらつきが平均化されるように思われがちだが、依然として初期化やデータシャッフルのしかたによって、学習が進む「軌道」が変わりうる。

生成AIでも「たまたま学習がうまくはまった」モデルと「そうでない」モデルで出力クオリティや評価指標が差異を示す可能性がある。

  1. 大規模事前学習モデルのばらつき
    ImageNet事前学習モデルを再学習してもシードによる違いが残ることは、本来は安定しそうな大規模事前学習モデルにも一定のばらつきがあることを示唆する。

ChatGPTや他の大規模言語モデルにしても、微調整(fine-tuning)段階のデータローダーや最終層の初期化などで精度や生成品質に違いが出る可能性がある。

  1. 性能比較・新手法の有効性評価
    生成モデルの分野でも、質の高いサンプルを生成する一例を示すだけではなく、モデル全体としてどの程度の再現性・安定性があるのかを調べる必要がある。

例えば画像生成モデルなら、生成サンプルの分散を評価する、もしくは複数回の初期化でトレーニングした際の品質指標(FIDなど)を平均・標準偏差と併せて報告することが望ましい。

  1. 研究コミュニティへのインパクト
    生成AIは、近年のディープラーニングを代表する大規模タスクであるがゆえ、学習プロセスの不確実性が論文成果の「運」に左右される余地がある。研究を正しく評価するためには、単一シードの結果だけでなく、複数のシードでの統計的指標を重視する文化への転換が必要になるだろう。

総じて、論文が示す「乱数シード一つで精度が大きくぶれるリスク」は生成AIの開発・評価においても十分に注意すべき点と言える。特に大規模モデルが乱数に対して“完全に安定”だと仮定すると、過小評価や過大評価が起こりうる。今後の生成AI研究では、性能報告やアブレーションスタディを行う際に、必ず複数のシードで評価し、平均やばらつきを示すことが研究の客観性・信頼性を高めるうえで必須となるだろう。

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