先の論文「PROOF OF THE COLLATZ CONJECTURE」 (著者:TOSHIHARU KAWASAKI)に関して、o1 pro + DeepResearch君に可能な範囲での検証をお願いしてみました。厳密である保証はないのであくまで参考までに。
以下は専門的な観点から見た「論文本文中で(少なくとも定義として)正しいことがはっきりしている部分」と「既存の数学的常識からみて受け入れがたい/未証明に等しい主張」の整理です。結論としては、文献 [4](T. Tao)の定理紹介や Collatz 関数 の定義など“既知の事実・定義”自体は正しいものの、そこから「不動点定理を応用して Collatz 予想を証明した」という主張には大きな飛躍があり、現時点の数学的常識では到底認められていないか、あるいは証明としては不備があると考えられます。以下にポイントをまとめます。
-
明らかに正しい(既知の)部分
-
Collatz 関数の定義
Cx ;=;
\begin{cases}
x/2, & \text{if x が偶数},\
3x + 1, & \text{if x が奇数}.
\end{cases}
- 「 が奇数なら は偶数になる」 という基本的性質
したがって奇数 に対しては
C^2(x) ;=;\frac{1}{2}(3x+1)
- Tao [4] が示した定理の記述
Tao の論文(Forum of Mathematics, Pi, 2022)では、「対数密度の意味でほとんどすべての自然数 について Collatz 軌道が小さな値をとる」こと、すなわち
\operatorname{Colmin}(N) ;=;\inf{,N,;C(N),;C^2(N),\dots}
論文中でも
\operatorname{Colmin}(N) < \log\log\log\log N
- 「不動点定理」という一般論の枠組みそのもの
距離空間上での不動点定理(Banach の不動点定理や種々の一般化)は古典的にもよく研究されており、それらをうまく応用できれば何かしらの反復写像に対する結論が得られることは確かです。
論文第2節で提示される “( )-重み付き一般疑似縮小写像” なるものも、「ある種の一般化された縮小性をもつ写像」を考える枠組み自体は、不動点定理の文献を見ると“定義を拡張した研究”がいくつも存在します。著者自身が引用している [1], [2], [3] なども、おそらくはその類の研究です。
以上のように、Collatz 予想に直接関わらない部分(定義・引用されている既存の事実・Tao の定理紹介)については、おおむね正しいか、少なくとも“偽である”と断ずる根拠はありません。
- 疑義が大きい/現状では認められていない主張
問題は、「論文第2節で定義した特殊な不動点定理を、第3節で Collatz 変換に適用することで、全ての自然数 について有限回の反復で 1 に到達する(すなわち Collatz 予想が真である)と結論づけている部分」です。
- 「( )-重み付き一般疑似縮小写像」としての の定義
本文では
T x ;=;
\begin{cases}
C^3 x = 1, & \text{if x = 1},\
C x = x/2, & \text{if x が偶数},\
C^2 x = (3x+1)/2, & \text{if x が奇数かつ x \ge 3},
\end{cases}
を大小さまざま()に割り当てています。そして
\alpha(x,y),d(Tx,Ty)^2
+ \beta(x,y),d(x,Ty)^2
+ \gamma(x,y),d(Tx,y)^2
+ \dots
;\le;0
しかし、
なぜそのような係数で “常に” 上記不等式が成り立つのか
すべての場合分けを本当にきちんと検証したのか
その検証過程で不等式が破綻するケースは一切ないのか
などが、本文では(少なくとも引用された訳文を読む限り)説得力のある形で提示されていません。「証明(概略)」と書かれている箇所も、実際にはケース分けを羅列的に“すれば示せる”としているだけで、チェック可能な形にまでは展開されていません。
とくに、Collatz のように「偶数なら半分になるが、奇数なら 3 倍+1 になる」という写像は、標準的な意味では “局所的に縮小” どころか “場合によっては値が膨れ上がる” わけで、それをどのようにして「全体として“疑似縮小”である」と扱うのか、きわめて疑わしいです。
“重み付き” という拡張であっても、少なくとも従来の Banach 型の不動点定理の枠組みだと、単純には証明できないだろうというのが専門家の経験的な見通しです。
- 「不動点定理の適用により、任意の で有限回の反復が 1 に収束する」
仮にこの「 が不動点定理の仮定を満たす」という部分を厳密に証明できたとしても、そこで得られる「不動点の存在」が“ にすべて収束する”ことを導くには、さらに細かい議論が要ります。
の不動点は本当に「1 しか存在しない」のか?
あるいは「不動点が複数ありうるが、なぜか全て 1 に集まる」ことになるのか?
「 以上等々の議論」で、不動点以外の点へ収束する可能性を完全に排除できるのか?
など、本来ならば丁寧な検証を要する論点がたくさんあります。
少なくとも引用された論文の訳文においては、そういった要点をあまりにあっさり「(5) の場合でこうなり、(1)~(4) でこうなる」とまとめてしまっており、肝心の収束先がすべて 1 になる必然性がどこにもきちんと示されていないように見えます。
- 数学界で未解決の問題が、こうした“拡張不動点定理”ですぐに解決されるとは考えにくい
Collatz 予想(3n+1 予想)はいまだ多くの数学者が挑んできたが証明されていない難問として公知です。Tao [4] の結果のように「ほとんどすべての である性質を示す」ことさえ画期的だったのに対し、「すべての 」で有限時間後に 1 になることを決定的に示した人はいない、というのが現状です。
したがって、本論文が主張するように「不動点定理の一種で一挙に完全解決」というのは、にわかには受け入れられません。実際に著者の主張が正しければ世界的にも非常に大きなニュースですが、そのような扱いになっていない現実を見ても、専門家からは「(おそらく)証明としての欠陥や論理の飛躍、場合分けの破綻などがある」と判断されるのが自然です。
- まとめ
文献 [4] にある Tao の定理の紹介部分 は正しく、また Collatz 関数そのものの定義 や「奇数なら 3x+1 は偶数になる」といった部分は当然ながら誤りではありません。
しかし、「定理 3.1~3.2 の構成で Collatz 予想が証明できる」とする主張 は、現状の数学界の理解に反し、具体的な計算検証も本文中には提示されていません。特に
-
「( )-重み付き一般疑似縮小写像」という特殊な定義を適用した際、本当に大域的に不等式が成り立つのか
-
その結果としてすべての自然数 の軌道が有限回で 1 に行き着くと結論づける論理が妥当なのか
といった点が非常に疑わしく、専門家の多数意見として「この論文の“Collatz 予想の証明”部分は成立していない(不備があるか、未証明と同様の扱い)」とみなされるだろうと思われます。
結局、「上から見て明確に正しいかどうか」と問われれば、定義や既存論文を引用している部分は正しいが、Collatz 予想を決定的に証明したとする新規主張には大いに疑義がある、というのが結論になります。
要するに:
Tao [4] の言及や Collatz 変換の定義は正しい。
しかし「不動点定理で Collatz が完全解決した」という箇所は、数学界で認められる水準の根拠や検証を欠いており、現状では“主張だけが先行している”状態とみなされる。
そのため「論文タイトルのとおり Collatz 予想が証明されている」部分は、少なくとも引用部分を読むかぎりでは納得いく筋道が示されていない、すなわち**真偽不明(事実上は“未証明”扱いのまま)**と言わざるをえません。